五精家会議
イオタ帝国を支える大貴族中の大貴族、五精家では、定例的に会議を設けている。
「……と、かように昨今の精霊石の需給状況はひっ迫しており……」
「……精霊石の確保無くして、このイオタ帝国の繁栄は無いことは、ここに会する面々ならば重々承知のこととは思うが……」
いつも変わらぬ面子、十年一日の議題、相も変らぬセリフ回しのような発言。
五精家会議と称してはいるが、協力して何かをなしたことなど、もはや遠い記憶の彼方にしかない。
帝国とは名ばかり、皇帝は単なる庭番、我ら五精家も力関係は二十年ほど固まったままだ。
だが、今日だけはちょっとした見ものがある。
我が水精家に対置されし、火精家の四男の話題よ。
十歳の加護の儀で、見慣れぬ術が披露され、会が打ち切られたとか。
どのような術か披露は無かったというが、常ならぬ振る舞い。
恐らく、口に出すのも憚られる術の啓示があったに相違ない。
折しも我が水精家では、先日の三女リュシーナが希代の加護の啓示を受けたばかり。
さてさて、父親はどんな顔をしているのやら。
豪奢な会議室の扉が静かに開かれ、遅れて到着した火精家の当主が入室する。
「遅れて申し訳ない。身内に不幸があったものでな。」
「不幸とは……?」
持回りで議長の土精家当主が声を発する。
「我が火精家の四男、コーディウスが昨夜、身罷った。」
「なんと……?」
「昨日は元気に加護の儀を受けていたと聞いたが…?」
「悲劇的な事故だ。馬車の不備、五精家の名に、誠に恥じねばならぬ」
唐突な話だが、まさか、自死か?
火精家は代々、当主一族は苛烈な気性の持ち主。
生半可な能力では、継承者の地位にあることさえ厳しかろう。
いずれにせよ、弔問の手配をせねばな……
それにしても、リュシーナに、なんと伝えたものか。
あの少年が、喪われたとはな……