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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
1章 富士宮「出会いと再会」
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9. 魔法

「3人とも、大事なお話があります」


 3人と一緒に暮らすようになって1週間半。

 どうしても聞くべきことができた。


「よし、邪魔なお供を倒したー。後はボスを倒すだけだー。あ、もうちょっと待ってー」

「……(聞こえてない)」

「もう少しでこのスレ読み終わるので待つでござる」


 ミカンはTVゲームに熱中、プラムは漫画に夢中、シェルフはスマホでネット中毒。


「私だけ表現が酷いでござる!」

「何か、間違って、ますか」

「ま、間違ってないでござる……」


 3人とも現代社会の闇、もといサブカルにどっぷりと浸かっちゃった。

 このままだとキリが無いので、いつもの最終手段を発動するかな。


「早くしないとセーブデータ消すよ?漫画処分するよ?スマホ解約するよ?」


「「「何か用でしょうか(でござるか)」」」


 まったく、放置されてたら少し寂しいじゃない、じゃなくてこうでもしないとみんなでお話もできないんだから。


「ちょっと3人に聞きたいことがあるんだけど」

「何かなー」

「何でしょうか」

「何でござるか」


「最近3人ともゲームや漫画やネットに忙しいようだけど」


「「「……」」」


 露骨に目をそらすなー!


「別に責めてるわけじゃないよ、ただ、いくら何でもはまりすぎじゃないかって思うんだ。最初のころはみんなで一緒に買い物に行ったりしたのに、昼間っからひきこもり生活まっしぐらじゃない」


「だってだって、面白いんだもんー」

「こんなにも興味深い作品の数々、夢中になるのも仕方ありません」

「私は別にはまってなんかいないでござるが」

「いやシェルフが一番重症なんだけど……」


 常にスマホで某掲示板のスレを読みふけってる人が言って良いセリフではない。

 夜は自室のPCで怪しいサイトを巡回しまくってるみたいだし。


「ゲームとかに興味を持ってくれるのは別に良いんだよ。日本のこと好きになってくれてるみたいでむしろ嬉しいし」

「それは良かった、安心したでござ」

「あ、シェルフは少し自重しなさい」


 そんな悲しそうな顔してもダメ。一日中ずっと画面見てるんだもん。スマホやPCを一時的に取り上げたほうが良いのかと思いはじめたよ。


「そうじゃなくてね、ゲームとかの存在を知ってからまだ1週間経ったかどうかってくらいでしょ。それなのになんでそんなに何年もはまっていたかのような感じになってるの?特にミカンなんて、何十本もゲームクリアしたかのように見えるんだけどそんな時間無いよね?」


 3人とも明らかにわたしよりも遥かに時間をかけて遊んでいたような、そんな雰囲気があるんだよね。


「ああ、それはね、時間停止の魔法を使っているでござる」


 魔法キマシター!

 しかもなにそれ時間停止って反則級の最強魔法じゃないの?


「そんなすごい魔法が使えるの!?」

「すごい……のでござるか?」


 あれ?シェルフは微妙な顔してる。なんでだろ。


「うんうん、やっぱりそう思うよねー」

「実際はそんなに便利じゃないんです」


 ゲーム&漫画組は納得したような顔してる。


「周りに人がいると発動できないですし、時間を停止させても、周囲3メートルくらいしか動けないんです」


 あー、他人を巻き込めないし行動範囲が狭いケースなのかあ。

 確かにそれだと使いどころが難しいね。

 ゲームや漫画だとわたしが想像するような便利な時間停止が良く出てくるから2人はわたしの考えが分かったのかな。


「ちなみに向こうでは、人気のないところで発動して素振りとかの訓練に使うのが一般的だったでござる」

「地味な使い方だね」

「ふふふ、向こうでも地味魔法と揶揄されてるでござる」


 それで3人ともその時間停止魔法を使ってたっぷり遊んでたのか。


 そういえば漫画でも時間停止能力ってポピュラーだけど、前から気になってたことがあるんだよね。


「ちなみに、3人の年齢って時間停止魔法で止めた分だけ増やして申告してるの?」

「「「え?」」」

「だって時間停止魔法で停止したら、1年間にその分だけ多く過ごしていたことになるんだよね。20歳の誕生日にこれまで2年分時間停止使ってたら実質22歳ってことだよね。歳は誕生日が来た回数で数えてるのかな。それとも誕生してからの経過時間で数えてるのかな」

「そ、それって何か違いがあるでござるか?」

「だって、時間停止魔法つかいすぎで、20歳なのに見た目40歳、っていうの恥ずかしいじゃん」

「「「……」」」


 考えたことなかったって顔してる。寿命が長いとあまり変化が無くて気にしないとか、そういうことなのかな。3人の種族の寿命知らないけど。


「女の子なんだから、若さは気にしようよー」

「「「ごもっともです(でござる)……」」」


 あれ?もしかしてこれで少しは自重するようになったのかな。良かった良かった。


――――――――


「そうだ、どうせだから魔法についてもう少し教えてよ。みんなどんな魔法使えてどんな風に使ってたの?」


 3人が元居た世界についての話をしてホームシックになると悪いから、これまで敢えて触れてこなかったけど、思いがけずに話をする機会ができちゃった。3人とも楽しそうに話をしているので、気にしなくてよかったのかな。


「3人とも簡単な攻撃魔法は使えたでござる」

「私は風を使って相手を吹き飛ばすのが得意だったよー」

「私は雷の魔法で相手をしびれさせるのが得意です」

「私は自然を操る魔法は一通り使えたでござる。火・風・水・大地・雷・氷がメインでござる」


 あれ?もしかして3人とも結構強い?


「ふふふ、旅をしていたから当然でござる。魔物や夜盗から身を守る最低限の技は身に着けているでござるよ」

「魔物!夜盗!異世界っぽい!」

「ちなみに、ござるは剣術も得意なんだよ」

「剣振ってるところ見たいな」


 流石に剣は日本じゃ簡単に手に入らないか。


「じゃあ明日にでもお見せするでござる」

「え?剣は?」

「持ってるでござるが?」


 剣を持ってるところなんて見たことないんだけど。そういえば以前楽器を演奏してくれた時もどこから出したんだろ。異世界ファンタジーだとするとまさか。


「収納魔法!?」

「収納?ああ、そうともいえるでござるな。時空魔法でござる。時間停止魔法と同じ系統の魔法でござる」


 おかしいな。これらの魔法を使ってわたしが異世界で無双する話じゃないんだ。

 ワンチャンないのかな。


「朋殿が何で突然悲しそうな顔になったのか分からないでござるが、他に使えるのは光を出す魔法や旅に便利な魔法、あとは額を合わせて言葉を覚えるのも魔法でござる」


「ちなみに、私は、覚え……」


「無理でござる」


 ですよねー

 少しは期待してたんだけどな。


「魔法は魔法書を読んで覚えるでござる。でも私達はだれも持ってないから、覚えることはできないでござる」


 うーん、残念。それにしても結構簡単に魔法を覚えられる世界だったんだね。


「こっちで魔法使うときは気を付けないとね。ちょっとした魔法なら手品で済むと思うんだけど、派手なの使ったら変に目を付けられるかも」


「ああ、いや、実はこっちの世界ではほとんどの魔法が使えないでござる」


 ええー見たかったのにー


「使えるのは時空魔法、時間停止魔法、ライト、くらいかなー。簡単な魔法でも攻撃魔法はどれも使えないんだよねー」


 ふーん、なんでだろうね。自分が使えないので興味ないや。


「まぁ、大体分かったよ」


 念のため遊びすぎないようにもう一度クギを指しておこう。


「たっぷり遊んでも別に良いけど、昼間は一緒に遊んだり出かけたりしようね」


「すごく面白かったので熱中しすぎてしまったでござる。今度からは気を付けるでござる」

「ごめんー気を付けますー」

「ごめんなさい。気を付けます」


 いや、別に謝らなくても良いんだけど。

 それにしても時間停止かぁ。

 歳取らないなら学生時代、テスト前に使ったんだけどなぁ。

 いや、使っても勉強しないで遅くまで遊んで寝ちゃうか。


 んん?使ったまま寝たら魔法が切れるのかな。

 切れなかったら、電気つけたまま寝ちゃって起きてもまだ夜だった、なんてことになるのかな。


 ……あれ?


「なんで時間停止してるのに電気使えるの?電気代は?」


 どうやら異世界の魔法はわたしには理解できない働きをするようです。

 当然、魔法禁止令を出しました。



 電気代のすさまじさ。

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