↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
3章 三重「個性」
PR
70/466

10. 朝日滝

 暑い中たっぷりと遊んでヘロヘロなケイちゃんたち。まだ午後二時くらいだけど暑さでお疲れなのでそろそろ帰ることにした。外で遊んでた組の体が熱をもってしまって、車の中が熱気でいっぱいだ。シャモアちゃんが平然としてるけど、内心では隣のケイちゃんの熱を嫌がってるね。


「みんな暑そうだから、涼しくなれるところに寄るね」


 涼しくなれるところといえば、もちろん滝。白糸の滝も良いけれど、富士宮には滝つぼまで近寄れる少し有名な滝がある。そこに行こうかなと思ってたんだけど、これだけ暑いと混んでるかもしれない。そう思ったので、地元の人しか知らないだろうマイナーな滝に向かうことにした。そっちも滝つぼ近くまで寄れてこの時期は涼しいんだよね。


 国道を南下して来た道へどんどん戻る。外神の交差点まで戻る直前に、高速道路から降りる道のように横へ逸れる脇道があるのでそこへ入る。もともとこのあたりの道路は昔有料道路になっていて、この横道はインターチェンジの役割を持っていた道だそうだ。


 脇道へ入るとそのまま西方面へ向かう。北山を通過してまっすぐ突き当りまで進み右折。少し先で左折すると山道へ入る。山道に入ったら右側へ入る道を探しながら注意して進む。分かりにくいけれどちゃんと看板があるので見落とさないように。看板のある入り口に入って急で短い坂を下るとそこが目的地。


『朝日滝』

 熊久保農村公園という小さな広場とベンチ(あと小さな木馬)しかない公園内にある滝。知名度は低いものの二十メートル近くの落差のある滝を間近で見ることができるので迫力は十分。数台だけど駐車場が整備されているしトイレだってある立派な観光地だ。とはいえここに人がいるのをほとんど見たことがない、穴場中の穴場。


「ほら、あそこに滝が見えるでしょ。滝つぼ近くまで行くとかなり涼しいよ」

「うふふ、私はエアコンの効いた車の中で……」

「そんなこと言わないでほらほら、エンジン切るからエアコンも切れるよ」


 車内に引きこもろうとするシャモアちゃんを無理やり押し出してみんなで滝へ。


「ひゃあっ!」


 今の可愛い声誰だ?

 くそぅ、みんな知らん顔してる。


「つめたあい!」


 かなりの高さから落下しているから水飛沫がたくさん飛んでくる。これが夏場は涼しくて気持ち良いんだよ。滝が垂直に落ちているのは途中までで、そこから下は水量の多い渓流のような感じで傾斜のある岩場を水が流れる形になっている。


「あらあら!」


 シャモアちゃんも大喜びで両手を広げて全身に水を浴びている。


「ここの滝は白糸の滝に比べるとスケールは小さいでござるが、迫力は十分でござるな。かなり間近で見られるのが楽しいでござる」


 白糸の滝観光済み組も満足してくれてるみたい。ミカンとプラムが少し川に入って水を掛け合って遊んでる。キャッキャウフフって表現するシーンかな。楽しそうだけど君たち、着替え持ってきてないでしょ。


「トモちん、トモちん、あそこ登れるの~?」

「うん」


 滝の右側に階段があり、そこを登ると滝の上部に近づくことができる。


「わ~高い~」


 滝の上部からミカンが手を振って、ケイちゃんが下から手を振り返す。もちやで仲良くなったんだね。




「しばらくここで休憩しようか」


 思った以上にみんな楽しそうにしているから、このままこの滝でひんやり休憩することにした。ミカンは下に降りてきてケイちゃんやプラムと一緒に水遊びしている。シャモアちゃんは滝の前で相変わらずの案山子ポーズで涼んでる。パステルちゃんは小さな広場を走っては滝に近寄り、走っては滝に近寄り、を繰り返している。体をポカポカさせてから涼しくなる方が気持ちが良いから、とのことらしい。


「シェルフはもういいの?」


 ベンチで座っているわたしの隣にシェルフも座っている。


「十分に満足したでござる」


 そういってシェルフは慈しむような笑顔で、楽しんでいる皆を見ている。シェルフって子供っぽい言動も多いけど、もともと異世界組のまとめ役のお姉さんって感じだったんだよね。忘れてた。


「もちやでシャモアちゃんとどんな話をしてたの?」

「大した話はしてないでござる。向こうの世界の話とか、こっちの世界で気に入ったモノの話とか、他愛もない雑談だけでござる」

「雑談ねぇ」

「朋殿が心配するような変な話はしてないでござるよ」


 そうシェルフは困ったような表情で言う。クギは刺したけど本気で心配なんてしてなかったけどね。


「そういえば……」

「そういえば?」

「会話が途切れた時、何となく『幸せでござるな』と言ってしまったでござる」

「シャモアちゃんは何か言った?」

「少し時間が空いた後、『うん』とだけ言ったでござる」


 幸せ。この言葉にどれだけの想いが込められているのだろう。どれだけの幸せをみんなに与えることができているのだろう。毎日がとても楽しいからこそ、時々不安に思うこともある。関わったからにはもっと幸せにしなきゃダメだと思ってしまうこともある。そんな自分に気づいて何様だと凹むこともある。心の奥底にゆっくりと溜まっていた漠然とした不安が、このシェルフの言葉で少し取り払われた気がする。


「朋殿?」


 黙り込んでしまったわたしを心配するような顔でシェルフがこちらをうかがっている。


「ううん、何でもない。ちょっと嬉しかっただけ」


 そういってわたしはまだ遊んでいるミカンたちの方へ走り出した。




「みんなそんなに気持ち良いんだね」

「はい、とても気持ち良いです」

「さいっこう~!」

「うふふふ、どうせなら水に浸かりたいな」


 水に浸かる?それなら良いところがあるじゃん。

 ふふ、ふふふふ、ふふふふふふ。


「じゃあ今度プールに行こうか」


 水着回だ!


朝日滝は地元でも知らない人が多いはず。迫力もあるし涼しいし空いてるしオススメだけど、市外からわざわざ観光に来るなら白糸の滝だけで十分かな。ちなみに冬に来るとすっごい寒い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。