13. 寝ている間の一コマ
「うう、今日も暑いなぁ」
ちゃんと眠れたのかも良く分からないよ。
エアコンはつけてるけど、強にすると寒いし、かといって弱めにすると一気に暑くなる。
結果、快適とは言えない気温の中、睡眠せざるを得ない状況が続いてる。
うがー、まだ 7月はじめなのにー!
「顔洗ってこよ」
口を大きく開けて欠伸をしながら、洗面所へと向かう。
冷たい水で神経が覚醒……とは行かない。
夏は水道から出てくる水が温いんだ。
お肌には良いけど目覚めには悪いよぅ。
「はぁ、今日は汗かいてないかな」
夜風呂派のわたしも、寝ている間に汗をぐっしょりかいたら朝シャンをする。
今日は大丈夫だけど、大丈夫じゃなかった人がいるみたい。
「ふんふんふふ~ん」
このご機嫌な声はプラムかな。
すっかり目が覚めたようで何よりだ。
「おはよ~」
朝7時半くらい。
プラム以外のみんなはまだ寝てるかな。
そう思いつつもなんとなく挨拶しながら居間に入ると、パステルちゃんがソファーの上で眠ってるのが見えた。
「あ、そうか」
昨日からうちに泊まりに来てたんだった。
何か用事があるわけでは無くて、エアコンの効きが一番良いわたしの家の居間でなら気持ち良く眠れるかもしれない、とのことで試しに来た。
2人も寝苦しい夜に困っていたんだ。
「起こさないように……と。うん、気持ち良さそうに寝てる」
タオルケットの上から左手をお腹の上に、右手をソファーから下に投げ出して寝ているパステルちゃんは、穏やかな寝息をたてている。ほんのり笑顔だから良い夢見てるのかな。
もう1人は……
「え゛?」
左足をソファーの背もたれの上に投げ、右手をソファーの下に投げ出している。体は斜めになっていて、頭がソファーから落ちそうなギリギリの状態で踏みとどまってる。
「これはひどい寝相」
上半身は大きく服がめくれてお腹が丸出し。というか、小さな下乳が見えてるんじゃあ。
しかも下半身も何故か下がっていて下着丸出し。
ぐへへと言いながら盛大に涎を垂らしているその姿は『残念』だった。
欲情?あはは、何言ってるのかな。このだらしなさはそれ以前だよ。
色気も何もあったもんじゃない。
「シャモアちゃんが良くお腹壊してるのってこれが原因なんじゃあ」
タオルケットすら投げ捨ててお腹丸出しでエアコンの風にあたりながら寝てたら、そりゃあお腹壊すよ。
「……もう食べられないよ~」
ええっ!?
パステルちゃんなんて言った!?
ま、まさか漫画の中でしか無いと思っていた寝言を!?
しかも今ちょろっと舌だした。
くっそ可愛い!
ああもうずっと見てたいなぁもう。
録画ろく……
「まだまだ食べるぅ~」
……うん、これが双子の違いなんだね。
しょうがないなぁ。
床に落ちていたタオルケットを上からかけてあげよう。
こら、取ろうとしないの。
少しだけ見ていてあげようかな。
パステルちゃんもシャモアちゃんも、違った意味で見ていてほんわかさせてくれる癒し枠だ。
「うりうり」
思わずシャモアちゃんのほっぺをつついてしまった。
「うにゅ~」
ふふ、手のかかる子ほど可愛いっていうのはこういうことなのかな。
「うう~こうなったら~これでもくらえ~」
んん?冒険している夢でも見ているのかな。
なんてのんきにシャモアちゃんを見ていたら突然体が薄く光りだした。
「え!?」
目の錯覚、ではない。
確かに光ってる。
これ見たことある、確か大きな魔法が発動するときに……
「ど、どうしよう!?」
起こした方が良いのかな。
で、でも寝ながら魔法が発動するなんてありえるの?
軽くパニックになっていたら、今度はシャモアちゃんに向かって白い糸のようなものが絡まってきた。
出所はパステルちゃんだ。
「何……これ……」
しばらく見ていると、白い糸がシャモアちゃんの体をぐるぐる巻きにした。
そして数秒間小さく明滅すると、シャモアちゃんの全身の光もろとも消滅した。
良く分からないけど、収まったってことで良いんだよね。
「う……ん……」
わたしが困惑していると、戸惑いの声に反応してしまったのかパステルちゃんが起きてしまったようだ。
「………………………………トモさん…………………おはようございます」
「お、おはようパステルちゃん」
体を起こしても眠気眼なパステルちゃんは、しばらくぼぉ~っとわたしの方を見てからおはようの挨拶をしてくれた。
「ふわ~あ……起きます」
パステルちゃんはそう言って洗面所の方に消えた。
「……それは……私が……お姉ちゃんに……かけた……魔法……です」
「どんな魔法なの?」
スッキリした顔で居間に戻ってきたパステルちゃんにシャモアちゃんを起こさないよう小声でさっきの現象について聞いてみた。
「……お姉ちゃん……寝たままで……魔法……使うことが……ある」
ああ、やっぱりさっきのはそういうことだったんだ。
「……でもそれ……危険……もし……夢の中で……冒険してて……攻撃魔法……だったら」
え、それかなりまずいんじゃあ。
「魔法にそんなリスクがあったなんて」
魔法覚えたら寝ている間に家が燃えてる、なんてことにもなりかねない。怖っ!
「……ううん……普通は……ありえない……お姉ちゃんが……変なだけ」
実の妹にはっきりと変って言われるシャモアちゃんが不憫だ……
「……それに……魔力……もったいない」
うん、今は魔力がかなり溜まりにくい体質になったから無駄打ち出来ないんだよね。
「……だから……無駄な……魔法……使わないように……お姉ちゃんが……魔法使おうと……すると……私が……自動的に……キャンセルする……魔法を……セットした」
そんなこと出来るの!?
「あはは、パステルちゃんも大変だね」
「……ほんと……大変です」
とか言いながらも嬉しそうなパステルちゃん。
お姉ちゃんのこと大好きなんだなぁ。
「それにしても、寝てる間に魔法が勝手に発動されちゃうって、まるでおねしょみたいだね」
「……!?」
あ、まずい、パステルちゃんが目を見開いて驚いてる。
どうしよう、シャモアちゃんのこと悪く言う感じになっちゃったから怒ったかな。
謝らないと……
「それです!」
って何がそれ!?
「……トモさん……ありがとうございます!」
後日、魔法漏れがおねしょと同じだと言われたシャモアちゃんが恥ずかしさから魔法漏れを克服したと、パステルちゃんが嬉しそうに報告してくれた。
二人とも妖精族としては成人してますよ。
寝ているときもポンコツなシャモアちゃん。




