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世界が滅びても君が好き  作者: motomaru
9/9

First Kiss

 それでも健介は数日思い悩んでいた。

明陽はまだあそこで自分を待っているのだろう……

そう思うと、日毎に居ても立ってもいられなくなっていった。 

 ある日、昼休みに入って暫く経った頃、健介はとうとう我慢出来なくなって立ち上がった。

弁当を掴んで教室を出ると、自然と足も速くなる。

健介は林を目指して夢中で駆け出していた。

 何時ものあの場所へ行ってみると、明陽が何をするでもなく座っていた。

「……ハァハァ……明陽さん……」 

息を切らした健介が声を掛けた。

「健介……来てくれたんだね……」

 明陽がそう言って柔らかに微笑んだ。

それは仮面の笑顔などではなかった。

健介には明陽が心から喜んでくれているのが分かったのだ。

 甘酸っぱい感情が優しく胸を締め付ける。

(あぁ……僕はやっぱり……この人が好きだ……)

明陽の笑顔を見て健介は改めてそう思うのだった。

「良かった。健介もう来てくれないんじゃないかと思ってた……」

 健介が明陽の隣に座ると、彼は柔らかな声でポツリと言った。

「ごめんなさい……」

 健介は素直に謝った。

明陽のことを思うと、本当に申し訳無い気持ちでいっぱいだった。

「謝らなくていいよ、健介は別に悪い事したわけじゃないんだから」

「でも……」

「来てくれただけで充分、お昼持ってきたなら一緒に食べよう」

「はい。明陽さん……まだ食べてなかったんですか?」

「うん……」

明陽が微かに口角を上げ視線を落とす。

 きっと明陽は何時もお昼を食べずに健介が来るのを待っていたのだろう。

そう思うと、健介は益々胸がいっぱいになる。

「じゃ、食べましょう」

「そうだね」

 二人は笑いあうと、弁当をひろげて食べ始めた。 

(なんでだろう……何時もよりドキドキする……)

 ただ隣に居るだけの、これまでと変わらない風景なのに、これまでとは違う感情が健介の胸を優しく締め付ける。

 面映ゆいような甘い時間が過ぎていき、気付けば昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いていた。

「あっ!どうしよう、昼休み終わって……」

 健介が慌てて弁当箱を片付け始めた。

ここへ来た時には既に昼休みに入ってから暫く経っていたので、時間に余裕が無かったのだ。

 すると明陽は健介の様子を見ながら

「このまま二人でサボっちゃおうか?」

と悪戯っぽく笑ったのだった。

「え、良いんですか?」

 健介が驚いて尋ねると、明陽はニッコリ笑って頷いた。

「健介のほうは大丈夫?」

「はい、大丈夫……だと思います」

 明陽は勿論の事だが、サボるのが初めての健介もそう答えた。

離れていた分、今は少しでも長く明陽と一緒に居たかった。

「ふふっ……じゃあ、決まり」

明陽が嬉しそうに笑った。

彼の嬉しそうな顔を見ると健介も嬉しくなる。

「あの……お願いがあります……」

「何?言ってみて」

「僕の前では……僕の前でだけは……有りのままの明陽さんでいて下さい……笑いたい時は思いっ切り笑って、泣きたい時は思いっ切り泣いて……そんな自分の気持ちに正直な明陽さんでいて欲しいんです」

 健介は一条が言っていたことを思い出して言った。

「健介……」

「僕は明陽さんに何もしてあげられないけど……もし僕が少しでも明陽さんの癒しになれるなら……僕は……明陽さんの側に居たいです」

「健介……有難う……」

明陽は健介を抱き締めると、耳許で静かに言った。

健介も明陽の背に腕をまわして抱き締める。

 暫くそうしていた明陽は、体を離して今度はゆっくりと顔を近づけていった。

――チュッ――

柔らかい唇が健介の唇に触れ、そっと吸った。

 健介の心臓が――ドクン――と悶えるように脈を吐き出す。

「好きだよ……健介」

明陽は健介に向って柔らかに微笑んだ。

「僕も……好きです……明陽さん……」

 健介はそう答えてもう一度明陽を強く抱き締めたのだった。

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