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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
2章 伊豆下田「結成」
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2. 教習所

 免許が欲しい。


 これまでみんなとお出かけするのにお母さんに車を出してもらっていたので、どうせなら自分で運転してみんなを色々なところに連れて行きたい。ニートでお暇なのでゴールデンウィークが明けたころから富士宮自動車学校に短期集中コースで通うことにした。


 ゴールデンウィークはどこ行っても混んでるだろうから家でゴロゴロしてた。


 毎日のようにゆーちゃんが遊びに来たけど、ゴールデンウィークなんてアイドルの稼ぎ時じゃないのかね。『いいのいいのー』なんて言いながらわたしに寄りかかってゴロゴロしてたけど。


 マネージャーさんに聞いたら、4月に大きなイベントがあったのでしばらくお休みらしい。マネージャーさんが、うちはホワイト企業ですからって自慢そうに言ってたけど本当に大丈夫かな。2人とも話の合間に唐突にアイドル活動を誘ってくるんだけど、実はそれが狙いだったりしないかね。


 そんなぐうたらな毎日を終えて自動車学校の最初の講義へ。ひと月以内に免許取るためにビシビシ予定入れるよー


 教室へ向かって扉を開けると、講義の開始時間までまだかなり時間があるのに3人ほど先客あり。

 みんな暇なのかね。

 若い男性が1人と若い女性が2人かな。

 スマホ見たり本を読んだりしながら時間を潰しているみたい。


 どこに座ろうかと思って空いている席を探して前の方に歩いていたら、ガタっと椅子から立ち上がる音が聞こえてきた。


 何気なくそちらの方を見たら知り合いが居てびっくりしたよ。


「御影朋!」

「横石さん?」


 高校時代のクラスメイト横石玲菜(よこいしれいな)さんが居た。横石さんはわたしが高校生の頃とてもお世話になった人だ。


「まさかこんなところで会えるなんて!」

「ふ、ふんっ、同じ富士宮に住んでるんだからあり得ないことじゃないでしょ」

「隣座っても良い?」

「別にあんたが良ければいいわよ」


 横石さんは少し言葉遣いがきついので誤解されやすいんだけど、すごく優しくて頼りになる素敵な女性なんだよ。


「横石さんと連絡つかなかったから心配してたんだよ」

「……ごめんなさい」

「ううん、こっちこそどうすれば良いか分からなくて。ちゃんとフォロー出来ればよかったんだけど」

「ふんっ、御影朋はいつも肝心なところで抜けてるのよ」

「それを横石さんが言う~」

「そう、そんな感じで反応してくれれば良いのよ」


 横石さんは大学受験に失敗した。


 頭が良くて運動もできて成績は常に学年のトップクラスだった横石さんは、受験当日、体調を崩したり迷って会場へたどり着けなかったりしてまともに受験することが出来なかった。


 普段の横石さんなら体調管理は万全だし、会場への道も事前に調べておくタイプの人だ。

 それなのにこんな結果になって誰もが驚き、どう声をかけてよいか分からなかった。


「みんながすごい気を使ってくれるから、逆にこっちも何も言えなかったのよ……」


 自分が一番悲しいはずなのにわたしたちの事を気遣ってくれる横石さん、ホント好きだわぁ。


「まあ、それはそれとして、よ。御影朋」

「ん?なあに?」

「先日のアレはどういうことなのか、説明してもらえるのかしら」

「先日のアレ?」

「そう、あの星野弓弦のライブにあんた出てきたでしょ、どういうことなの!?」

「ええー横石さんも見てくれてたんだ!」


 えへへ、なんか照れるな。


「まぁ有名人の記念ライブだもの、そりゃあ私だって見てみたいわよ。気持ちも吹っ切れるかなと思ったし。そしたらあんたが出てきて吹っ切れるどころか驚きで落ちた気持ちなんて忘れちゃったわよ。しかもなんかステージ上でワンワン泣いてるし、なんなのこれ、なんなのよこれ、ってずっとポカーンってしてたわよ」


 うわーあのガン泣きしてるところ横石さんに見られてるなんて、恥ずかしいいいい


「アレはあの時話があった通りだよ。わたしとゆーちゃんは幼馴染ですれ違ってたのが仲直りできたの」

「ゆーちゃんって呼び方してるのが腹立つのよ」

「え?なんで?」

「なんでもないっ!」


 「あんなに仲が良い友達がいるとか予想外じゃない。しかもアイドルとか……」って小さな声でつぶやいてたけど聞こえないフリがマナーだよね。これって自分より仲が良い友達がいて嫉妬してくれてるってことだよね。えへへ。


「まぁその、似合ってたわよ」

「えへへ、ありがと」

「ふ、ふんっ、どうせならもう一回くらい歌ってみたら良いんじゃない?」


 あれ?この流れはマズイかな。横石さんからもアイドル活動勧められそう。ちゃんと断らないと。


「わたしはもうやるつもり無いんだよね。それなのにゆーちゃんも他のみんなもドンドン勧めて来て困ってるんだ。誉めてくれるのは嬉しいんだけど……」


 そうはっきりとアイドル活動をやるつもりは無いと伝えると、横石さんは少し考えてから聞いてきた。


「やりたくない理由あるの?」

「うーん、はっきりした理由があるわけじゃないんだけど、抵抗があるんだよね」

「抵抗ねぇ」


 お気楽ニートでまったりしていたいんですよ。


「そういえばあんた高校の時、進学しない就職もしないって宣言して先生を困らせてたわね。自分のことでいっぱいいっぱいだったから覚えてないんだけど、結局今は何してるの?」

「何って、何もしてないよ」

「……何も?」


 うーん、他の人には言えるのに横石さんにはニートですって自信を持って言いにくいよ。なんか根本的なところの問題をビシっと指摘されそう。そっちの方がわたしにとって良いのかもだけど、流石にもう少しくらいはニート生活を満喫したいでござる。あ、口癖うつった。


「まあいいわ、聞かないであげる」


 あれ?見逃してくれたのかな。良かった。


「そろそろ講義が始まるから、この話はまた後でしましょう」


 いや、逃げられそうには無かった。




 とか思ったものの、わたしの現在については横石さんは全然触れてこなかった。今日は朝から夕方まで2人とも同じ講義を取っているので、一緒にお昼を食べたりしながら高校時代のように雑談に花を咲かせていた。横石さんと一緒だと安心するんだよね。これからはまたちょくちょく一緒に遊べるかな。


 そして本日最後の講義の後。


「どっちが先に免許を取得できるか勝負よ、御影朋!」


 これも懐かしいな。高校時代もこうやって色々と勝負を仕掛けてきたっけ。横石さんの凄いところは、どちらかが圧勝するような勝負は絶対仕掛けてこないで、必ず五分五分になる勝負だけ仕掛けてくるところ。接戦になるから面白いんだよね。


「ふふん、負けないよ。とはいえ運転教習では安全第一だよ?」

「そんなこと当たり前でしょ。焦ってやったら危ないしそもそも合格しないわよ」

「2人とも5月中に免許取れたら一緒にドライブ行きたいね」

「い、一緒に……そ、そうね、考えてあげてもよろしくてよ」


 やった、どさくさに紛れてドライブデートの約束しちゃった。楽しみだな。


「それじゃあ今日は帰ろうかな。また明日ね」

「ちょっと待ちなさい」


 あれ?どうしたんだろう。


「御影朋。たしかアイドル活動を勧められて困ってるって言ってたわよね」

「うん」

「そうね、私が『説得』しましょうか?」

「え、いいの?」

「もちろん、任せなさい」


 やった、横石さんに任せれば上手くいくかも。横石さんは交渉事に強いんだよね。


「それじゃあこれからあんたの家に行くわよ」

「え?今から?」

「そう、作戦会議よ」

「もう遅い時間だよ」

「大丈夫よ、帰るときにはちゃんと親に迎えに来てもらうから」

「でも」

「ほらほら、行くわよ!」


 押し切られちゃった。まさか横石さんを我が家にお迎えすることになるなんて。あ、あの3人娘のことをどう説明しようか。


作者は富士宮教習所には通ってないので、実際にはありえないことがあるかもしれませんがご容赦ください。

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