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白と黒、混ざり合う時。  作者: 原田コウ
第一色 出会い、それは運命か奇跡か
5/8

#4 信頼と変則

銃火器の使用。複数の隊の存在。作戦会議。

 お気づきの方もいるであろうが、彼らが行なっているのは『戦争』である。

 相手は人ならざる者たち。

 そして戦争とは____

 黒木と日向は作戦報告を終えて、自らの拠点に戻ってきた。

 廃墟となったビルの一角を、外見はそのままに内装を簡易的に作り直した拠点。周りには銃を構え灰色の迷彩服、ビル迷彩のような物を着用した兵隊が東西南北全方位に数人配置されている。



「隊長が……今度は……どんなペナルティが……この前は……。」

 日向は拠点に戻っても尚、隊長が怒っていたという噂にまだ動揺しているようだ。それを聞いて、報告から今までずっと口を閉じていいた黒木の口が久しぶり開いた。

「日向。しつこいぞ。」

「しつこいって……毎度毎度、1人で勝手に突っ走っていく誰かさんのせいなんですからね!」

 こういう統率を第一として考える軍隊において、基本は集団行動を是としている。独断行動というのは基本御法度である。そしてこの黒木はその()()()()を幾度も行っているようである。このような男になぜ副隊長が務まるのか。確かに、銃撃で傷が付かない程の敵を1人で撃破はするほどの異常な実力を持ち合わせているようだが、それだけでは些か説得力が足りない。だが、その真意はすぐに分かった。



「黒木副隊長!!日向さん!!お疲れ様です!!」

 拠点の奥に2人が進んでいると道中には、すれ違ったり作業をしていたりそれなりに大勢の兵士がいた。その1人1人が黒木と日向の2人を見かけると、歩いていた者は立ち止まり、作業中の者は手を止め、大きな声で挨拶と敬礼をしていた。それ自体は何もおかしくはない、黒木は副隊長なのだ上司に対しての挨拶と考えれば普通だ。だが普通ではないのはここからだ、皆揃って()()である。笑顔なのも普通かもしれないが、彼らは戦争の真っ只中なのを忘れてはいけない。戦場にいるわけでも銃撃戦を繰り広げている訳でもないが、戦争をしていることに変わりはないのだから緊張感というのは少なからずあるはずだ。だが、黒木と日向に向けられた笑顔の敬礼には「作り笑い」などの見繕われた笑顔は感じられない。それどころか、心からの笑顔なのが一目で分かるほどの良い笑顔だった。

 それを見て我々は感じるだろう。黒木というこの男は、部下からの信頼で副隊長の座に就いたことに。

「あぁ、お疲れ様。」



「日向さん!黒木副隊長!報告お疲れ様っス!」

 拠点の奥に着くと、戦場で黒木を追って日向と共に来ていたもう1人男 『(さかい)』の姿があった。

「~っス」という語尾と誰にでもさん付け。という典型的な後輩感を漂わせる彼だが、黒木直属の部下の1人で副隊長の1つ下の地位。それなりに階級は上であり、日向も同様の地位である。

 その日向が資料などの荷物を下ろしながら、どこか暗い表情と声色で、

「堺、あの後F地区の調査どうだった?」

 と聞いた。その問いに先程まで笑顔だった堺の表情もスンと落ち込み、

「監視部隊と調査部隊に科学班、それと念のため自分も残ったっスがCランクの痕跡1つ見つからなかったっス。」

 と答えた。

 どうやら、黒木と日向が報告をしていた裏では今回戦場となった場所の調査が行われていたようである。今回の作戦は「Cランクの掃討作戦」であったがその目標の姿はおろか痕跡の1つも無く、いたのはあの狼男のみだった。というのが今回の顛末なのは変わらないようである。



 その事実に2人は「はぁ。」と大きくため息をつき一気に空気が重くなった。そして、暗い表情と雰囲気を前に、2人が言わんとしていたことを黒木が表情を変えず、だがどこか悲しみを含んでいるような声色で

「散々だな……Cランク相手なら、と新設立の対能力銃撃部隊を使ったらこのざま。生存者は小隊長のみ、か。」

 その黒木の言葉で堺と日向の2人は「ハッ」と落ち込んでいた気分を戻し、黒木に頭を下げた。

「「申し訳ございません!」」

「監視部隊の見落としがあったにしても今回の大失態。部隊編成を担当したこの日向。降格処分も受け入れる所存です。」

「いえ!監視部隊は自分の管轄っス!降格処分なら日向さんではなく自分にお願いするっス!」

 2人は頭を下げると責任の擦り付け合いならぬ、「責任の被り合い」を繰り広げ始めた。「いや、私が。」「いや、自分が。」と無限に続きそうな口論に、「はぁ。」と呆れのため息をこぼした黒木が場を制した。

「いい加減にしろ! 今回の損害とお前らの責任問題はまた別の話だ。恐らく近頃起きている、我々ではない何者かによる拠点の襲撃で拠点の配置を変えていたのだろう。それに気づけなかった我々が負けた。()()()()()()の発生を危惧した敵側が一枚上手だった。それだけだ。」

 その言葉で2人の口論は止まり落ち着きを取り戻した。流石副隊長といったところか。

「つい取り乱してしまいました。し、失礼しました。」

「自分もっス。副隊長、申し訳ないっス。」



 空気が元に戻ると先程ちらりと話に出た、イレギュラーについて日向が話始めた。

「黒木副隊長、そのイレギュラーについてご報告が。」

「ん。」

「我々一番隊の行動警戒管轄で発生している敵拠点が謎の壊滅を起こしている事件。新たに2ヶ所の拠点が壊滅を確認し、計10もの拠点は壊滅を確認しました。その内にはBランクの拠点も確認されました。」

「ふむ。一般人のほとんどは本州からは避難しているのは確実なのも考えると、一般人はまずありえない。それどころかBランクを倒せるとなると、軍の副隊長クラスの実力がある。敵軍の裏切り者という線もあるが……。」

 彼ら『一番隊』の管轄地区で、自分らではない何者かにより、敵拠点が謎の壊滅にあったようだ。それが先程黒木が口にしていた「イレギュラー」の正体らしい。黒木がその事について考えを述べていると、日向が食い気味に黒木の考えを否定した。

「それはありえません。我々が確保した検体や他隊が仕留めた死体を研究してみたところ脳に細工がされており、能力者同士の争いは互いに頭から全身にかけて激痛が走る仕組みになっていました。それを彼らが知らない、知っていたとしても自分から好んで裏切ったり内部での争いはまずありえないと考えられます。」

 日向は研究の結果から内部争いや裏切りはありえないと予想したようだ。それを聞いて黒木も腑に落ちたのか、また考え込み始めた。Bランク、黒木が倒したのと同レベルの相手を倒せる謎の存在。敵なのか味方なのか黒木だけでなく、ほかの隊でも問題視されている案件の1つである。その謎の存在に刺激され、廃墟ビルで偽装している自分らの拠点が発見され襲撃でもされれば拠点の壊滅など容易に想像できる。現にそれを防ぐために、拠点は2週に1回は変えるようにしているのだから。





 だが、その策も彼らにとっては無意味だったと気づいた頃にはもう遅かった____





 突風の前の綿毛のように、命は簡単に散りゆく。

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