18話 料亭ごはんと新春バーゲン
大学1年生の年明けに、耀の父方の美澄家と母方の鷹野家は料亭の個室に集まった。
「来年度から美澄工業株式会社は、息子に社長を継がせることになりました。修吾も4月より入社し、技術者として家業を手伝う決心をしてくれました。家族一同、団結していきたいと願っています」
飲み物が全員に行き渡ってから行われたお祖父様の挨拶に、みんなで拍手をした。
(お父さんもお兄ちゃんも、頑張っているんだなあ……)
耀は新学期に大金を溶かした経験から、地道に稼ぐ道を歩む父親や兄をますます尊敬していた。
兄が母方の祖父母から就職祝いとお年玉を手渡されているのを横目に、耀は微笑みながらウーロン茶に口を付けた。
「祥子ちゃんは、最近はどう?」
「春からは実習に進めそうかなって感じですね」
姉は試験勉強で少しやつれていた。
「耀ちゃんは?」
「地道に講義受けてましたよー」
2人はお年玉を受け取った。
(早く春休みにならないかなあ。またレオといっしょに溶かした分を取り戻して利益を上げたいです……)
スイングトレードに恐怖を植え付けられた耀は、デイトレメインで休暇中に集中して引きこもる作戦の方が自分には向いているのではないかと思っていた。
(だからこの休みの間くらいは、少しゆっくりするのも良さそうですね…)
(経営学科の講義もいずれ受けてみたらお父さんの話を今よりも理解できるようになるかもしれません。レオと相談してみようかなあ)
そんなことを思いながら前菜を口にしつつ、ぼーっとしていた。
(今年は柿本さんとお兄ちゃん、2人で初詣に行くみたいですけど、どうなるのかなあ。もう未成年じゃないから高校生の時みたいにカモフラで私達も行く必要は無くなりましたが、プルプルお兄ちゃんだしなあ……)
(柿本さんの情熱はまだ熱々ですが……。うーん)
耀は昨年までの3年間、投資同好会メンバーとの初詣をした時のことを思い出しながら、兄の恋路を心配していた。
「耀ちゃん、あなたも大人になったんだから勝負服買いに行きましょ!」
「へ?」
(あ、話聞いてませんでした……)
「いい出会いのためにも普段から自分に似合う服の形や色味を覚えておくのも必要になってくるわよ!学生時代は似たもの同士と仲良くなりがちなんだし、ね?」
親戚達、特に叔母2人は、3人の無頓着ぶりに……。特に耀の適当さにずっと歯噛みしていたようだ。
「修吾ちゃんは彼女候補さんの好みがあるだろうから、買い物デートのチャンスを潰さないようにお年玉を多めに入れておいたけど、祥子ちゃんと耀ちゃんはまだいないんでしょ!?買ってあげるから!」
このキャリアウーマン2人は、自分の意志を貫くことで人生が上手くいってきたという自負を強く持っていた。……逃げられない。。
(どうしよう、、バーゲンに連れ回される)
耀は姉と顔を見合わせて震えた。
「たまには良いお洋服を大学に着て行きなさいよ!」
「そーよ、外見の変化は服からなら手っ取り早いんだから!」
叔母達は、たまに2人が服のレベルを上げる事でターゲット層のレベルも少し上がりそうと思って皮算用をしていたようだ。
(ゆっくりしたいのに〜!)
……儚い願いであった。




