15話
「私だけおいてけぼりかぁ~。二人とも用事って、偶然なの?」
「ギクッ・・・ぇ、えっと・・・」
「もぅ。奏さんは野暮なこと聞くんだなぁ。そんなん決まってるじゃないですか。」
「あ、そうだよねぇ~。」
「そうですよ。デートに決まってるじゃないですか。しかもダブルデートなんですよ。」
「はぁ!?何言ってんの!メールがきてデートになるわけないでしょ!それになんでデートなんか―――」
そう言ってテーブルに手を叩きつけて琴音は海璃を睨むが、
「ハハハ。何照れてるんだ?全く、琴音は可愛いやつだなぁ。今日は元々これのために学校をサボるつもりだったんじゃないか。」
「なっ!?コレが照れてるように見えるわけ!?」
「そうだよぉ。琴音ちゃんは照れ屋さんなんだよねぇ~。」
「ちょっと!奏まで何を言って―――」
「じゃ行こうか、琴音。」
海璃はさりげなく自分のMMPを操作し、対戦を受けた。
「はぁ!?ちょっと物事がややこしくなるような事言ってないで、先に誤解を―――」
「はいはい。早くしないと遅れちゃうじゃん。」
「いってりゃっしゃ~い。」
海璃は誤解を解こうとする琴音を引きずってロールを出た。
2人がやってきた場所はあるビルの裏の駐車場だった。
ビルの方は長い間使われていないらしく、駐車場に車は一台もなかった。
「昨日、今日と戦ってまたすぐに戦いか。いつから俺は戦闘狂になったんだか、なぁ?琴音・・・」
「・・・・」
同意を求めるように琴音のほうへ視線を向けるが、その目線の先にいる本人は至って無言。
「琴音?」
「・・・・」
「何?まださっきのこと気にしてんの?」
「当たり前じゃん!」
「何を気にすることがあるんだよ。」
「何を?何をってそんなん決まってんでしょうが!なんであたしがあんたなんかと付き合ってるなんて思われなきゃいけないわけ!?」
「何?そんな俺とじゃ嫌?結構傷つくんだけど・・・俺は、結構本気なんだぜ。奏さん言った、『これから彼氏になる予定』ってのは。」
明らかにヘコんでいるように見えるように海璃は地べたにしゃがみこみ下を向いてうなだれてみせる。
「え?いや・・・あの・・・その嫌、とか・・・じゃ、なくて・・・さ。その、なんていうか・・・海璃も嫌でしょ?な、なんか勝手にこう―――」
「・・・敵さんのお出ましだ」
「え?」
モジモジと顔を真っ赤にしている琴音をよそに、海璃は立ち上がり前方を指差した。
やってきた二人組みは海璃たちと同じ高校生のようだった。
この駐車場には入り口が一つしかない。
だから、2人はその入り口の真正面で待っていた。
「こんにちわ~」
「ども~」
2人も同じ制服を着ている。しかし、その制服には見覚えがなくどこの学校かは分からなかった。
「はじめまして。MinMinさんとLilyさんであってる?」
「はぁ~い。そうですよ~。私がMinMinで~す。あなたがKAIRIさん?」
「そうですよ。お二人も学校サボりですか?」
「エヘヘ。サボっちゃいましたぁ~」
「ましたぁ。」
のほほんとした印象の二人。
2人とも琴音を同じくらいの身長で、MinMinと名乗ったほうはツインテールでその髪を結んでいる青いリボンが印象的だ。もう一人は片方と比べ、よりのほほんとしたように見える。ショートカットの髪型だが、髪先が揃えられているわけではなく、適当な感じの髪型だった。
奏さんといいこの二人といい、世の中にはこんなにもスローテンポの人間が多いのか。
二人はどちらとも魔術師。つまりは、遠距離型ということだ。
こちらも魔法を使えるので、問題は属性の相性になってくる。
属性の相性は、水⇒火、火⇒氷、氷⇒風、風⇒土、土⇒雷、雷⇒水のはず。
つまり、向こうが水なら、相性としては最悪。逆に土ならば最高。
でも、土を使うなら、逆に油断はできなくなる。土の能力増加はまだ見たことがない。
「・・・ちょっと海璃。」
「なんだ?作戦でもあるのか?」
「・・・さっきの話は何処へいったの?ねぇ・・・さっきのことって本気―――」
「嘘だ。」
即答。
「・・・あ、あんたって人は・・・・」
「おい、琴音。そろそろ作戦とか立てなきゃ・・・」
「バッキャロォー!!!」
―――バキッ
「いってぇ!何すんだよ!」
「『何すんだよ』じゃない!そっちこそ何してくれてんのよ!ちょっとでもときめいた心を返せぇ!!!」
「勝手にときめいてんじゃねーよ。ほら、もう始まってるぞ。」
―――ビュン
海璃は琴音をかばって横にステップをする。すると元いた位置を水の刃が通り過ぎていった。
「・・・ちっ。水属性か、相性としては一番嫌なやつだな。」
「ちっちっち~。甘いなぁ~。KAIRI君はぁそこそこ有名だからねぇ~。属性くらいならもう広まってるんだよぉ~。」
「そうなんだ。やっぱ魔法戦士は珍しいのかな・・・」
魔法戦士はついこないだチェックしたところ自分ともう一人だけだった。
ちなみにもう一人の魔法戦士も海璃と同じLv2だった。
まさか、パーティーを組んでいることまでが知られているとは思ってもいなかった。
そして、琴音の属性まで知られているとは。
「とにかく、負けたくはないんで・・・いっちょやりますかっ。琴音っ。」
「・・・あんたってやつは・・・」
(やべぇ・・・からかいすぎたかな・・・)
怒りでプルプルと震えながら下を見ている琴音をみながら海璃は思う。
「・・・まぁ。いいか。」
今はそれどころではない。相手は待ってはくれないのだ。