表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/95

創也とお買い物。前半


 じーっ。


 只今、鏡に映る自分とにらめっこ中。



 映るのは茶色のボブヘアーをした私。


 これ本当に私か。


 髪を変えるだけでここまで印象が違ってくるものなのだな。



 遡ること、本日の昼休み。



 優しい創也が気の利くことをしてくれた。


「母さんの知り合いにカツラとカラコンをたくさん持ってる人がいるんだ。今日はいくつか借りてきたから、放課後くらいに渡すよ」


「え? いいの?」


 嬉しいけど、本当に私が使っていいのかまず確認する。


「道奈は外出の時が特に心配だからな」


 失敬な。そんな小さな子供ではない。でも、


「ありがとう! 助かる! 今日は色々と買いに行こうと思ってたとこだったんだ」


「お、早速だな! 買うならスタンガンとかどうだ?」 


 話の流れで涼が何かオススメしてきた。


 スタンガン。便利な防犯グッズの一つか? 気になったので尋ねてみる。


「それってどう使うの?」


「映画とかで観たことねぇか? こう、手で持って、電気が走ってる鉄の先端を襲ってきたやつの体につけて、ビビビビビ!!!!っと撃退すんだ」


 まんま凶器ではないか。


「物騒なのはちょっと。もう少し穏便なものがいいな。お金もあんまりかけれないし」


「…ならあれはどうだ。警棒」


 弟子も何かオススメしてくれた。でもまた初めて聞くものだ。普通の棒とは違うものかな? こちらも気になって聞いてみる。


「それはどうやって使うの?」


「それで相手を殴る」


 うん、なんとなくそう言うと思ってた。


「できれば、立ち向かう系じゃなくて、相手の隙を作って逃げれるものがいいな」


「それなら防犯ブザーですかね」


 私の希望に答えるように今度は暁人がオススメしてきた。

 防犯ブザーか。汽笛が鳴るのか?


「物によっては相手を怯ませるほどの大きな音を出せるので、買うなら事前に音を聞いて選んだ方がいいですよ」


 ほうほう。それはよさそうだ。早速頭の中の買い物リストに追加した。


「防犯ブザーだね。店に行って探してみる」


「放課後俺も一緒に行くよ。防犯グッズが揃ってる店なら知ってるから任せて」


「ほんとに? ありがとう!」


 どの店に行こうかまだ決まってなかったから、創也の提案はとても頼もしいなと思った。





 ということで、冒頭に戻る。今は放課後。


 寮に一旦戻り、荷物を置いて私服に着替える。


 短いスカートの制服で街に出たくはないのだ。学園ではみんなも同じ格好だからまだいいけど、そうじゃない街中はまだ慣れない。



 だが、問題は、この、カラーコンタクト!



 どうしよう。怖い。

 付け方が載ってる説明書は読んだ。

 それでも目玉の上に直接のせるとか、怖すぎる。



 …これは創也に手伝ってもらおう。



 一人ではできないと判断した。


 パパッとカラーコンタクトと鍵とお財布をカバンに入れる。

 寮の近くに止めた車の中で待っているだろう創也のところへ向かった。





「お待たせ!」


 車の中に入り、ドアを閉めて創也に向き直る。


「…髪だけでも雰囲気が全然違うな」


 今被ってるカツラに注目しながら創也が早速感想を言ってくれた。


「うん、私もそう思った」


 創也が今度は私の瞳を見ながら聞いてくる。


「カラコンは?」


「それがね、ハハハハ。怖くて一人じゃ無理だった」


「ははっ、カラコンは初めてなんだな」


「そうなの。というわけで、創也。手伝ってくれる?」


「え?!」


 少し裏返った声を出しながら動揺している創也を見て不安に思う。

 これは、創也も初めてのパターンか、でも目が悪いって前言ってたからコンタクトレンズをつけたことはあるだろう。

 あ、そうか。人に入れるのが初めてなのか。それは。まずいな。


「初めてだからできない?」


 恐る恐る聞いてみる。

 もしできなかったらせっかく貸してくれたこのカラコンは諦めてカツラのみで頑張るしか無くなるな。


「…大丈夫だ。と思う。俺はどう手伝えばいい?」


 おおお、さすが創也。大丈夫なんだな。


「えっとね、創也が入れてくれる? 私が両手で目を全開に開いとく」


 怖い部分を創也に任せた。


「…俺が入れるのか。道奈、自分で入れた方が入れやすいかもしれないよ」


「入れやすいかどうか。じゃなくて、私が怖いかどうかの問題だよ、創也」


 心の底から真剣に伝えた。


「そこまでいうなら…。道奈、説明書貸して?」


 承諾してくれた創也にカラーコンタクトのパッケージに付いていた説明書を渡す。けど今の創也の発言で内心不安でいっぱいになった。


 説明書を読むということは創也、本当に初めてかっ!?

 コンタクトレンズとは仕様が違うってことなのかっ!?


 でも、やっぱいい、とか言えない状況まで進んでしまったので何も言わずに不安は抑えて、創也を信じることにする。


「…手を洗う必要があるな。ここじゃできないから、アルコール消毒でもいいだろう。白石さん、車に備えてある救急箱から消毒液を渡してくれるかな」


 創也に言われて白石さんと呼ばれる運転手さんが車のキャビネットを開けて中から救急箱を出した。


 そこから消毒液を出して創也に渡す。


「どうぞ」


「ありがとう」


 消毒液を受け取り、説明書に視線を戻す創也。


「…道奈、まず目にゴミとか入ってないか確認した?」


「それはさっき部屋でしたよ」


 その後が踏み切れなかったのだ。


「…念のために俺も確認していい?」


「いいよ」


 創也に見えやすいように瞳を近づける。


 自然と至近距離で目を見つめ合う体勢になった。


 真剣な創也の表情に赤みが足される。

 車内が急に暑くなったのかな? 私は適温だと思うが。


「…」


「…」


 しばらくお互いこのままの状態で無言になった。するとだんだん創也の顔がより近づいてくる。

 それくらい近くで見ないといけない程確認しづらいらしい。


「…まだ?」


 にしても確認が長すぎる。


 そう思って声を出した途端に、近づいていた創也の顔がピタリと止まる。


「……今終わったよ」


 なら離れるか。自分の鼻息が気になってたところだったのだ。


 元の距離に戻って座った。


 少しの間だけ創也が片手で顔を覆い隠した後に説明書をまた読みだす。

 赤みのあった創也の顔は、集中だ、と書いてあるような表情になっていた。


 全て読み終わったらしい創也が、テキパキとカラーコンタクトの入っている容器を開けてから消毒液を手につける。


 消毒した手に乗せたカラーコンタクトを、そっと指の腹の上に移動させた。


 初めてにしては手馴れて見える…。

 説明書を読んだだけなのに。創也は要領がいいのだな。


「…こっちが表か」


 カラーコンタクトをじっと見て確認した創也が近づいて私に向き直る。なので私も創也が目に入れやすいような体勢で座りなおす。


「道奈は何もしないで。俺がやる」


 真剣な創也の目を見ながら私は深く頷いた。

 創也のやりやすいように、私は従うだけなのだ。


 創也がそっと私の下まぶたから下向きに開いて、次に上のまぶたを上むきに開く。

 体の防衛反応でか、反射的に目に力を入れてしまった。


「…道奈、力抜いて」


「ご、ごめん。つい。これでいい?」


「うん…入れるよ」


「…はい」


 創也の邪魔にならないように、目に力が入らないよう気をつけながら微動だにしない私。


 待っていたら目玉に何かが乗った感覚を感じた。


「い、今、入った!?」


「うん、ゆっくり瞬きしてみて」


 創也に従って瞬きした。


「どう? 痛い?」


「んー。なんかゴロゴロする。でも痛くはないかも」


 違和感がありまくりだ。目の上に何かある異物感。

 慣れるまで時間がかかりそうだな。


「俺によく見せて」


 瞬きを一旦止めて創也を見た。


「ズレはないね。もう片方も同じようにやるよ」


「うん」


 先ほどと同じ感じで無事に両目にカラーコンタクトを入れることができた。


「うわー。なんか変な感じだあ」


「痛みとかがないなら大丈夫だな。髪と目の色が違って一気に別人みたいだ」


「本当? 変装の効果ありだね! 創也、ありがとう!」


「どういたしまして。…またカラコンを入れる時は俺に言って? 難しいし、危ないから他の人には頼まないように」


「えええ、同じ寮の子とかもダメ?」


「…女子なら、まあ」


 男子に頼むことはなさそうだし深く考えずに頷いとく。


「ならいいや。それじゃあ行こっか!」



 買い物が始まってもないのに時間をだいぶ使ってしまった私たちであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ