初代ホワイト
「……いや驚いた。よく生き残ったものだねぇ」
「本当に。命より大切なものなんてありませんよ」
話を聞くとニャンダイチはカリカリひとつまみと水だけ渡されニャームズにアフリカのサバンナに捨てられたという。
「帰ったら殴ってやろうと思いましたが……逃げられました」
なるほど、あの時の電話の相手はニャンダイチでニャームズは逃げたというわけだ。
「私の話はいいでしょう。それより事件のことを」
「それでは……」
「いやいやいや! 話はわたくしめが……」
「……」
ニャンダイチが帰ってきたと聞き、ショカツがでしゃばってきた。
ニャンダイチの腰ぎんちゃくのようなオスだ。
「事件は昨日夕方。ニャンキチさんはいつも通り日課の散歩をしていたそうです」
「日課の散歩……?」
「ええ。ニャンキチさんは何年も同じコースを同じ時間に歩いていたそうです」
「それで……ニャンキチさんは誰かに連れ去られイカメシ町へ?」
「いえいえ。ニャンキチさんは『自らの脚でイカメシ町へ向かった』と目撃者の証言がありました」
奇妙である。
ニャンキチさんは何年も変えなかった散歩コースを変え、まるで催眠術にかけられたかのようにイカメシ町に向かい落とし穴に落ちたのだ。
「誰とも会わず、誰とも話さずまっすぐイカメシ町へ向かったようですな。落とし穴を掘った犯人については調査をつづけています」
わからない……ニャンキチさんは死ぬためにイカメシ町へいったのか? なぜ犯人はニャンキチさんを落とし穴まで導けたのだ?
「まさか本当にホワイトは呪いで猫が殺せるってわけないよなぁ……」
ここでケーブの表情が暗くなった。
「それが……信憑性のあるデータが……」
「データ?」
ケーブは一冊の本を取り出した。
「それは?」
「『猫日本史』猫日本史記録係の『グレイ』氏から調査のため借りてきた本です。それにホワイトの父親の『ホワイト』の記録が残っています。
「へえ……」
ややこしいがつまり今のホワイトは『ホワイト二世』ということだろう。
「彼の父親がなんなんです? 彼もまた能力者だったと?」
「この猫日本史は時代を変え、記録係を変え何百年も続いた由緒あるものです。この記録に間違いはないということです。わかりますな?」
どうにもケーブはなかなか本筋に触れない癖がある。
「といっても彼の父親なら10年やそこら前の話でしょう? 最近の話だ」
「彼の父親もまた能力者だったとおっしゃりましたな? 言いにくいのですが……」
「ん?」
「それ以上です。彼の父親……初代ホワイトはネコネコアザラシと唱えただけで『人間を殺すこと』ができたそうです……」
「……はぁ!? 人間を!」
「バカな!」
いくらなんでも盛りすぎだろう。
『ネコネコアザラシ』と唱えただけで人間を!?
「残念ながら記録に残っています。ニャトソンさん、ニャンダイチさん。この世には本当に呪いがあるのですか? だとしたら我々ドーサツになにができるというのです?」
ネコネコアザラシ教……人間をも呪い殺す教団……私は猫背が寒くなった。
次100話ですね。とくに何もありませんが。




