第47話:雄介(ゆうすけ)
やっぱり最後は、このシーンになってしまった。
物語的には、これで、最終回ですが、明日は、エンディング曲の予定。
【復興する皇都】
あの日から、季節がめぐった。
巨大な傷跡を残した皇都は、人々の力強い歩みによって着実にその姿を取り戻しつつある。行き交う人々には笑顔が戻り、街には活気が溢れている。
だが、その平穏の礎となった「漆黒の守護者」の姿は、どこにもない。
【皇都警察庁・対魔特務局】
山積みの書類を決済していた霧島冴子は、ふとペンを止め、窓の外に広がる澄み渡った青空を見上げた。
(……あなたは今、どこでこの空を見ているのかしら)
強引で、勝手で、けれど誰よりも真っ直ぐにこの街を愛した男。彼女は今も、雲の切れ間に、不意にあの漆黒の翼が翻る幻影を見ることがあった。
【小野寺研究所】
小野寺所長は、新型アンドロイドの調整に没頭していた。だが、どんなに技術を尽くしても、淤加美や四方諸神のような「魂」を持つ機体は二度と作れなかった。
(……あの子たちは、幸せだったのかね。……あの日、彼らと一緒に消えていった鴉も)
命を懸けて街を護り、閃光の中に消えていった淤加美、青龍、朱雀、白虎の四体。そして、漆黒の鴉の事を思い
所長は静かに作業の手を止めた。
【皇都警備隊・訓練場】
「腰が高い! やり直しだ!」
藤岡大佐の怒号が響く。新しく配属された機動隊員たちを、彼はかつてない厳しさで鍛え上げていた。その傍らには、あの日を共に生き抜いた唯一の四方諸神、玄武が静かに佇んでいる。
(……二度と、部下を死なせはせん。……そして、あの日、閃光と共に消えた貴様の想いも、私と玄武が繋いでいく)
あの日、皇都を救った一撃。その眩しすぎた光の記憶を胸に、老兵と鋼の守護者は今日も若者たちを導き続ける。
【南国の海辺】
場面は変わり、眩しい太陽が降り注ぐ南国の砂浜。
寄せては返す波の音の中、数人の子供たちが元気に走り回っている。その側で、一人の青年が砂浜に寝転び、心地よさそうに昼寝をしていた。
【皇都・喫茶アミティエ】
慌ただしいランチタイムが終わり、店内に静かな時間が流れる。
カウンターを拭いていたくみが、ふと手を止めて呟いた。
「……こんな時に、雄介さんがいれば助かったんですけどね」
あの日、「ちょっと忘れ物をとってくる」と店を出たきり。
「……雄介さん、今頃どこにいるんでしょう。きっと、元気でやってますよね?」
えりの問いかけに、おやっさんはコーヒーを淹れる手を休め、窓の外の青空を細めるような目で見つめた。
「……ああ。あいつのことだ。きっとどこかの空の下で、のんびり昼寝でもしてるさ」
【南国の海辺】
再び、波の音が響く。
「ユウスケ! 早く起きて、一緒に遊ぼうよ!」
子供たちの呼声に、青年がゆっくりと目を開ける。その瞳には、皇都で見上げたものと同じ、どこまでも高い青空が映っていた。
風が吹き抜け、青年の耳元にだけ「管理者」の穏やかな声が届く。
『……ありがとう、雄介。私の世界を救ってくれて。契約により、君を本来の輪廻に戻すことはできないけれど……』
『せめて、君が本来生きるはずだった寿命の分だけ、残りの人生をこの世界で楽しんでほしい』
青年——雄介は、空に向かって小さく笑うと、砂を払って立ち上がった。
かつて戦士だった背中に、今はもう重い装甲も、戦うべき宿命もない。
彼は駆け寄ってくる子供たちを迎え、穏やかな光の中へと歩き出した。
(完)




