属性判断…生活魔法でできます
「さて、と」
ぱん!と大きな音を手をたたいて響かせてジーンが菜月を見た。
「なんか、ピリピリしてない?」
「してないよ」
「ホント? 朝、あったばかりなのに冷たいよ」と菜月はうつむき加減で目をこすった。
「あ、猫の方がうまいから、止めておこうか」
ジーンは冷たく注意を行う。
「…属性って、ステータスでわからないの?」
「推理できるだけかな。器用な人は属性に関係なくいろいろな魔法使うしね。ちなみに、いまからするのはそれ。生活魔法とも言われているやつね。戦闘には不向きだけど、めちゃくちゃ大事だから、まじめにお願いね」
「……真面目に全部取り組んでいますけど」
「最初にするのは火の属性確認。町の外に出れば、必要になるから、属性に関係なく覚えて」
「…覚えるんだ」
「自分のために、日々鍛錬するが大事だね」
ジーンは、そう言ってほほ笑んだ。
「指を一本立てて。その先に灯がともる感じでイメージして、『スモファイ』って」
ジーンは、いろいろと考え方が、特別な言葉をつけるのはやめた。
単純にできるを前提に、調整をするほうが、自分自身のストレスにならなくてよい、と判断した。
「『スモファイ』?」
ぽっと菜月の人差し指の先に火が灯った。本当は詠唱が必要とされる初級火属性魔法なのだが。
「できた…」
「うん、それで薪などに火をつけることができれば問題ないから、あれね」
ジーンは、部屋の隅に置かれている薪を指さした。
「同じでいいの?」
「ええ」
菜月は楽しそうに薪に駆け寄り『スモファイ』と口にする。
指先に灯る火は薪に火をつけない。
「あれ」
「指先から飛んで移るイメージを持って」
「あ、うん。『スモファイ』」
菜月の指から火は薪へと移った。その次の瞬間、爆発した。
飛び散った薪には火がついていた。部屋のいたるところで。
「菜月さん…どんなイメージ?」
「火がボッと?」
「それ火事だからね。水のイメージで消そうか」
「あ、うん」
二人の視界の外では、ポポがシーナを咥え、部屋の中を駆け回っていた。
飛び散る火の粉を避けるように。
火の粉が落ち着くとポポは元の位置へ、気を失っているシーナを返し、何事もなかったかのように小さくなって、足の上にふわりと落ち着いた。
「えっと『レイン』?」
「正解とは言えないけど…」
ジーンは、菜月が口にした魔法に苦笑した。
詠唱を教えていないだけではなく、魔法の名前すら教えていない。
魔法は、その名を呼ばれることで発動する。それに例外はない。
音にしなくても、頭の中でイメージ化する必要がある。
より正確にかつ適切に使うために詠唱を必要とするが、これもイメージが確立されていれば不要だ。
室内に急に雨が降り出す。
薪についた火を消すために。
そして、雷が鳴った。光が部屋の中を水平に奔り、ジーンは咄嗟に床に飛び伏せた。
「あれ…」
「雨のイメージに雷入っているでしょ?」
「あ、うん…ごめん」
「乾かせる?」
「火で?」
「この水浸しの中で火は無理でしょう」
ジーンが呆れ顔でいう。自分はともかくシーナは乾かす必要が…なんで気絶しているの?
「えっと…『ヒート』?」
いきなり室温が上がり、濡れていた床も壁も乾いた。
「奈月!」
「えっ…」
「床に焦がされるよ」
「ああ…と、『クエイク』」
「地震?ちょっと、何」
「えっと、床にいたら危ないと思って」
「余計に危ない!」
「で、『デザート』」
「部屋出るよ」
「えっ、あ、ポポ!」
ジーンは、黒猫を一瞥すると先に部屋から飛び出した。
それに、菜月が続き、砂漠のような灼熱の場とかした部屋からポポがシーナを咥えて飛び出してきた。
「熱中症になるぞ!」
「ポポ言葉」
「言ってる場合か!」
「え~、『ウインド』?『リバー』?」
「えっ」
ジーンが慌てて立ち上がった。
その瞬間、どこからともなく鉄砲水が廊下を水浸しにした。
「さむっ」
続けざまにトップが吹き抜けた」
「「菜月!!」!」
ジーンとポポの声が廊下に響いた。
服を絞りながらジーンがポポに声をかける。
「にゃぁ~」
「…いやそれいいから」
「…なんだ?」
「あなたこそ何?」
「菜月のペットでかわいい猫」
「………」
ジーンの白い目がポポには痛い。
「猫は喋らない。従魔契約しているわけでもないのに」
「猫にもいろいろあるんだ。千年も生きてればな」
「えっ?」
「って、それが聞きたいのか?」
「彼女のこと」とジーンは菜月を指した。
「異世界からの転生人」
「知っているんだ」
「まぁ巻き込まれたから」
「あ、え、あ、そうなんだ。かわいそうにこんな危険な世界に」
明らかな同情的なまなざしにポポは言葉を飲み込んだ。
かわいそうな存在のほうがやさしくしてもらえそうだ、と。
「いや、そうじゃなくて」
「ん?」
「魔法のこと」
「使えたね」
「うん、使えた。じゃなくて!」
「なんだよ。起きるぞ、これ」
と、ポポは、シーナのおなかの上でゴロゴロする。
「サイズ変えれるのは問題なんだけど」
「菜月のこぼすマナで」
ポポはニヤリと笑って見せた。
「魔獣…」
「神獣!! マジで泣くぞ」
「………」
「いや、マジで」
「仲良くなったんだ」
「菜月のおかげで」
「そう、よかった」
「被害者同盟!」
「えっ?」
「次の確認は外の広場でね」とジーンはため息交じりに言う。
にゃぁ~とポポは楽しげに鳴いた。




