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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
3章 三重「個性」
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32. 天空の〇〇〇

「問題です、天空の~と言えば?」


 伊勢神宮から離れて次の場所へ向かう途中。ゆ~ちゃんがミカンに向けてクイズを出している。もちろん次の場所に関するネタだ。


「はいはいはい~!」

「はい、犬っころ」

「つるぎ!」

「言うと思った」


 ゲーマーならそう答えるよねぇ。わたしはゲームは少ししかやらないけど、それでも天空のって言われたらつるぎって言いたくなるもん。


「最初は必ず『つるぎ』よね。『よろい』も『かぶと』も『たて』もあるのに、やっぱり武器の方が重要なのかな」

「だって格好良いんだもん~」

「でもどうせもっと強い武器が出てきてそっちしか使わなくなるんでしょ」

「それはゲームシステム上仕方ないんだもん~ロマンが大事なんだよ~」


 あれ?ミカンが食いつくのは分かるんだけど……


「ゆ~ちゃんもゲーム詳しいの?」

「まぁね、アイドル活動始めてからずっと一人だったから休みの日は家に籠って…………って違う違う、別に詳しくなんかないよ!」


 しまった、地雷踏んだっぽい。ゆ~ちゃん友達できて良かったね、なんて怒られるから言わない。


「弓弦さん、友達たくさんできて良かったですね。私も弓弦さんは大切な友達ですから!」

「このちっこいのはぁ~!」

「いたひ、なんれれふは~!」


 言っちゃった……


 でも、本当に良かったと思える光景だね。運転中なので見えないけど。


「と、ともかく、『つるぎ』でも『よろい』でも『かぶと』でも『たて』でもないの!ヒント、これから向かう場所に実際にあるモノです」

「実際にあるの~?」


「カキ氷!」

「ダメ人間、さっき赤福氷たらふく食べたでしょ……」

「うふふふ、弓弦さんにダメ人間って言われる筋合いはないよ」

「なんですってー!」


「ゲームショップ~」

「ゲームからは離れられないのね……何売ってるのよ」

「天に召された数々のクソゲーが眠る地とか~例えば」

「はいストーーーップ!」


「バイト先はいかがでしょうか」

「あ~はいはい、仕事中毒ならそう言うでしょうね」

「でも格好良く無いですか?『天空のバイト先』働いてみたくありません?」

「……確かに」


「ビール!」

「『天空のビール』ありそう!」

「だろ?御殿場高原ビールとかあるんだから、天空のビールがあっても良さそうだろ。飲んだらそれはもう天にも昇る気持ちになる……ってビールは大体そうか」


「……あれ?そもそも何を聞こうとしてたんだっけ」

「はいはい、そろそろ答えの場所に到着するよ~」


 放置していたコントが収拾つかなくなった頃、タイミングよく目的地に着いた。


 伊勢神宮を出発した後、伊勢志摩スカイラインに入って鳥羽方面に向かった。伊勢志摩スカイラインは朝熊山を越えるための有料道路。中央付近に朝熊山の頂上があり、そこの広場では絶景が見られるだけではなく、目的の名物が置いてある。そもそも伊勢志摩スカイライン自体が「天空のドライブウェイ」って呼ばれてるけど、それはクイズの答えではない。




『天空のポスト』

 朝熊山頂上広場になんの脈絡もなくポツンと立っている従来型の赤い丸いポスト。旧型のポスト自体が珍しいのはもちろんのこと、何故か恋人の聖地となっていてこのポストから恋人に向けて手紙を送ることが流行りかけているらしい。郵便屋さん大迷惑。撤去したいだろうに。


「ポストでござるか?」

「……確か……手紙を……入れておくと……運んで……もらえる」

「面白い発想だね~」


 異世界組はそもそもポストという概念自体新しいものだったらしく、ポツンと立っている不可思議な雰囲気はあまり気になっていないようだ。他の人は辺鄙な場所にポストが置いてあることの違和感が強いようで、観光スポットと言われてもピンと来ないようだ。


「向こうの世界では手紙ってあったの?」

「あったでござるよ」

「どうやって運んでたの?」

「馬車組合が郵便配達サービスもやっていたでござる。馬車の運行のついででござる」


 なるほどね。日本だとバスや電車とかの交通機関に持っていくと一緒に運んでくれるってイメージかな。


「安い金額だと地域ごとに決められた共通の配達場所に置かれるだけなので、届け先の人がその場所に赴いて何か届いてないか確認する必要があるでござる」

「え~それじゃあ事前に手紙送りますって伝えておかなければならないってことじゃん。意味無~い」

「だから決まった時期に届くことが分かっている場合などに使う場合が多いでござる。毎月末に送るとかでござるな」


 あ~なるほど、定期便の場合は良いのか。むしろ毎回送る場合に安く済むならありがたいサービスなのかも。


「高額な金額を払う場合は家まで届けてもらえるの?」

「そうでござる」


 家まで届けるって大変だもんね。こっちの世界で何でも気軽に届くっていうのが異常なのかもしれない。


「重要な手紙の場合は更に高くなるのかしら」

「横石さん?」

「こっちの世界のように業者が専門で手紙を輸送している訳ではなく、あくまでも馬車移動のおまけ作業のようなイメージですわ。まともに手紙を管理しているとは思えないですわ。人に見られたくない手紙の場合は高いお金を払って管理してもらうよう契約するしか無いのかしら」


 そういえばこっちの世界では手紙は誰にも読まれないこと前提だったなぁ。誰に何を言われたわけでもないけど、無条件で信じちゃってる。それを疑う必要がある世界か……ちょっと怖い。


「無料で防護魔法をかけてもらえるでござる」

「防護魔法?」

「書かれた文字が誰にも読めなくなる魔法でござる。かけた魔法と対をなす解除魔法が必要でござる。防護魔法がかけられた手紙を手にした人はその街の馬車組合に持ち込めば解除してもらえるでござる。組合の人だけはどの解除魔法が必要か分かるでござる」


 ほへぇ~異世界っぽ~い。馬車組合の人しか解除できないから、盗み見されても読まれないってことか。


「そんなすごい魔法が無料ということが驚きですわ」

「昔は手紙の配達についてトラブルが頻繁に発生したので、無料でサービスすることになったらしいでござる」


 配達の問題についてはこっちの世界でもあるもんね。自己責任とはいえ、せっかく書いた手紙がぞんざいに扱われたりしたら文句も言いたくなるのかもね。




 天空のポスト観光は単なるネタのつもりだったんだけど、思いのほか異世界の郵便事情が聞けて面白かったな。ちなみに、ここから見える海側の景色が絶景なんだけど、時間をかけて観光する予定はない。ドライブしながら景色を見てもらうつもりだ。というのも、伊勢湾の絶景観光は別の場所で用意してあるからだ。


ドライブウェイを走った記憶はあるのですが、ポストを見た記憶は無いです。


異世界の郵便事情は適当です。ただ、ポストって考え方は受け入れにくいだろうなぁ、と。自分で店に「配達してください」って持っていくのが普通の考え方じゃないですか。



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