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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
3章 三重「個性」
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19. 横石さんの友達

「どうぞおかけになってください。あと、お口に合うか分かりませんがよろしければこちらをどうぞ」

「いえいえ、お構いなく」


 お構いなくって言葉を使ったの、人生ではじめてかもしれない。それなのにスムーズに言葉が出てくるから不思議。


 ピアノコンクールが終わった後、わたしたちは横石さんの友達の家まで直接向かうことになった。予定ではコンクール終了後に挨拶して同行する予定だったんだけど、終わった後にお世話になった方に偶然会って話が弾んでしまい、わたしたちといつ頃合流できるかか分からないので先に夕飯を食べてから直接家に来て欲しいという連絡が来たからだ。


 彼女の家は桑名市にあるため、夕飯を食べた後は津駅から近鉄名古屋線で来た道を40分程度戻った。桑名駅から三岐鉄道北勢線へ乗り換えて数駅先の駅で降りてから歩いて向かった。北勢線は駅のホームが小さく住宅街のど真ん中を突き進んでゆく風変わりな電車で、これまたパステルちゃんが大喜びだった。


「こんなに大人数で押しかけてしまい申し訳ありません」

「お気になさらないでください。賑やかになって嬉しいですわ」

「そう言って頂けると助かります。まずは自己紹介をさせていただきますね。わたしは御影朋、時計回りに順に……」


 居間に通されて一息ついたところ。まずは人数が多いので簡単に名前だけ紹介する。ミカンのイヌ耳が少し気になるようだ。見た目のインパクトあるもんね。


「私は日向小枝子(ひなたさえこ)と申します。玲菜ちゃんとは中学時代の同級生です。今日は遠いところから良くいらっしゃいましたね。どうぞお寛ぎください」


「玲菜ちゃん?」


 可愛い呼ばれ方をしている『玲菜ちゃん』を思わず見てしまった。しかも全員で。


「な、なによ。話を進めなさいよ」


 突っ込みたいところだけど、日向さんが戸惑ってるからひとまず話を進めるしかないかな。


「横石さんから少しだけお話を伺っております。ピアノが好きということで、今日のコンクールも拝見させていただきました」

「あらあらうふふ、お恥ずかしいですわ。楽しんでいただけたかしら」


「……!?」


 シャモアちゃんが反応してる。分かるかい、これが本物の包容力のあるお姉さん言葉なのだよ。


「音色がとても心地良くてリラックスできました。ピアノってあんなに温かみのある音が出る楽器なんですね」

「うふふふ、そう言って頂けると嬉しいですわ」


 物腰も言葉遣いもふんわりとした柔らかい感じがして、眼差しからは慈愛の念を感じられる。なるほど、この人の演奏なら確かにあれだけ温かい感じになるだろうなぁと納得できる。横石さんとは全く違うタイプの人なんだね。


「ちょっと御影朋、今失礼なこと考えたでしょ」

「失礼じゃないよ、事実だよ」

「言ってくれるわね」


 ふふん、何考えてたか言わないからこれ以上怒れないはずだ。


「横石さんのですわ調って日向さんの口調が移ったものだったりする?な~んてね」

「そ、そんなこと無……」

「うふふふ、実はそうなんですよ」

「ちょっとさえちゃん!」


「さえちゃん?」


 横石さんって、これまで日向さんのこと名前で全然呼ばなかったんだよね。『私の友達』とか『あの子』とかで表現してた。まさか『さえちゃん』なんて可愛い呼び方してるとは思わなかった。


「玲菜ちゃんに中学ではじめて会った時、今よりももっと男勝りで乱暴な言葉遣いだったの。可愛いんだからもう少し女の子らしい言葉遣いにした方が私は好きだなぁって言ったら考えてくれて……」

「わー!さえちゃんストップストップ!」


「「「さえちゃん?」」」


 おっと、改めてミカン、プラム、シェルフの三人娘がさえちゃん呼びを気にしちゃったぞ。ゆ~ちゃんが悪い顔してにやにやしてるし、これはもう流れに乗るしかないかも。


「良いこと思いつきました。中学の卒アルをお見せしましょう。玲菜ちゃんの可愛らしい写真がいっぱい載って……」

「さえちゃんお願いだからや~め~て~」


「「「「「「さえちゃん?」」」」」」


 三人娘にわたし、ゆ~ちゃん、シャモアちゃんが加わった。他の人も理解したような顔してるから次はきっと全員揃うね。というか、日向さんかなり自由な人だなぁ。横石さんが振り回されてるのはじめて見た。少しキャラ崩壊してるし。


「そう?じゃあ中学時代の面白エピソードでも紹介しようかしら。文化祭の時に……」

「さえちゃんだめえええええええええ」


「「「「「「「「「さえちゃん?」」」」」」」」」


 お、綺麗に揃った。


「あんたらもうるさいっ!そうよ、私の大好きな親友のさえちゃんです!さえちゃんって呼び方じゃないと違和感があるんだから仕方ないじゃないっ!」

「さえちゃんで~す」

「さえちゃんもノらないっ!」

「朋ちゃんで~す」

「あんたも悪ノリしない!」


 立ち上がって顔真っ赤になって照れて慌ててる横石さんが可愛い。いつも冷静な横石さんからは想像もつかない。こっちの横石さんも好きだなぁ。


「今度からは弓弦のことも弓弦ちゃんって呼んでも良いのよ?」

「いや、それは無いですわ」

「なんでよー!」


 横石さん即座に真顔になって元の状態に戻っちゃった。ゆ~ちゃんとのお約束の力恐るべし。


 『まったくもう……』って言いながら、まだ少し赤い顔を隠すように俯きながらわたしの隣に座り直した。


「恥ずかしいから名前呼ばないように気を付けてたのに……」


 横石さん小声だけどそれ隣に座ってるわたしには聞こえてるよ!

 可愛くて抱き着きたくなってきちゃっうから。

 自制するのが大変だから。




「あらあらうふふ、玲菜ちゃんに素敵なお友達が沢山できたみたいで嬉しいわ」

「さ……さえちゃん?」


 あ、開き直った。


「玲菜ちゃんって間違っていることが許せないタイプで、自分の考えを他の人にもしっかりと伝える人でしょ。中学の頃も間違いを指摘していて、それを良く思ってない人が多かったの。だから高校生になって私と離れ離れになってから新しく友達ができるか不安だったわ。でもみなさんと楽しそうに会話している玲菜ちゃんを見たら、その心配が杞憂だったことが改めて分かったわ」

「さえちゃん……SNSで大丈夫だって連絡してたでしょ……」

「玲菜ちゃんは私に心配かけないように全力で気を遣うタイプでしょ。隠されたら絶対分からないよ」

「うう……」

「うふふふ、実は高校に入って少し経ってから安心できていたんだけどね」

「そうなの?」

「ええ、だって玲菜ちゃんの話題がいつも『あいつ』の話題ばかりになった……」


「トップシイクレットオオオオオオオオオオ!」


 うわ、いきなり横石さんが日向さんに突然飛び掛かって口を塞いじゃった。もごもご言ってる日向さんを連れて部屋を出て行った。みんな突然のことにポカーンとしてるよ。


 『あいつ』って誰のことだろう?


三岐鉄道北勢線は桑名寄りは住宅街の中を突っ切りますが、しばらく進むと田舎風景の中の旅になります。


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