騎士ブレイブ
騎士ブレイブは最近【ウィザード】を再開したきっかけになったキャラだ。
俺は仕事がつらく、数少ない祝日も何もせずに無気力に過ごしていた。
そこで、ふと目にしたゲームの中古屋で【ウィザード】のソフトを見つけて、昔を懐かしんでハードと一緒に購入した。
このゲームに主人公がおらず、すべて自分でキャラメイクして作る。
そしてキャラメイクする時に種族と性格とランダムで貰えるボーナスポイントを基礎能力に追加して職業を決める。
このボーナスポイントが高ければ高いほど、序盤から強い上級職になれるのだ。
騎士ブレイブは人間で性格:善のキャラとして初めから高いボーナスポイントを得る事に成功し、上級職の騎士からスタートした。
だが、このゲームは序盤上級職だとかなりの経験値を得ないとレベルが上がらないため、完全に足手まといになる。
しかし逆に、序盤の難易度が高まる事で、育てる楽しみをより感じられゲームにのめり込んでいった。
つまりは彼は俺に久しぶりの楽しさを与えてくれたキャラなのだ。
騎士ブレイブが仲間と飲み合いをしているテーブルの近くまで来て、彼らの顔を見ると、おそらく俺が知っている面々が揃っていた。
騎士ブレイブを筆頭に、武人ザンゲキ、盗賊ミリアム、神官ルキリア、魔術師マリーシャ、賢者アウグスト・・・パッと見た感じ俺のイメージにだいたい合致している連中だ。
(自分の作ったキャラが見れるなんて感動するなあ・・・っと、それよりも話しかけなければ。)
とにかく今は感動よりも、腹を満たす事が重要だ。
俺はおそらくリーダーであるブレイブに話しかけた。
「ああ、騎士ブレイブ・・・さん、俺はアルと言います。」
すると、彼は俺の方をボンヤリした顔で見ながら答えた。
「ん・・・何か用でしょうか?」
どうも酒がそこそこ入っているようだ。
彼の顔は金髪碧眼で、男の俺でも見惚れるぐらいのイケメンだ。
しかし、それに似合わない凄まじい体格で、威圧感がもの凄い。
さすが味方を守る盾である。
「あの~、実は俺はまだまだ未熟な冒険者なので、あなたにサポートをお願いしたいのですが・・・。」
「・・・なぜ私が貴方のサポートを?私と貴方とは初対面のはずですが?」
(たしかにゲーム内でも組ませたことはないから、初対面という設定にはなるのか・・・。)
ゲームでは仲間同士仲友好度などないから、初対面だろうと関係なく組ませることが出来るが、現実なら不自然極まりないのはたしかである。
「俺はあなたのように強くなりたいんです。なんとか少しでもいいので同行させてもらえないでしょうか?」
「ふむ・・・たしかに後輩の育成は重要ではありますね。」
「お願いします!」
「わかりました。手助けしましょう。」
さすが性格:善のイケメンキャラ、人格者である。
それにゲームの設定を受け継いでいるなら、好きにパーティを組めるのでそのせいかもしれない。
「ちょっと待ってくれる?」
しかし、盗賊ミリアムが横から会話に割り込んできた。
「あんたが入ったらさあ、誰か抜けなきゃいけないじゃん。それだと、私達が攻略している最深部では力不足でしょ。」
「ミリアムよ、主が抜けてもたいして戦力ダウンにならないでゴザル。」
「はあ?ザンゲキ、あんた私に喧嘩売ってんの?というか私が抜ける前提で話さないでくれる?私がいないと宝箱の罠誰も外せないでしょ?それと、嘘くさい武人言葉やめなさいよ!」
(何か揉め始めた・・・まずい流れかもしれない。)
「まあまあ、落ち着いてください。困っているなら手を差し伸べてあげるのが人の道というものでしょう。」
(さすが善の賢者アウグスト頼りになりそうだ。)
「1人抜ける場合一番いらないのあんただけど・・・それでいいって事だよね?」
「・・・彼に試練を与えるのも人の道です。パーティに入れてしまうと、彼の成長を阻害してしまいます。ここは心を鬼にして断るべきです!」
(賢者アウグストさん、あなたって善属性ですよね?手のひら返しが早すぎませんか?)
ちなみに性格は善、中立、悪が存在し、中立はどの性格とも行動出来るが、善と悪は一緒に行動する事が出来ない。
まとめると、
善:人のために生きる事が生きがいな人
中立:生き抜くためにその場において適切な対応をする柔軟な人
悪:自分の美学や信念をどんな事があっても貫く人
という感じで悪=悪人という単純な事ではないらしい。
もちろんざっくりしているので、性格の中でも幅はあるらしい。
賢者アウグストも善にしてはちょっとブレているが、根本は善である。
何とか他の性格:善の2人を期待を込めて見るが、二人とも目を合わさないように俯いている。
助けは期待できそうにない。
揉めているのを見てブレイブも収集が付かないと判断したようだ。
「すまないな・・・見ての通り、君をパーティとして迎えるわけにはいかない。迷宮では少しの問題でも壊滅してしまう危険がある。わかってくれるね?」
「はい・・・。」
(俺が作ったキャラ達なのに、思い通りにならないとは・・・ゲームの世界だと舐めていたら一筋縄ではいかないという事か。)




