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体育祭。体育祭? 4

 地雷の所為でほとんどがずぶ濡れな状態の中、基地に向かう私たちは全員、満面の笑顔だ。そして、基地にいる創也達もみんな口角を上げ、とても良い笑顔をしていた。


「みんなお疲れ!」と着いて早々、みんなを労う私。


「お疲れ!」

「あの時はどうなるかと」

「負けるかと思ってヒヤヒヤしたな」

「でも勝てましたわね!」


「なあなあ! 結局敵将の敗因はなんだったんだ?」


 興奮が収まりきらないクラスメイト達が水合戦の感想を口にしていると、その内の一人がみんなに聞こえるような声で聞いた。


「司会の実況では、罠にかかったと言ってましたわね」


 あ。


 焦りやら興奮やら嬉しさで、今まで思い至らなかったけど、B-4地点で罠と言ったら――


「荒木さんがB-4で設置した罠の一つに敵将がかかるところを見ましたよ」


 監視班だった暁人の証言に皆の視線が私に注目する。


「じゃぁ、荒木さんのお手柄ってことね!」

「よくやった!」

「おかげて勝つことができましたわ!」


 それぞれから褒められるが、素直に喜べない。あれは適当に設置して、しかも偶然敵チームが罠にかかる前に私が見つかってしまった所為で、たまたま罠が生きていただけだ。


 結果、敵将を脱落させるきっかけにはなったが、それだけが今回の勝因ではないはず。


「違うよ。私のおかげで勝てたんじゃなくて、みんなのおかげで勝てたんだよ!」


 私の思ってることをみんなに伝える為に大きめの声で続ける。


「監視班、守り班、錯乱班、誘導班、突撃班。それに、大将と副将。この勝利は、どれを一つ取っても成し得なかったと思う。だから、みんなで手に入れた勝利なのだ!」


 みんなで考えた作戦で、みんなで頑張って、みんなで勝てた。その事実を実感してほしい。


「という訳で、みんなにみんなで拍手しよ!」


 元気よく自分たちに向けて手を叩く私。そこに一人、また一人と手を叩いていき、笑い声も交えながら最後にはみんなで拍手をしていた。


 うむ! 当初の『クラスみんなで力を合わせる』が達成できたと言えるな!




 ――結果として、鳥羽との約束は、守らなければいけなくなったけどね…。




「負けた紅組にはペナルティーとして、新しく開設する生徒会補助委員になってもらいます。要請があれば生徒会の補助をして頂く委員です。それではこれにて、閉会式を終わります」


 天雷会長は、色々な説明を省き、やや強引に閉会式を締めくくる。

 こっそりジャージの上着に忍ばせた携帯で時間を確認したところ、現在お昼の3時。プログラムに書いてあった通りの時間に、この怒涛の体育祭が終わった。



 …冒険者でいう、目標は達成して、任務(クエスト)に失敗した気分だ。



 水合戦の次の種目に出場する紅組の人たちに勝利を託したものの、彼らがボロボロに負けて全ての種目が終了したのだ。


 私たちにはどうしようもないことは分かるが、ペナルティーも、鳥羽との約束も、考えるとため息ばかり出てしまう。


 クラスメイトたちも概ね似たような状態になっていた。そんな中、隣にいる真子が感想を述べる。


「儚い夢だったわね」


 それはつまり、水合戦でいい感じの流れだったのに一気に負けてしまって、夢のようだと言いたいのだな。


「夢だとしても、楽しかったね」


 振り返って思ったのだ、あれは楽しかったんだと。

 あの感情をみんなでまた分かち合いたいと思っているのだから、やっぱりそうなのだろう。


「…まぁ。否定はしないわ」


 真子も私と同じように感じたようだ。素直じゃない返事が真子らしいなと思った。


「ペナルティーも目を付けられたりしなければ、名指しで要請とかは来ないでしょうし、なんとか乗り切れてよかったわ。…ダメージはまだ残ってるけどね」


 そう話す真子のくすんだ目は、体育祭が終わったおかげか、ましになっている。それを確認してたら、この後のことを思い出した。


「そういえば、水合戦勝利の打ち上げが今晩あるとか涼が騒いでたね。真子も来るでしょ?」


「当たり前よ。みんな行くんでしょ? 一人だけ行かなかったら目立つじゃない」


 やはり真子の基準はそれなのだな。


「創也が一緒に車で連れてってくれるって言ってたけど、打ち上げの場所は聞いてないんだよね。どこで何を打ち上げるんだろ。楽しみだなぁ」


 日本では団体で成功を収めたり成し遂げたりしたら、打ち上げるものらしい。これも参加するのは初めてだ。これで私もまた一つ新しい日本の常識を体験することになる。


「…冗談を言ってるのかしら。全然面白くないわよ。打ち上げの場所は学園の近くのレストランカラオケで、私たち寮生は中等部校舎の校門前にあるバス停に夕方の6時集合で一緒に行くことになってるわ」


 なんと。真子の反応からして何かを打ち上げるという訳ではないらしい! じゃ何するんだ!?

 落ち着いて考えてみることにする。場所はレストランカラオケ。カラオケは歌を歌う娯楽施設だな。そこにレストランが組み合わさってるから、食べながら歌う場所ということだ。つまりは打ち上げというの名の歌って食べる会。


 それは別に良い。むしろ楽しそう。だけど一つ大きな問題がある。


「どうしよう。知ってる歌が三つしかない」


「そんなこの世の終わりみたいな顔で言うセリフじゃないわね。ちなみにどれなら知ってるのよ」


「…指切りげんまんの歌と、日本国歌と、アルファベットの歌」


「……ボケてるの?」


「あんまり音楽に興味ないから知らないだけだよはははは」


 この世界の歌をあまり知らないだけだなんて、言えるわけないよ!

 だから最後に笑ってごまかした。


「まぁ、絶対一人一回は歌わなきゃいけないわけじゃないから、別に気にしなくていいんじゃない? どうしてもって時は、アルファベットの歌くらいなら場もシラけないでしょう」


 おおお、そのアドバイスは助かる!


「ありがとう! 参考にする!」



 かくして、真子の助言を受け入れた私は、打ち上げに行く前に、じっちゃんとお別れのハグをした後、シャワーと着替えをしてから創也とレストランカラオケに向かったのだった。


体育祭編はこれにて終わりです。

そして、これが最後のストックになります。

また溜まったら放出する形をとるので、よろしくお願います。

ここまで付き合っていただきありがとうございました。

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