~エピローグ~
~エピローグ~
白い天井を眺めている。何度俺はこの状況を経験すればいいんだろう。
「目が醒めたかい?」
そこに立っていたのは狭山刑事だ。狭山刑事が言う。
「君は本当に無茶をする。捜査はプロに任せておけばいいんだ。
まあ、君が無茶をしてくれたおかげで犯人は捕まったよ。
それと君が録音したICレコーダーもね。といっても、犯行は組織的ではなく独断ということだ。
個人の使い込み。そういう話しでしかない。もっと慎重にしていればこうならなかったかもしれないがな。個人が何を言おうと証拠が何もない。君はそういうことをしたんだ」
狭山刑事はそう言いながらまた表情が読めない顔をしている。今回の事件をまとめるとこんな感じだ。
○▽銀行では合併の話しがあがっていた。だが、帳簿上合わない金額が出てきた。本来あるべきはずのお金が足りないのだ。
プールしてある裏金で補てんを考えていたが、丁度ある政治家の裏金疑惑とつながりがあり、そのお金を使用できなくなった。
そのため、早朝人が少ないときに押し入った銀行強盗にお金を持って行かれたというシナリオが立てられた。
実際に車も手配し、ワゴンで逃げる姿を周りにも見せた。だが、そこで事故が起きる。ここからこの計画がずれはじめる。
怪我人がでたことであからさまに補償はできないが、何とかしたいと思った層と、何もするべきでない層にわかれた。
もちろん、隠ぺいするには知らない、何もしないがいいはずだ。だが、桜村という人物はどこかで人間味があった。
だから、この俺に付き添ってしまった。そして、菅田ユリにも補償をする。低金利の貸し出しだ。
だが、ここで更に問題が起きる。そう、むつきんの動画だ。あの動画で桜村が映っている。あの動画をどうにかするために桜村は何名かに声をかけた。
先に動いたのは隠ぺいを図る派閥だ。だから俺は殺されかけ、むつきんも危なかった。
もうちょっとタイミングが遅かったら二人とも危なかったかもしれない。だが、警察としては、実行部隊より指示を出していた方を抑えようとしていたようだ。
多少の犠牲は仕方ないとしても大元を刈り取らないといけないからだそうだ。
だが、実行部隊は逃げ、残った証拠から更に相手の動きを待っていた。そんな時に俺が敵陣に乗り込んだのだ。
結果。桜村のみが切り捨てられ、独断行動。個人の使い込みという事になったそうだ。桜村には借金があり、その返済のための行動ということらしい。
「まあ、そういう事だ。今回は大変だったね」
病室に来た岡島がそう言う。だが、俺は笑えない。
「じゃあ、この記事は何なんだ」
新聞にはこう書かれてある。
「○▽銀行が岡島銀行に吸収合併」
「ああ、丁度メディアからもたたかれていたし、安く合併できたと父君が喜んでいたよ。僕だってただ生徒会長をしているだけじゃないんだ。まあ、はじめ父君に話した時には確証がないことを言うなと殴られたけれどね。こんなかわいい顔をためらわずに殴れるんだ。ひどい親だと思わないか?」
そう言って笑っている。あの腫れた顔は調査のためじゃなく、父親に殴られただと。
「本当に最低。こっちは独自で調べて何か大変だったんだと思っていたのに」
むつきんがため息をついている。俺の手をこっそり握ってくるあたりがかわいい感じだ。だが、目つきがこわい。岡島を睨んでいる。
「まあ、確かに岡島先輩は『親父にもぶたれたことがないのに』みたいなセリフが似合いそうですからね」
赤川がそう言う。それ、アニメの鉄板ネタだからね。赤川が言う。
「でも、よかったですね。あっきーが入院中にあの菅田ユリの目が醒めたみたいですし。今リハビリ中らしいですよ。退院したらお見舞いにいきましょう」
「そうだな」
俺はふと遠くを見た。窓が開いている。思えば、あれから色んなことがあったな。
(どうしたの、変な表情して)
そうなんだよな。菅田ユリが目覚めたのに天使ちゃんはこのままなんだよね。どうしてなの。
(さあ?でも、私あの子を見てもなんとも思わなかったから違うと思っていたからね)
じゃあ、天使ちゃんは一体何者なのよ。
(わからない。でも、ちゃんと私の事を探してよね。それに、私今の環境が楽しいもの。あっきーと赤川きゅんが結ばれるまではこのままでいたいから)
いや、結ばれませんから。ってか、結ばれるってどういうことよ。
(そりゃ、身も心も一つになるのよ。いいでしょう。そういうの。それを見るまで私はこのままでいるから。よろしくね)
そう言って優しい風がさあっと体を拭きぬけて行った。
~another epilogue~
「以上が今回の報告になります」
男性がまとめられた紙の束を見ている。
「それで、結果的に実験結果はどうだというのだ。成功したのか?」
白髪交じりの髪が灰色に見える男性が目の前の男性に向かってこう話す。
「確定はできませんが、成功の可能性はあるかと思います」
コの字の中央にいる男性が俯きながらこう話す。灰色の髪の男性が横にいる白衣を着た男性に話しかける。
「データ上はどうなんだ?」
白衣の男性がこう答える。
「対象者の数値は上がってきています。医学的に改善される見込みがないと思っていた状況ですので、何らかの結果が出ている可能性があります。医学的には認めたくはないですが」
灰色の髪の男性が言う。
「医学的に何もできなかったのであろう。ならばどんな怪しいものにも親というものはすがりつくものなのだよ。
それが、他人の身体に憑依をさせ、そのものの生気を共有することで命を長らえさせるなどと怪しげなことだとしてもだ。お前は検査結果を報告すればいい。それだけしかできぬのだからな。」
白衣の男性が眉間に皺を寄せる。紫のベールをかぶった女性が言う。
「この結果から見るに成功していると思われます。次はこの憑依した男性の身体を乗っ取る事ですね。乗っ取りある程度生気を吸い取ってから本体に戻ってくれば病魔を立ち去りましょう」
灰色の髪の男性が言う。
「どうすればわが娘は体を乗っ取れるのだ」
紫のベールの女性が言う。
「それは、絶望を味わうか、自分の脳が処理できない出来事が起きて心を閉ざした時でしょうかね。でも、うまく行くかはわかりません」
灰色の男性が言う。
「なるほど。それならまだ火種はあの男性のまわりにはあるな。
狭山くん。君には期待しているからな。引き続き対象の観察を報告を。それと、言っていた通り死なない程度の何かを彼に味あわせてあげてくれ」
「了解しました」
そう言って、狭山刑事は会議室を後にした。




