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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
2章 上高地・黒部立山「生きる」
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12. 気分転換

 曲が思いつかねぇ。


 いつもは作りたいと思った時に気ままに作ってたからなぁ。今回みたいに目的あって作ることがこんなに難しいとは思わなかったわ。


「ぷはーっ!うめぇ!」


 こういうときは酒でも飲んでスッキリしねぇと。

 うんうん、朋の作ったツマミもうめぇなぁ。本人は気付いてないが、料理の腕がメキメキ上達してるぜ。


「ふーーっ……」


 前言撤回、やっぱり旨くねぇや。

 朋のツマミじゃねーよ。酒の方だ。


 逃げて飲む酒はマズイ。

 

 それがよーく分かったわ。


「とっき~がんばってる~?」

「ノックくらいしろよな」


 まぁ足音がドタバタと激しいからミカンが来るってことは丸わかりだったがな。


「あらら、現実逃避中かな~」

「おうおう、はっきり言ってくれるじゃねーか」


 ホント、ミカンは底知れないわ。今こっちが一番接してほしい態度で向かってくるんだからな。ぜってぇ分かってやってる。


「じゃあ一緒に遊ぼうよ~ボードゲームで1人足りないんだ~」

「ボドゲかぁ……そうだな、偶には参加すっか」

「やった~」


 酒飲んで逃げてるよりかはちゃんと気分転換になるだろ。


「そういえば梅雨の時期なのに明日からしばらく日本全国天気が良いみたいだよ~」

「ふ~ん、そっか」


 ドライブ日和ってことか。確かに最近雨が多くて出かけられなかったし、行ってみるかな。


「あ、すみれさんだ!」

「負けないでござるよ」

「がんばりますです」


 朋とシェルフとプラムか。


「あれ?ボドゲやるなら人数揃ってるんじゃねーのか?」


 ボドゲって4人でやるのが丁度良いって前に言ってたよな。今回は俺を誘う口実だったのかね。


「今日は人数多い方が楽しいゲームやりたいんだ~本当は他の人も呼びたかったんだけど雨降ってるから諦めたの~」


 雨か。そういえば強い雨が降ってる音がするな。そんなことすら気付かないくらい閉じこもっちまってたのか。


「そっか、んじゃお邪魔するぜ」

「邪魔じゃないよ。ウェルカムだよ。えへへ」


 出たな、魔性の照れ笑いが。この笑顔を見ると無性に抱きしめたくなるからヤバイ。ガラじゃない俺ですらそうなんだから、ほとんどの人に効果あんだろ。最早一種の兵器だわ。


「んで、何やるんだ」


 さて、気持ちを切り替えて遊ぶとしようか。少しくらいは気分転換になると思……


「ちょっ……おまっ……そこ封じる!?」

「ふふん~」

「ならこっち延ばすぜ」

「あ、そこは私の領域です」

「ぬおおおおおお、敵だらけじゃねーか!」

「大丈夫です、私の方に延ばしてください」

「こっちも大丈夫でござる」

「大丈夫じゃねーよ、どっちも完封目前で遊ばれてるのが分かんねーのかよ!」

「え!?」

「そうでござるか!?」

「はい、これで終わり~」

「終わりです」

「ぬおおおおおおおおおおおお!」


 次は絶対勝つからな!




「ん~気持ち良いっ!」


 単車で風を切る感じ、久しぶりだわ。

 真っすぐどこまでも続く見通しの良い空いている直線道路。

 自然の中を突っ切ると、体全体が新しいものに生まれ変わったかのような新鮮な感覚になる。


「ふんふふんふ~ん」


 お、今のメロディ良いかも。どこかに止まってメモっておこう。あの曲には使えないけど、俺の曲として使いたいわ。


 古いドライブインがあったのでそこに停車。道の駅と呼べる程立派じゃないけど、お土産や名産の食べ物が売ってるドライバー向けの大きめの建物だ。


「お、コロッケ売ってんじゃん」


 きのこコロッケか。山ん中だから地元の人が近くで採れたきのこ使って作ったのかな。


「コロッケ1つください」

「あいよ~今から揚げるからちょっと待ってて」

「お、揚げたていいっすね。楽しみです」

「きのこたっぷりで歯ごたえがあって美味しいよ」


 う~ん、ワクワクしてきたぜ。


「きのこはこの辺りで採れたものなんですか?」

「ええ、毎朝そこの山に行って採りに行ってるのよ。売店できのこ汁も売ってるから良かったらどうぞ」

「うわ、採れたてですか、さらに楽しみです!」


 商品の話から入って、入荷の話、季節の話などを経由しながら客層、最近起きたこと、何気ない世間話へと遷移する。そうやって現地の人と触れ合うことで、土地ごとに全く異なる『人』を味わうことができる。それが俺にとっての旅の醍醐味の一つだ。


「うおっ、サクサク。あ、でもきのこがすっげぇ入ってる。色んな食感が混ざり合って面白いなぁ」

「でしょう? SNSでたっぷり宣伝しちゃってよ」


 かなりお年を召したおばあちゃんから『SNS』の言葉が出てくるのが面白い。実は商売人相手だと、年配の人でもネット関係の知識がある人が多かったりするんだよな。このおばあちゃんも自分で何かしらのSNSやってるのかも。


「そういえばあんた、もしかしてアイドルとかやってない?」

「え、私のこと知ってるんですか?」

「確か孫が好きなアイドルにあんたみたいな人が居た覚えがあるのよ。後ろの方でピアノ弾いてた人」

「あはは、そうです。それ私なんです」

「あらまぁやっぱり。実物はもっと格好良いじゃないの」

「ありがとうございます。それじゃあコロッケ代はおまけということで」

「それはダメよ。むしろ稼いでるんだったらもっと買ってちょうだい」

「あはは、こりゃあ1本取られました」


 そして地方の年配の人だと、たとえ私のことを知っていたとしても温度感が変わらない。


「それにしても、よく私のこと覚えてましたね」

「それがねぇ。最近の若い子のことなんかてんで分からないんだけど、孫からあんたたちの歌ってる姿を見せてもらった時、すごい楽しそうにしているのが印象に残ってたのよ。あんたも良い笑顔してたわよ」

「それが私たちの……」


 目指すところだから。


 いや、違うな。


 目指すというか、すでに心から楽しいんだ。

 だからいつまでもみんなと一緒にアイドルやってるし、楽しんで楽しんでどんどん曲のアイデアが湧いてくる。


 まったく、今更ながら俺ってアホだなぁ。

 1人で頑張ったって曲作れるわけないじゃねーか。


 あいつらと一緒に居て全てを楽しみ尽くすこと。


 どんなに特殊な曲を作る場合でも、その大前提だけは変えちゃいけなかったんだ。


「どうしたの?」

「いえ、ちょっと大事なことを思い出したんです。ありがとうございました」

「??」


 よし、ささっと戻ろうかな。

 今は少しでも早く朋達の顔が見たい。


すみれ回ですが、『とある』シリーズではありません。本編です。


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