スカウト
翔
男が引き金を引く瞬間だった。
「やめろ!」と言う声が聞こえた。数メートル先にはシェリーブロンドの男と黒髪の男が立っている。叫んでいるのはチェリーブロンドの男だ。
「警察だ!銃を下せ!」彼は言った。
「クソ、サツか!」銃を持った男は立ち上がって、走り出した。
そして、急に姿を消した。
「特殊能力使いか。そう言いながら。」警察という男たちが僕に駆け寄った。
「警視庁特殊能力課の秋間涼平だ。怪我はないか?」黒髪の男は僕に言った。
特殊能力課⁈それは各都道府県警察本部にある、特殊能力、すなわち超能力を持ってる人たちが集まり、悪質な特殊能力使いを取り締まっている集団。もっとも、特殊能力課には法律がほとんど適用せず、民間人に被害が出なければ、犯人をどうしようがかまわない。そんな恐ろしいが、街の秩序を保つ最強の集団だ。
「君の周りに落ちてるこの弾丸は何?」チェリーブロンドの男は僕の周りに散らばっている弾丸を一つ拾って言った。
「彼は色川拓也だ。」秋間さんが僕に伝えた。
「下の名前で呼んでね。」
「…なんか撃たれました。僕もよくわかりませんが、弾丸が全て僕に当たる寸前で止まって、時間が経つと落ちていきました。」
「それ、多分君の特殊能力だよ。」彼が言った。
「特殊能力…ですか?」
「そうだよ。俺たち、特殊能力課はね、君をスカウトしにきたんだよ。」
「スカウト⁈僕をですか⁈」
「うん、そうだよ。」色川さんが言った。
「だけど、色川さん、僕は自分の力の使い方も何も知らないし––」
「それはお前がこれまで力を使おうという意思を明らかにしなかったからだ。今回は運良くお前の特殊能力が発動したけどな。」
「だけど、僕は何もできないし!学校も行ったことないし––!」
なぜか僕は焦って言った。こんなチャンス逃したら、もう一生ないかもしれないのはわかっているはずなのに…
「君はそんなに路上生活続けたいの?」拓也さんに聞かれた。
「––––ッ!」そう言われて返す言葉をなくした。
???
俺は建物の影から出た。
「失敗しました。あいつの特殊能力は発動しないはずじゃなかったんですか?」電話に向かって言った。
「仕方ない。作戦会議のために戻ってこい。」電話からの声が言った。
そして、プツッと鳴って電話が切れた。
色川拓也がこっちを睨んでいた。
「チッ、気付かれた。」
俺は急いで建物の影に隠れて逃げた。