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やんちゃな猫を助けたら、巻き込まれて異世界に来たけど、帰る条件が"恋"ってどういうことですか!?(まきこい!)  作者: 麒麟
第2章 勇者は召喚後がいそがしい

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特性確認…ちょっとひといき

ジーンは濡れた袖を絞りながら、ふと空を見上げた。

雲一つない青空に、さっきまで室内で降っていた雨の名残はどこにもなかった。

「……天気だけは、平和なんだけどね」と菜月を見る。

菜月がその視線に気付き、舌先をペロッと出して微笑んだ。

それにしても、生活魔法というものがあれほど危険だとは…

ポポがシーナを中庭中央にある大樹の木陰にシーナを下ろし、猫のサイズへと戻るところだった。

ジーンが猫なのかという疑問は、猫じゃない!ということで解決させた。

正直、感情的に割り切れていない。が、いまそこに拘る場合ではないと思っている。

レオンの依頼だからではなく。この天然の「0or100」魔法を野放しにすることはできない。

そんな建前ができていた。

それ以上に何となく憎めない妹のような菜月を大切に感じている。

レオンが、頑なに固辞し続けた婚約者を設定したことにシーナと共に苛立っていたことが嘘のようだ。

家事魔法の水準であれだけ、小パニックになるほどテンパっていた。

きっと事態の把握もできないまま困っているだろう。

……あれ…そういえば…とジーンは固まった。

魔法決壊が張られている中でも、4重に侵入者防止の強力な結界が張られている王宮地下から一瞬にして王宮中庭へと移動している。脱出系魔法の多くを無効化する結界も施されているのに…。

あの鉄砲水の瞬間。自分も冷静さを失っていた、とジーンは気が付いた。

あの大量の水が消えた。

その前後で菜月が何かをしていた。

その後の…ジーンは考えるのを止めてポポを見た。

面倒くさそうにシーナのお腹の上で丸くなりながらポポはジーンの方へと顔を向けた。

「クリエイター?」

「違うな。でも、どうやらそれはあるみたいだ、な」

ポポは、ため息をつきながら菜月を見た。

ジーンもそれに釣られるように菜月を見る。

クリエイター——新しい魔法を創造する魔導士の上位互換ジョブ。

自分の感覚で新しい魔法を生み出すことのできるレアジョブだが、そこには複数属性や創造技能が求められる。とはいえ、魔法使いの多くはその素因を持っている。

何もないところから、水、火、風を生み出すのも実際はクリエイションと呼称される技能のひとつだ。

ただ当たり前になりすぎて、それがクリエイター要素であることを忘れている。

「まったく、規格外だ」

ポポは呟き、ジーンは頷いた。

(あれ…?)

ジーんは、ポポを見詰めた。この猫、猫で通す気なんだ、と。

ポポは、一瞬、ジーンを睨みつけてから、ポテンとシーナの上で眠りについた。

そういえばシーナの全体的な雰囲気は、菜月にどこか似ている。

顔の雰囲気も笑い方も、スタイルは菜月の方がぼんきゅうぽんとなっているが…


青空はどこまでも澄んでいた。

まるで何も起きていないかのように。

だが、ポポがふと耳をぴくりと動かした。

「…あ、起きた」

足元で微かにうめく声とともに、シーナの右手がゆっくりと動いた。

ふわりとぽぽの頭を撫でる。

まだ寝ていてもいいのよ。そう言われたかのようにポポは、ポテンと顎を重ねた前足の上に乗せた。

(もう…でも…)

シーナは、雲一つない空に苦笑を漏らした。いつの間に移動したのだろう、と。

あのとき――菜月が放った火の魔法は薪に火をつけるどころか爆発した。

その勢いは、四散して跳び散ったと表現するには不適切だった。火の粉の雨が降った、というべきか。

あの瞬間。確かに、ポポを隠すように抱きしめた。つもりだった。

一瞬のずれか、ポポは足の上からは消えていた。

「あ……」と声を出す暇もなく、目の前で火の粉が舞う。

そのとき、黒い影が視界に飛び込んだ。

肩を押すようにして、後ろに転がされる。

何が起きたのかは判らない。ただ真っ黒な影が襲い掛かって気がした。

絶対的な自信を持つ結果の中にいることで何処かで気が抜けていたのかもしれない。

無防備に受けた衝撃に思考が追い付いていない。

それでも…菜月を護らなければと陰の動きを捉えようと動きを追いかけた。

次の瞬間、背中を叩かれるような衝撃が走った。

記憶に残っているのはそこまでだった。

いや、感覚的なことは残っている。

首のあたりを視点に振り回されていたはずだ。

徐々に記憶が薄れていく。視界が歪むのに合わせて。

衝撃と恐怖で、シーナの意識はぷつりと途切れた。

記憶というよりは、憶測だが、ポポが虎並みに大きくなり助けてくれた。

…まさか、だ。

彼は人のお腹をベッド代わりに寝ている。

自分が助けることがあっても、助けてくれることはないだろう。猫だし。

ただ事実はひとつだ。

正直、どこに現実が紛れ込んでいるのかはわからない。

ただ、視界の端に、黒い影――いや、トラかと思うような勢いで――牙をむいた黒い影が突進してきた。

「ひっ……!?」

間一髪でポポが口にくわえて引きずり落とした瞬間、シーナはそのまま見事に気を失った。

現実逃避するかのように起きただろうと考えられることを受け入れることができなかった。

その恐怖は、払拭できない。

ただ残るその感覚と向き合う必要があることを知っている。誰も解決してくれない恐怖への対応。

結局のところ自分で超える必要がある。

(この子が…)とポポの背を撫でながらシーナはふ~と息を吐いた。


「さて、と」

ジーンは、少し考えながら菜月を見た。シーナを、ポポをみから、菜月に向き直す。

正直なところろ、マナの洗練が早すぎる。

錬成をして、思い描いたイメージに合わせて使うこともできているので、初心者にしては問題がない。

というよりも、そこが問題だ。

くわえて、その破壊力は判断のしようがない。

無意味と呼ばれる水準から生活魔法の水準の間。

パニック的に新しことを始めると尋常ではない事態を引き起こす。

それを成すのは、生成されたマナの量とたぐいまれなるセンスだった。

意識もせずに必要な要素を組み合わせてオリジナルの魔法を生み出している。

それは、菜月の中にある想像した形に言葉を乗せることで創造している。

想像錬成魔法というには、稚拙であり、他の人に教えることは無理だろう。

クリエイター=創造魔術師。としては、一代限りにしかできない新魔法は成功とはいえない。

いや、失敗とも言う事はできない。そこに在るのは無限の可能性に過ぎない。

ただ新しい魔法という概念は加えられない。

そういえばここにも問題がある。

一度名前を付けられた魔法は、その名前でしか発動することができない。

いつか誰かが、菜月と同じイメージをしたとき、同じ名前にたどり着くことができなければ…

失われた魔法は数多くなっていくのだろう。

「(頭痛くなってきたな)…続けましょうか」

ジーンは、淡々とそれだけを息を吐くようにして言った。

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