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Crow  作者: むー2
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第6話:天裂(てんれつ)

皇都のメインストリートを、漆黒の大型バイクが矢のように疾走する。

ヘルメットの奥、雄介の瞳は前方の高層ビル、スカイガーデンを見据えていた。

雄介はスロットルを固定し、一瞬だけハンドルから両手を離す。

その手には、いつの間にか古めかしい意匠を凝らした漆黒の鏡——**「八咫の鏡(やたのかがみ)」**が握られていた。

「——変身!」

雄介が鏡を前方へ掲げると、鏡面から溢れ出した闇が奔流となって彼の身体とバイクを包み込む。

疾走する闇の中で、雄介の肉体は漆黒の装甲を纏い、バイクはより鋭利で攻撃的なフォルムへと変貌を遂げていく。闇が弾け飛んだ時、そこには皇都を駆ける死神、**「クロウ」**の姿があった。



その頃、スカイガーデンの展望テラスは地獄と化していた。

「全隊、鎮圧用麻痺弾を散布! 暴徒を傷つけずに無力化せよ!」

現場指揮官、千葉次郎中佐の怒号が響く。皇都警察の精鋭「特別鎮圧機動隊」が、必死の防衛線を張っていた。

その様子を上空から見下ろしていたグラサンの男が、不快げに舌打ちをする。

「……興を削ぐ連中だ。少し掃除が必要だな」

男の身体が膨れ上がり、衣服を突き破って巨大な翼が展開される。月光の下に現れたのは、凶悪な牙を持つ蝙蝠魔人バット。

バットは超高速で急降下し、隊員たちの列を次々と薙ぎ払った。

「実弾使用許可! 撃てッ!」

千葉中佐の命令で隊員たちが一斉射撃を開始するが、バットの硬質な翼は弾丸を虚しく弾き返す。

バットが千葉の眼前に降り立ち、鋭い爪を振り上げた。千葉が死を覚悟し、目を閉じたその時——。

ドォォォォンッ!

凄まじい爆音と共に、展望台のフェンスを突き破って漆黒のバイクが宙を舞った。

「なっ……!?」

反応の遅れたバットの胸中に、重量級のフロントタイヤが叩き込まれる。

「ガハッ……!」

空中を回転しながら体勢を立て直したバットは、自分を弾き飛ばした仮面の男を睨みつけた。

「その姿……スパイダーを屠った野良犬か! だが、あんな地這う虫と一緒にしてもらっては困る。空を支配するのは、この私だ!」

バットが大きく口を開き、超高周波の破壊音波を放つ。

大気が歪み、周囲の強化ガラスが粉々に砕け散る中、クロウはバイクを極限まで傾け、ジグザグに回避していく。

「逃がさんぞ、黒羽め!」

「……逃げるつもりはない」

クロウの声と共に、装甲の背部から漆黒の翼が展開された。

クロウは加速したバイクのシートを力強く蹴り、自らも大空へと身を投じる。

「飛翔……!」

跳躍と同時に、腰の中央にバックルとして収まった八咫の鏡から、一振りの漆黒の剣が実体化した。

「天叢雲剣(あめのむらくも)」。

刀身が闇を吸い込み、不気味に、かつ神々しく輝く。

「落ちろ」

クロウが空中で一閃。

音速を超える一振りが、バットの身体を真っ向から両断した。

「馬鹿な……我が空で、敗れる……だと……!?」

絶望の叫びと共に、バットの身体が内側から爆発。夜空に巨大な火柱が立ち昇り、激しい衝撃波がスカイガーデンを揺らした。

炎の雨が降り注ぐ中、千葉中佐が恐る恐る目を開ける。

そこには怪物の姿はなく、ただ遠くのビル街へと続く道を、爆音を響かせながら走り去る「漆黒の背中」があった。

「あれが……クロウ……」

千葉の呟きは、夜風にかき消されていった。

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