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風説:「人食い姫」は出会い頭に求婚された

全面改稿中

「ニーラ=カナンどの。

 このたびは命を救っていただき、感謝の言葉もございません」


 見た目よりも奇妙に広い馬車の中に座っていたのは、夜をそのまま梳いたような黒髪の美少年だった。瞳は稀血(ブルーブラッド)にも滅多にいない黄金の竜眼。辺境の、それもたかだか男爵の娘でしかない、いや、「なかった」わたしには、荷が勝ちすぎる相手のように思えた。穏やかな笑みすら単に「お前とは違う」という余裕の発露に思えるのは、おそらくわたしの僻みというものだろうけど。


 しかも傍らには、黒曜と泥炭と瀝青をむりやり煮溶かして女の形にしたような塊が控えている。明らかにまともな生き物ではない。ではそれを従えている目の前の美少年は果たして何者であるのか。

<神階(ヒエラルキー)>の秘蹟司祭?だとしたら私の首か、よくて手足は今頃すっ飛んでいる。

はるか北方、<古書の国>の「力ある司書」たち?いや、彼らが自らの神秘を人目に晒すわけがない。

<大円卓>や<新王国>、<船団>が<旧帝国>の「戦からくり」を掘り当てたという噂は常日頃流れているが、それが本領を発揮したという戦場の話を聞いたことがない。


「なぜ、わたしの名を?」

「失礼ながら、もう少し『人食い姫』の武名について自覚なさったほうがよろしいかと。

 武功のみをもって異端認定を受けた人中の竜(インヒューマン)

 <戦地災害>ニーラ・カナン」


()()()と脳裏によぎるものがある。

 戯言絵空事で片付けることすら馬鹿らしい、ひとつ振った賽の目を当てる博打で七の目に賭けるような愚行。

だが、今のわたしはそれを思いついてしまった。壁際に立てかけておいた剣のことを思い出す。

身の回りにわずかなりとも堅いものがあれば、それで大概の難儀は片付く。

それはわたしにとって一種の信仰であったのだが、それが生まれて初めて揺らいだ。



「……こちらこそ、まさか生きて<幻竜樹(ドラゴン)>にお目にかかれるとは思っていませんでしたよ。 名をいただいてもよろしいか?」


「どうか、ファルとお呼びください」


彼は恭しく一礼した。


……色気も何もないけれど、それが花婿とわたしの出会いだった。


最後のルビは後から変えるやも。見切り発車なので。

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