月に一度の近況報告
モニターに映る轟コウイチは、髪をキレイに整え、シンプルな黒いシャツを来ている。昔から身なりは結構気にする人だった。
面長の顔に切長の目、口元はいつも微笑んでいるように見える。少し中性的な綺麗な顔は、出会った頃からあまり変わらない。
(さすがに少し老けたか・・・。まあ、人のことは言えない。)
サエコは、心の中で苦笑いをする。
「血液検査の結果はどう?」
サエコはコウイチに質問をする。
「異常は見つからないよ」
「そう・・・。やっぱり成長が早くて体力が追いつかなかったのかな・・・。」
「そんなに大きくなったの?」
「そうね、ここ半年で身長が20センチも増えた。」
「成長期が早く来たんだね。」
「今はもう元気に学校へ行ってる。」
月に一度、サエコはこの男に子供達の近況を報告する。コウイチはトオルにしか興味は無い。必然的に話はトオル中心になる。
「学校の成績はすごいね。特に理数系の成績がずば抜けている。」
「身体能力も高い。持久力はないけど短距離ではタケルより速いわ。」
「それは予想外の成果だね。」
コウイチの声は、穏やかだが感情が解らない。作品の出来具合を喜んでいる様にも聞こえる。
「メンタルは安定してるって言ってたけど。」
「安定しているわ。大人にはわかりにくいけど、子供たちにはトオルの感情が読み取れるみたい。特にタケルは、トオルの感情の変化に敏感に反応する。」
「感情?トオルが感情を表に出すことがあるのかい?まあ、藤原さんがイメージする、ロボットみたいになるとは思わないけど」
コウイチは意外そうに言った。
サエコは、藤原の名前を聞いただけで気が滅入る。馬鹿なのか頭が良いのか解らないけど、図々しくてデリカシーがない。捉えようによっては親しみやすいと言うことになるのだろうが、サエコは苦手だった。
今年で72歳になると聞いたけど、筋肉質で背が高く、ギラギラした目と無駄にハリのある大きな声が、彼を年齢不詳にしていた。でもそれは若々しいと言うよりは妖怪じみているとサエコは感じていた。
(つまり、生理的に合わないんだ。)
「藤原さんで、思い出したけど、あの人ワタルくんに会ったらしいよ。」
「えっ!!なんの為に!!」
サエコは、驚いて叫んでしまった。
コウイチは続ける。
「それで・・・もう知ってると思ったのか・・・色々ね、話したんだって」
コウイチは、珍しくバツが悪そうに言った。サエコが藤原ことを嫌っているのを知っているのだ。
「まったく!本当にデリカシーがない!!それでワタルは・・・深山くんはどうしたの。」
サエコは心底腹がたった。本当にろくな事をしない。
「ワタルくんは、薄々何かを感じてたみたいでね。まあ・・・冷静に受け止めてるみたいだよ。こっちにまで深山くんから抗議があったよ。藤原さんにも困ったもんだね。」
「なるべく関わり合いたくない人だわ。」
コウイチは苦笑いした。
回線を切って、サエコは大きくため息をついた。
月に一度の報告が、2人を連れてこの村に来ることへの条件で仕方がないのだが、いつも子供たちに対して強い罪悪感を覚える。
(本当のことを知ったら、あの子たちはどう思うのだろう?)
サエコはもう一度大きくため息をついた。




