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始まり

「気が付かれたかのう?」

俺の目覚めは爺さんの顔から始まった。


(誰だ?このコスプレじいさん・・・なんで俺の部屋に?)

なんかゲームの神官みたいなコスプレした爺さんが部屋に入り込んで、寝ている俺を覗き込んでいる。

とんでもない恐怖映像だ。

嫌な想像が頭の中に浮かんできた。


『30歳、男性、派遣社員の伊藤いとう 士郎しろうさんが自宅で遺体で発見されました。犯人は神官のコスプレをした60~70代の男性で「神の世界を作るのだ」と訳の分からない事を供述しており・・・』


いや・・・このままだと想像が本当になる未来しか見えない。


(しかし、相手は爺さんだ。いくら残業続きで疲れている俺だって、負けるはずがない!)

俺は恐怖を振り払って、とにかく立ち上がろうとするが・・・・体にまったく力が入らない。

いや、それどころか声すら出ない。


(薬でも盛られたか?いくら爺さんといっても家に強盗に入るぐらいの悪党だ。無策なわけがない。)

俺はどうする事も出来ない事を理解した。


(俺の人生ここで終わりか・・・。良い事ひとつも無かったなあ・・・。いや、これ以上苦しまなくていいから逆にいいのかもしれないなあ。)

俺は今までの人生を振り返りながら、意識を失った。


◇◇◇


俺は残業後の深夜に好きな迷宮ゲーム〔ウィザード〕でレベル上げとレアアイテム探しをしていた。

このゲームは20年以上前に発売されて、子供の頃に大好きになってから未だに俺の中でこのゲームを超えた存在はない。

内容としてはオーソドックスで、自分の分身になるキャラを作り、ただ迷宮へと挑みレベルアップとレアアイテムを探して強化していくというゲーム。

もちろんストーリーもあり最終目的もあるのだが、それよりもキャラの育成が楽しく永遠とプレイしてしまう中毒性があった。


「単純作業の繰り返しだけど、やればやるほど明確に強くなって成果が上がるのが楽しいんだよなあ。」


俺は派遣社員として勤務していて、真面目な方だが要領が悪く仕事が遅い。

そのためノルマをこなす為に、サービス残業や休日出勤をしているが周りから無能と言われ続けている。


それに比べてこのゲームは時間をかければかけるほど地道に強くなるところが楽しい。

「とはいえ、そろそろ強キャラばっかり使うのも飽きてきたなあ・・。久しぶりに初めからやるかな?」


俺は主人公の「アル」というキャラを作り仲間も用意して、最初からやり始めた。

すでに攻略法を知っているのでどんどん進んで行く。

ただ、あまりレベリングせずに進めてしまったせいで全滅してしまった。


「慢心したなあ。でもそろそろ寝ないと明日もつらい。丁度良かったのかもしれない。」

時間を確認するともう深夜2時になっていた。

すぐに寝ないと明日起きられないかもしれない。

散らかっている狭い部屋の小汚い布団に倒れ込む。


(嫌だなあ・・・また明日が来る、寝るのが怖い。ずっとゲームやってるだけで生きていけたらいいのに・・・。)


色々考えていると、何か頭痛がしてきた。

最近頭痛が定期的に襲ってくる。

おそらく寝不足のせいだろう。

いつもののように寝てやり過ごそうと思ったが、どんどん痛みが大きくなっていく。

ついには頭が割れるほどの激痛になった。


(これは・・・・やばい・・・。)


痛みのベクトルが振り切った時、俺の意識は消し飛んだ。


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