ニャクシン拒否。
100話目です。牛歩戦術ですね。
2ヶ月空いてしまいました。
『イケニャン』……猫のイケメン。ブサニャンからたまに死ねと言われる。
『ニャクシン拒否』……猫の着信拒否。寂しい。
「なーるほどね。これはまた珍妙にして奇妙。数奇にして不可解だ」
一通り事件の説明を聞いたニャンダイチは肉きゅうでヒゲを撫でた。
しかし、変われば変わるものである。
あんなにシャレ者だったニャンダイチがなぁ。
ずいぶんワイルドな猫になったものだ。
ヒゲの後はボサボサの毛をワシャワシャとかき回す。
しかしそれが不快ではない。
イケニャンはボロを纏ってもイケニャンということか。
……イケニャンめ!
「何もない空間に物体を作り出し、遠く離れた場所からニャンキチさんを呪い殺したかぁ……こりゃ本当にホワイトはメシアだったりして。超能力?親子二代の超能力者?母親は魔法使いかな?」
「ふざけないでくれよ君!めったなことを言うものではない!あんな殺猫犯が世界のメシアなものか!」
ケーブは荒れている。
無理もない。
犯人がわかっているのに逮捕できないのだ。
「こりゃ失礼。さて……現場百回だ。私はニャンキチさんの遺体があった場所にでも行ってみますか……ショカツ。来なさい」
「ハイハイ! どこまででも!」
ニャンダイチとショカツがいなくなり、はて私はどうしたものかと思った。
「そうだ。ケーブ。グレイ氏に会うことは可能ですか?」
「グレイ氏に? それはもちろん……ニャトソンさん。なんとかニャームズ先生に連絡はとれませんか?」
「それがどうにも……」
我が息子コッコの写真を日々百枚単位で送り、その可愛さを語りすぎ、ニャームズとは連絡がとれなくなった。
ニャクシン拒否というやつだ。
「アイツ。どうやらフィンランドの学生になにやら講義をしているようです」
「講義?」
「ええ」
私は彼との最後の電話を思い出した。
『ニャトソン……また君か……』
「ニャームズ。聴いてくれ。いや聞け。大発見だ。コッコはお尻も可愛いことに気づいた。すごくないか?お尻だぞ?」
『いい加減にしてくれ。まさか携帯のメモリーが君の息子で一杯になるとは思わなかったぜ。僕の携帯には世界中の事件のデータもあるんだぜ?』
「幸せのシェアだ。まさか一枚たりとも削除していないだろうね?」
『ノーコメントだ』
あとから知ったがニャームズは律儀に写真は全てカードに保存していてくれたらしい。
数年後にそれを彼から見せられたが、その枚数には我ながらドン引きだった。
『……おはよう。スチュアート。セシル元気かい? うんうん。わかっているさ。時間だね』
「なんだ? そこに誰かいるのか?」
『こちらの大学で臨時の講師を頼まれた。やれやれ。日本を離れ、リラックスできると思ったらこれだ。聞いての通りだニャトソン。僕は未来あるヤング・キャット達を学びの迷宮に導かなくてはならない。つまり講義の時間さ。切るぜ?』
「まてまて! コッコの可愛い所ベスト二万も聞けよ。デレレレレレ……デンッ! 第二万位は……」
『……ごきげんようニャトソン。なにか事件があったらFAXでもしてくれ。こちらのマンションの番号は控えてあるね? それでは!』
これっきりである。
ねっこあつめ。