迷宮
俺は朝早くに迷宮の入口に来ていた。
バナザードのパーティの・・・荷物持ちとして。
「バナザードさん、俺何の武器も持っていませんが大丈夫ですか?」
「お前に武器なんか贅沢だ。いつも奢ってやってるんだから荷物持ちぐらい、しっかりやれよ。」
酷い扱いだ。
しかし、衣食住すべて奢ってもらっているから仕方ない。
俺はアイテムが入ったリュックを背負わされて、ついてくるように指示された。
(アイテムってどうやって持ち運びしているか知らなかったけど、リュックとかに入れて持ち運びしてるんだな。以外に普通だな。)
「しかし、なぜ突然迷宮に潜るなんて言い出したんですか?」
「別にいいだろ、好きな時に迷宮に潜る。それが冒険者だ。」
地下迷宮の入口はアリシアン王国の城塞都市アーシアンの外れにある。
大昔に不老不死を望んだ大魔導士が、悪魔を呼び出した。
彼は契約により不老不死になったが、生贄を与え続けないと悪魔に肉体を奪われてしまう。
そこで迷宮を作り、財宝を餌に欲にまみれた者達を呼び寄せ悪魔に捧げているという。
今日も冒険者は財宝と名誉を求めて潜る。
だが最深部まで到達し、真実を確認した者は誰一人としていない。
というのがゲームの設定である。
ちなみに迷宮の入口はテキストのみなので、勝手に洞穴のようだったり大穴がぽっかり空いているイメージだったが、全く違っていた。
そこに存在していたのは荘厳な神殿だった。
(ここが迷宮の入口?この神殿の内部にあるのか?)
バナザードは扉を守るようにして立っている兵士に話しかけ、冒険者カードを見せていた。
俺が一緒に入ろうとすると呼び止められたが、首にかけていた冒険者カードを見せてなんなく通してもらった。
(こんな事もあろうかと、訓練場で再発行していてよかった。)
神殿に入ると何もない大広間で、多くの冒険者で賑わっていた。
おそらくは俺が作ったキャラクター達だろうが、パッと見た感じ誰なのかわからない。
(これは片っ端から冒険者カードを見ていくしかないな。)
このカードは名前、職業、レベルしか記載していない単純なものだった。
だが、俺はキャラの特定さえ出来ればどんな能力値だったか、知ることが出来る。
(仕事は覚えられないのに、キャラのステータスを細かく覚えているなんて本当に無駄な能力だよな。)
しかしこの能力があればこの世界もうまく乗り切れるかもしれない。
「何をニヤニヤしてるんだ?」
「いえ、なんでもないです。」
「チッ!これからパーティを組む人には迷惑かけるなよ。」
「パーティ?酒場で一緒にいた人達じゃないんですか?」
彼は答えず歩き出した。
俺は無視されて気分が悪かったが、とりあえずついていくと、見た事のある2人が見えてきた。
(なんだよ。結局酒場のメンバーじゃないか?)
彼が無視した理由はわからなかったが、図星をさされてイラついたのかもしれない。
「よう、今日は奢ってやった分働いてもらうからな。」
「わかったよ~。」
「はぁ・・・めんどくさいですね。」
相変わらずプックルは陽気で、顔色の悪いエルフは陰気だ。
「今日はお前ら以外にもメンバーがいるから、迷惑かけないようにしろよ?」
「んん~アルの事?」
「いやこいつはどうでもいい。」
「どうでもって・・・。」
俺が反論しようとした時、視界に女性の姿が目に入った。
その女性は銀色の鎧に身を包み、美しい金髪をなびかせながらまるで宝石のような青い瞳でこちらを見ながら優雅に歩いてきた。
(なんだ・・・女神の類か?)
「バナザードさん、お久しぶりです。今日はよろしくお願いします。」




