13話
ここ海璃が通っている東葉高校は至って平凡な公立高校。それに比べて親咲女子高校はその名の通り女子高で、なによりお嬢様学校である事で有名な進学校である。
ここから歩いていくと大体45分ほどかかる距離にある。
「どうやって行くかな・・・・あ、タクシー発見。」
大きな道路へ出たところでタクシーを見つけたので、手を上げて止まったとこへ乗り込む。
「親咲女子高校の前までお願いします。」
タクシーに乗り込み運転手に行き先を伝える。すぐにタクシーは出発した。
タクシーでだいたい8分ほどで着いた。
代金を払ってタクシーを降りる。
「ここが親咲女子高校か・・・流石お嬢様学校といったところか・・・デカイな。」
校門の前で立ち止まり学校全体を眺めながらつぶやく。
思えば琴音とは待ち合わせなどはしていなかった。
「あ。そうだ、メールしとくか―――」
「海璃!」
校門の向こうから琴音が走ってくる。
「よぉ。」
琴音の方から来てくれたおかげで通学中の学生から変な目線を受けずに済んだ。
流石にこちらも学生と言えど男である以上、女子高の校門前にいるのは不自然である。
「遅い!!」
第一声がこれだ。こちらは学校をサボってまで、しかも眠い中きたというのにも関わらず、『遅い』とはなんて言い方だ。
「お前・・・こっちの学校からここまでどれくらいかかると思ってんだよ。しかもわざわざ学校サボってまで来てるんだぞ・・・・何があったんだ?」
能力者関係だろうと思い、すこし緊張気味の声で言う。と、そんな時。
「ふ~ん。この人が琴音の彼氏か~ほぅほぅ。」
いきなり琴音の背後から見知らぬ女の子が現れた。
琴音と身長は同じくらいで、海璃より頭一つ分小さい。特徴と言えば、赤ぶちの眼鏡をかけてるくらいだ。
「なっ!?だから違うって言ってんでしょ!ちょと海璃もボサっとしてないで否定してよ!」
「海璃?ほっほー。もう下の名前で呼ぶ仲ですかぁ?」
「ちょっ!これにはわけが―――」
「わけ?どういうわけですか?・・・あやしいですねぇ~」
琴音とその女の子は二人で勝手に盛り上がっていた。
「・・・・・ぉい。まさかこんなことのために呼んだんじゃ―――」
「こんなことですって!?あんたね、これがどういうことか分かってんの!?」
「ふふふふ。もう学校には間に合わない時間。つまりは学校をサボってまでして来たんだー君は。ふふふふふ。琴音ちゃん愛されてるね~。」
「違うってば!」
困った顔をしながら琴音はこちらに目を向けてくる。
「帰らせてもらう。」
琴音たちにクルッと背を向けて海璃は道路沿いを歩いていこうとする。
「ちょっとまったぁぁ!!!何勝手に帰ろうとしてんの!」
琴音が海璃の服の袖を掴んで引きとめようとする。
「あぁ!?帰るに決まってるだろ!なんでこんなことに俺が付き合わなきゃなんねんだよ!」
「このことがどれだけ重大なことかわかってんの!?」
「んなこと知るかよ・・・俺は帰る。そうでなくても眠いんだ。」
「あれあれ?なんで海璃さんはお帰りになろうとしてるんです?お姫様を向かえに来たんでは?」
そう言って例の眼鏡っ子がこちらに歩いてくる。
「なんで俺がそんなことしなきゃなんねーんだよ。てかお前誰だよ。」
「えへへ。私ですかぁ~?親咲女子高校2年の谷口奏っていいます。以後お見知りおきをぉ~。」
そう言って奏と名乗った女の子は眼鏡の端をクイクイと上げながら海璃のことを見ていた。
「もう帰ってもいいか?俺がここにいる理由がない。」
「ダメ!この誤解を解くのが最重要事項!!」
そう言って琴音は何故か校門ではなくて、道路の方へと歩き出した。
「おい。何処行くんだよ。学校、そろそろ始まるんじゃないのか?」
ただいまの時刻は8時23分。そろそろHRが始まる時刻だ。それなのにも関わらず、琴音は道路の方へと向かい走ってきたタクシーを手を上げて止まらせる。
「早く来い!学校なんてそんなことよりこっちの方が大事!」
そして、唖然としている海璃の目の前を奏は歩いていった。
「え?おい・・・・ちょっ待てよ。」
そんな海璃にかまうことなく2人はタクシーに乗り込んでいた。
「いいから。いいから。早く来ないさってば。」
「・・・そんな簡単に学校サボっていいものなのか・・・」
海璃曰く、能力者関係でなら学校サボってもいいらしい。
そして3人はタクシーに乗り、琴音が運転手に言った目的地へと向かった。