竜の森の演習(2)
ヴィヴィ視点から後半、第三者視点です。
「ヴィヴィアーネ様」
次の日の早朝、王宮に戻ろうと学院の廊下をアロイスやリーゼロッテと歩いている時に声を掛けてきたのはジモーネ様だ。
今日は取り巻きを連れていない。一人でぽつんと立っている。まあまだ夜が明けたばかりだしね。こんな時間にこんなところに立っているジモーネ様にちょっと驚いた。
ジモーネ様は包帯だらけの私を見て息をのんだ。そして少し逡巡するそぶりを見せたが、何かを決意したように口を開いた。
「ヴィヴィアーネ様、演習で怪我をされたと聞いて親友として心配しましたわ。それに王宮に戻られると聞いて......その……わたくしたち親友なのに今回はあまりお話が出来ませんでしたわ。最後に少しお話しませんこと?」
「すみませんジモーネ様、早急に戻らなくてはいけないのです」
「あ、あら……そんなにお急ぎにならなくても……」
「いえ、所用がありまして」
いやいやいや、やけに親友を強調するわね。別にジモーネ様と親友じゃないし、親友になりたい訳でもない。けれど、いつもと様子が違うジモーネ様のことが少し気になった。
取り巻きを連れていないことも珍しい。そもそもこんな早朝に私を待ち伏せていること自体が異常だ。
「わ、わたくしたち親友でしょう? 少しぐらい時間を頂いても……」
だから親友じゃないし。……それでも焦ったようなジモーネ様のことが気になった。急いで王宮に戻りたい気持ちはあるが、ここでジモーネ様を見捨ててはいけないような気がする。私はアロイスを見た。彼が頷いてくれたので私はしばしジモーネ様とお話をすることにした。
ジモーネ様は私をサロンの一室に案内した。
こんな早朝でもサロンが使えるのね、と新たな発見をした気持ちだったが、さすがにサロン付きのメイドはいなかった。ソファーに腰を落ち着けると、ジモーネ様はアロイスをチラッと見た。彼に外に出て欲しそうだったが私の護衛騎士を勝手に退出させることはできない。アロイスも素知らぬ顔をして梃子でも動かなかった。
「彼なら大丈夫ですわ。私が言えば絶対に何も喋りません」
私が言わなくてもアロイスは必要最低限しか口を開かないが。
ジモーネ様は私を誘った割にはなかなか話をしようとしなかった。じっと腰を落ち着けて待つこと数分。ふうっとため息をついて私は「そろそろ時間なので」と腰を上げようとした。
「お父様が! い、いえお母様が……」
焦って叫んだジモーネ様に向かって「はぇ?」と間抜けな声を出してしまった。
「あああの今更こんな相談をするなんて図々しいかもしれませんけど……いえ、わたくしたちは親友よね。親友なら相談を持ち掛けてもおかしくないわ。なんて言ったって親友なんですもの」
なんか自分で納得してジモーネ様は話し始めた。
冬期休暇で帰省した時屋敷の雰囲気がおかしかったこと。見慣れぬ使用人がいて偶にこそこそお父様と話をしていること。お母様が情緒不安定で浮かれたと思ったら落ち込んでいたりすること。お姉さまがずっと怖い顔をしていること。そうしてある晩、お父様が暗い居間に一人で座りお酒を飲みながらブツブツ言っていたこと。その中にトシュタインという名前と「これでいいんだ」「我が家はもっと大きくなる」という呟きが聞こえた事。
「何でもないことかもしれませんの。でもわたくし気になってしまって……」
私は真剣な顔をして黙り込んでしまった。
だってこれは捨てておけないことだと思う。彼女はそれをわかっている。そしてそれを私に相談するということの意味も。私は王室の人間なのだから。
「お父様もお母様も悪い人間ではないのです。それは……ちょっと権力を欲しがるというか上に立つのが好きというところがありますけれど、向上心があるのはいい事ですわよね。……それに、わたくしは小さいころからジモーネの結婚相手に最も相応しいのはジークハルト殿下だよ、と言われて育ってきましたの……ジモーネがジークハルト殿下と結婚すれば我が家はもっと上に行ける、もっと幸せになれるというのがお父様の口癖で……お母様は社交界のトップのわたくしの娘なのだからジモーネは当然王太子妃になるべきだわと......でも最近はマリアレーテ殿下の側近がゴルトベルグ公爵夫人とビュシュケンス侯爵夫人だと噂され、多くの人がお母様のもとを去ってしまったのです。それでお母様は凄くヒステリックになられてお父様に詰め寄ることも多くなって、お父様は領地経営が思わしくなくて忙しいからカリカリしていて……でも……見知らぬ使用人が我が物顔でお屋敷を歩いている今は、その頃よりももっともっと我が家の雰囲気がおかしくなってしまったのです……」
彼女はすすり泣いていた。今まで張りつめて虚勢を張っていた糸が切れてしまったみたいだった。
「お父様もお母様も……悪い人間では無いのです。わたくしもお姉様も可愛がってくださいました。見栄っ張りですけど……でも……でも……」
私はジモーネ様にハンカチを渡しながら言った。
「ごめんなさい。私は何が正解かわかりません。でも私は王室の人間ですからジモーネ様に聞いたお話は私一人の胸に秘めておくわけにはいきません。ジモーネ様は……お父様やお母様のことが大事なのですよね」
私の言葉に泣きながらもジモーネ様は頷いた。
「まずはお父様やお母様としっかり話し合うことだと思います。お父様たちが何をしようとしているのか。そしてそれがこの王国に仇成すことならばそれをやめさせる。もし何かを犯してしまった後ならば潔く申し出て罪を償う。そう説得するべきだと思います。罪を犯したうえでの幸せなど無いのだと。ジモーネ様はそんなことを望んでいないのだと説得するべきだと思います。幸いもうすぐ(と言ってもあと一か月くらいあるけど)夏期休暇です。今から帰省しちゃってもいいのじゃないかしら」
「わたくしに……出来ますかしら……」
「やらなくてはいけないと思います。ええ、これはジモーネ様にしかできないことですわ。学院の方は早めに夏期休暇をとっても補習とちょっとしたペナルティーで済むように学院長に話しておきますわ。前例があるので大丈夫です」
私の言葉にジモーネ様は力強く頷いた。
「それからお父様にお話しするときはその見慣れぬ使用人にばれないように。たとえば内緒で帰省しても侯爵邸に帰る前に別人の名前でハンクシュタイン侯爵を呼び出して説得することをお勧めするわ」
「わかりましたわ、ヴィヴィアーネ様! わたくし、やってみせますわ! ああ、やっぱりヴィヴィアーネ様はわたくしの無二の親友ですわ!」
ジモーネ様はこぶしを握り締めた。
そうして私は学院長室に寄った後今度こそ王宮に向けて出発したのだった。
もちろんアロイスの竜に同乗させてもらって。
———♦♦♦———
王宮の竜場、アロイスの竜から降り立ったヴィヴィをジークが迎える。
ヴィヴィの包帯だらけの姿は出迎えた者たちに衝撃を与えた。
「ヴィヴ「ヴィヴィ! 僕の可愛い妹をこんな目に合わせた奴は僕が切り刻んでやる!!」」
ジークより早くフィリップがヴィヴィに駆け寄りその身体を抱きしめようとしたのでジークはすんでのところでフィリップを羽交い絞めにした。
「フィリップ! ヴィヴィの傷に触ったらどうするんだ!」
「あっああ、すまないヴィヴィ」
「それにヴィヴィを抱きしめるのは私の役目だ!」
ジークの主張は聞き流され、羽交い絞めにされながらもフィリップは心配そうにヴィヴィを見つめてくるのでヴィヴィは安心させるように微笑んだ。
「大丈夫よフィル兄様。ちょっと包帯が大袈裟なだけでほとんど痛まないの」
ヴィヴィの傷は転んだり殴られたりした時の打撲や擦り傷、切り傷がほとんどだ。骨折や内臓損傷などの大きな怪我は無いが、ただし、心身の疲労から発熱してもおかしくないと医師は言っていた。それに傷は広範囲にわたっており、今は精神的に張りつめているせいで痛みを感じないのだろうとの医師の所見をアロイスはジークに伝えた。
そのアロイスは、ヴィヴィを見てふらふらと倒れ掛かりメイドたちに支えてもらって復活したレーベッカに今は責められてタジタジしている。
どうして護衛なのにヴィヴィ様にあんな怪我を負わせたのだ、というレーベッカの非難もわかる気もするが、事件は竜の森で起きた。
竜の森には護衛を連れて入ることはできない。アロイスたち護衛にはどうすることもできなかった。寧ろ責められるべきは三度竜の森に侵入を許した我々の方だとジークは臍を噛む思いで痛々しいヴィヴィを見つめた。
「ヴィヴィ、怖い目に合わせてすまなかった。抱きしめていい?」
ジークがそろそろと両腕を持ち上げると、ヴィヴィがその腕の中に飛び込んできた。
傷に触らないようにそっと抱きしめていると小さな嗚咽が聞こえた。
張りつめていたものがほどけたように、ようやく安心できる場所に戻ってきたというように次第に腕の中のヴィヴィの嗚咽が大きくなっていく。
ジークは腕の中の宝物が壊れないようにそっと、けれども力強く抱きしめ、安心させるように背中をさすり続けた。
やがて嗚咽が小さくなり、ふうっと大きな息をして、ヴィヴィはジークから離れた。
「ごめんなさい、ジークの服がびしょびしょ」
レーベッカからハンカチを貰ってびしょびしょの顔を拭きながらヴィヴィが恥ずかしそうに言う。
「いや、逆にごほうびだよ」
ジークの答えにヴィヴィがきょとんとする。ここまでヴィヴィに頼られたことは初めてだった。自分の胸の中でようやくヴィヴィが安心できたと思ってくれたことがジークにはとてつもなく嬉しかった。
そんな二人を少し寂しげな顔で見つめていたフィリップはヴィヴィの頭をポンと叩いた。
「フィル兄様」
「疲れているだろうけど話を聞かせてくれる?」
「うん、その為に急いで戻ってきたの。お父様と......フーベルトゥス騎士団長にも同席して欲しいのだけど」
「わかった、手配してくる。報告が終わったらゆっくり休むんだよ」
「ありがとう、心配かけてごめんね」
「僕はヴィヴィが無事ならそれでいい」
軽くハグをしてフィリップが去っていく。
「お役御免かな」という呟きを聞いたのはジークの少し後ろに控えていたエルヴィンだけだった。
王宮の奥宮の奥まった一室、防音の結界を張ったその部屋に集まったのはヴィヴィ、ジーク、フィリップ、ルードルフ、フーベルトゥス騎士団長、そしてマリアレーテの六名。加えて部屋の隅にヴィヴィの護衛筆頭のアロイスとジークの護衛筆頭のシュテファン、マリアレーテの護衛筆頭のユストゥスが控えている。
国王は公務で来ることが出来ず、扉の外でエルヴィンやリーゼロッテ達が警護し、レーベッカがお茶を入れると部屋を出ていった。
「私を襲ったのはトシュタイン王国の第八王子、アメディオです」
それは既に報告されていたが、ヴィヴィは襲われた時の顛末を詳しく語った。
「ふうむ……此度の事はアメディオの独断なのか、それともサロモネの我が国への侵攻計画の一端なのでしょうか……」
ルードルフの言葉にジークが続ける。
「私にはサロモネとアメディオは一枚岩ではないと感じる。まあ、トシュタイン王国の王子たちが一枚岩だったことなど、過去一度も無いが」
ジークの脳裏に顔色一つ変えず、むしろ嬉々として第三王子ガスパレの首を撥ねた時のサロモネが蘇る。
「ヴィヴィの話からすると、今回ヴィヴィの誘拐を企てたのはアメディオ、サロモネはそれを利用したと考えていいのでは?」
狡猾なサロモネの考えそうなことだ。アメディオはオリヴェルトから聞いた話ではトシュタインの王宮での力はほとんどない。何かを計画したとしてもサロモネの手駒を使うしかなかっただろう。つまりアメディオの計画はサロモネに筒抜けだった。
「しかしサロモネ自身もヴィヴィを狙っていることは確かだろう? ヴィヴィがジークの弱点だとちゃんと知っていた」
「フィリップ、ジークハルト殿下だ」
律儀にルードルフが訂正するが、ジークは「今はいいよ」と流した。ヴィヴィの前ではフィリップはジークに対しぞんざいな態度をとることも多いが、公の場ではジークを敬う態度、口調を崩したことが無い。
実際フィリップもエルヴィンもジークの従兄弟であり、ある程度ラフな物言いは許されている。それを言えばルードルフはジークの伯父であるがルードルフは一貫して臣下としての姿勢を崩さなかった。
「私は怖いわ」
「お母様?」
マリアレーテの言葉にヴィヴィが隣に座るマリアレーテを見る。マリアレーテはヴィヴィと会って抱きしめてから、その後はヴィヴィの手をずっと握っていた。
「ディオという少年は学院で見たことがあります。その時にはヴィヴィを慕う無邪気な少年に見えましたわ。けれど前回の誘拐、今回の襲撃、私にはヴィヴィに対する異常なほどの執着を感じるのです」
ヴィヴィの手を握るマリアレーテの顔は青ざめていた。
「私に対する執着? 私の魔力量が多いからではないかしら。トシュタインは魔力量が多い令嬢を欲しがっているのでしょう?」
「それだけじゃないと私も思うよ、ヴィヴィ」
反対側に座るジークもマリアレーテに賛成するのでヴィヴィは戸惑った目でジークを見た。
「あいつは、アメディオは、間違いなくヴィヴィに特別な感情を抱いている。私はアメディオと直接会った事が無い。だからその感情がどういう種類のものかはわからない。だけどあいつの行動にヴィヴィに対する執着を感じるんだ」
ジークの言葉にフィリップも頷く。そしてヴィヴィの頭を撫でようと手を伸ばしてジークに阻止されながら言った。
「大丈夫、ヴィヴィの事はこのお兄様がしっかり守るから安心して」
「フィリップ、私より先に言わないでくれ!」
ジークが睨むけれど、フィリップはしれっとヴィヴィに微笑みかけていた。
きっと定番化しつつあるこのやり取りも私の心を落ち着ける為なんだろうな、とヴィヴィはクスっと笑いがこみ上げた。二人の気遣いが嬉しかった。
「あー……その、なんだ、竜の森に再三侵入を許している俺がいうのもなんだが……ヴィヴィアーネ殿下は我が騎士団が身命を賭して守ると約束する。そうだな、アロイス」
フーベルトゥスの言葉に壁際に控えていたアロイスも力強く頷く。
「この身に変えてもお守りします」
「ハイハイ、俺もマリアレーテ様に傷一つもつけないつもりですよ―」
隣に立つユストゥスに加えてジークの護衛であるシュテファンも頭を下げた。
「うん、君たちの事は信頼しているし、頼りにしているよ」
ジークの言葉にルードルフも続けた。
「フーベルトゥス、竜の森の侵入に対しては騎士団ばかりの責任とも言い難い。最初の侵入はウルプル伯爵の怠慢の所為、そしてパルミロの動きを捉えられなかった我々の落ち度もある」
「いや問題はそれだけではないんだ......」
言葉を濁すフーベルトゥスは何かを待っているようだった。
「ヴィヴィアーネ殿下を襲った三人の騎士の身元なのだが……」
「彼らは多分、いえ、確実にトシュタイン王国の人間だと思います」
ヴィヴィの言葉に頷いてフーベルトゥスは話を続けた。
「ヴィヴィアーネ殿下が発見された当初、彼等は何者かに襲われたヴィヴィアーネ殿下を守ろうとして殺されたと推測された。直ちに身元の割り出しが開始され、騎士服から直ぐに特定することが出来た」
騎士は隊によって騎士服の色が違い、肩章の飾りや色によって階級や配属場所が分かるようになっている。
三人は王国騎士団の第七隊、四か月前の配置換えによって竜の森の一番東南側、ハンクシュタイン侯爵領の門に配属された三名だということが程なく知れた。
「三人の名前、経歴などもわかっている。平民の騎士だが、三人とも真面目、借金や揉め事も、問題のある家族もいない。パルミロの件以来、門に配属される騎士の身元調査は徹底して行っている」
「そんな……確かにあの三人は......」
ヴィヴィは竜の森で会った三人の様子を思い返していた。死んでしまった人間を詰るのも気が進まないが、下卑た物言いは到底騎士とは思えなかった。あれが本性で普段は清廉潔白な騎士を装っていたのだろうか。
その時部屋にノックの音が響く。
防音の結界を一時解いて招き入れたのは何やら紙を持ったエルヴィンだった。
その紙を受け取りフーベルトゥスが「やはり......」と呟く。
「フーベルトゥス、それは?」
「竜の森で殺された三名はやはり我が国の騎士ではありませんでした」
「何? どういうことだ? 同じ門所属の騎士が確認したのだろう?」
ルードルフの問いかけにフーベルトゥスは渋面をつくる。
「ヴィヴィアーネ殿下の証言を聞いて念のため調査をしたんだ。第七隊の王都勤務で彼らを知っている者がいたので現地に向かわせて遺体と対面させた。彼らと仲が良かった騎士は爵位無しだが貴族だったから竜で現地に行くことが出来た。故に埋葬前の彼らの顔を確かめることが出来た。まったくの別人だったそうだ」
「ということは......」
「ああ、春の配置換えの時点で三人とも別人にすり替わっていたということだろう」
ルードルフだけでなく他の者たちも愕然とした。
三人は配置換えの辞令の後、騎馬でハンクシュタイン領に向かい、現地での勤めっぷりも目立つところが無く真面目に努めているように見えていた。
三人とも独身で、王都や他領に家族が住んでいるようだが、まめに手紙のやり取りをしていた訳ではない。大体独身の騎士で筆まめな者などほとんどいない。便りなど無くても三人の家族はつつがなく勤めているようだと安心していたようだ。
そして以前から勤務していた門の騎士たちも疑問なく彼らを迎え入れていた。三年前の事件以来、竜の森の門や巡回騎士の配置換えは頻繁に行われている。まさかその三人が王都から来た騎士と別人だと誰が想像できただろう。
「では......本当の騎士たちは?」
「これから調査します。既に数か月経っているので難しいとは思いますが」
震える声で聞いたヴィヴィにフーベルトゥスは沈痛な面持ちで答えた。
おそらく三人は王都からハンクシュタイン領に向かうどこかで襲われたのだろう。王国騎士団の三人連れを襲うような輩がいるとは通常なら考えられないが、三人の身分を奪うつもりなら道中の宿屋で薬を盛るとかやりようはある。おそらく本物の三人はもう生きてはいないだろう。
「別人が騎士に成り代わるなど……あり得るのか?」
ジークが呟いた。
あり得るもなにも実際入れ替わっている。
そしてヴィヴィの証言が無ければそれは発覚しなかった。竜の森で殺された三人は現地で埋葬されるからだ。ヴィヴィを守ろうとした騎士として。家族には身に着けていたものが遺品として渡されるだけだ。
「通常ならありえないのですがね……」
フーベルトゥスの瞳は暗い。言いにくいことを無理矢理口に出すようにフーベルトゥスは口を開いた。
「騎士団の......それもかなり俺に近い位置の者に内通者がいます」




