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69.堕じゃなくて駄!

 マチコの転生手続きを終えて、三級天使サクラが女神ピルバラナの部屋に戻って来た。

 勿論、徒歩ではなく宙を浮かんでの移動だ。



「取り敢えず、マチコの魂はバージェス世界に送りました」


「お疲れ様でした」


「そう言えば、マチコの魂が来る直前に来たエロスの件ですけど、彼は、まだ真っ白な空間で眠りこけてますよ」


「そうですか。ゆっくり休ませてあげてください。彼は、ちょっと特殊な存在でして、ルカ‐0721号を作り出すためにブルバレン世界から借りていたんです。こちらでの役目を終えたと言うことで、彼が目覚め次第、ブルバレン世界にお返ししますので」


「了解ですー!」



 この時、エロスの寝顔は非常に安らかだった。

 マチコのお陰で、本当に悔いの残らない最期(腹上死)を迎えることが出来たのだろう。



 ❖  ❖  ❖



 一方、ここはノーテン高原。



「転移!」



 ボク……ルカは、消し炭となったマチコの身体を土に埋めた後、連続転移を経てホウテイ市ギルド前に戻って来た。


 ただ、転移して来ていきなり、ボクは愕然とした。

 沢山の人達が、全身傷だらけになって路上に倒れ込んでいたんだ。

 まさに瀕死状態。


 中には片腕を失っている人や片足を失っている人もいた。

 道も建物の壁も……、街中が血で真っ赤に染まっていた。



「ルカ。済まない。全員、アイツに……」



 ジノンの声が聞こえて来た。

 ただ、いつものような元気な声じゃなく、いかにも死にそうな、か細い声だ。



「ジノン?」



 声がした方を振り返ると、そこには全身傷だらけのジノンの姿があった。

 イケメンの顔にも無数の傷が……。

 しかも、結構深そうだ。


 放っておいたら、間違いなく跡が残るだろう。

 さすがに、これは元男のボクでもムチャクチャ勿体無いって思った。



 そんな中、ジノンの後方に、ボクの方を見て余裕の笑みを浮かべながら勃って……じゃなくて、立っている男がいた。


 日本人顔で、見た目は二十代前半っぽい。

 ボクは、コイツが地球からコッチの世界に来たヤツだと直感的に思った。


 ただ、本当にコイツが異世界転生とか異世界転移とかしていたら、その際に性別も年齢も変わっている可能性がある。

 なので、見た目だけでは、中身は分からない。



「これは、アンタがやったの?」


「そうだ。お前がルカだな?」


「ああ」


「ココに来たと言うことは、やはり坐天使もお前に破れたと言うことか。さすが、魔導士エロスが作り出したオートマタだな」



 コイツ、ボクが人間じゃないってことを、みんなの前で平然と言いやがった。

 ただ、性魔玩具とは言ってこなかった。

 そこまでは知らされていないってことなのか?



 一応、これなら傍からは、H専用機じゃなくて、

『オートマタ・パラス』

 の後継機みたいに勘違いしてもらえるかも知れない。

 性魔玩具と言われないだけ何万倍もマシだ……。



 …

 …

 …



 って思ったんだけど、これを聞いた街のヤロウ共は、


「オート股?」


「やはり、ルカは、そう言う存在だったか!」


「俺、一番!」


「じゃあ、俺、二番!」


 と、ほざいていたよ。

 コイツ等、瀕死状態じゃなかったのかよ?

 急に元気になりやがった!



「オート股じゃなくて、オートマタだってば!」



 しかし、コイツ等には、ボクの言葉が全然届いていないみたいだ。

 いや、敢えて聞いていないのか?



「俺、三番!」


「じゃあ、俺は四番打者だ。俺のナニはロングヒッターだぜ!」


「ショートのくせに!」


「それより、三人までなら同時に相手できるだろ?」


「両手を足せば五人同時じゃないか?」


「一カ所に二本挿しすれば、もっと同時にこなせるぞ! あと、胸も使えるし」



 なんか、勝手に盛り上がってやがる。

 ついさっきまで死にそうだったくせして、妙に精力が漲ってねえか?

 心配する必要が無いくらい元気じゃねえかよ!



『取説君:ルカ‐0721号は、100人乗っても大丈夫です!』



『取説君:ついでに、100人に乗っても大丈夫です!』



 取り敢えず、コイツ等のことは無視しよう。

 襲い掛かられたら超高速稼働で逃げればイイや。


 そんなことより、ジノンの後方にいるコイツ……、街の連中を傷つけたであろう、コイツのことの方が今は大事だ。



「アンタの名前は?」


「プルートと名乗っておこう。女神サイドには駄天使と呼ばれているようだがな」


「堕天使?」


「堕落の『堕』じゃなくて無駄の『駄』な。つまり、価値の無い天使を意味しているわけだが、サキュレント様の部下なら、それも当然だろう。以前、召喚された恥天使は、お前の目から見ても恥ずかしい存在だっただろう?」


「まあね」


「だから恥天使と呼ばれていた。次の死天使は、背を向けられることが死を意味する。だから死天使。坐天使は、ある種の比喩表現だが、その仕様を考えれば、何を意味していたかはお前でも分かるだろう」



 ただ、ここでプルートは、マチコの仕様について細かいことを言ってこなかった。

 もしかして、エロ系機能のことを口に出さないようにしている?


 だとすると、ボクの仕様のことも、知っているけど、敢えて口に出さなかっただけかも知れない。

 堕天使サイドなら、普通は、

『坐天使は、お前と同じダッチワ〇フだからな!』

 とか言って、ボクを貶めようとするだろうけど?



「それは、そうだけど……。それで、ボクのことは、どの程度知ってるの?」


「全てサキュレント様から聞いているが、ここで言う必要など無いだろう。それより、聖女シリーズとしての役目をさっさと果たしたらどうだ?」


「えっ?」


「怪我人を治してやれってことだ。待っててやるから」



 たしかにそうなんだけど……。

 でも、みんなに大怪我をさせた張本人には言われたくないな。


 ただ、これを一人一人治しているんじゃ時間がかかり過ぎる。

 一気に広範囲魔法で全員を治す必要がある。



「スーパー(S)・エリア(E)・エクス(eX)ヒール(略してS・E・Xヒール)」



 ココでボクは、初公開だけど広範囲型超上位治癒魔法を放った。

 略称が気に入らないけど!

 Hなことをするために治すみたいで。


 街のヤロウ共……と、極一部の女性達(女性異性愛者を除く)の傷が、見る見るうちに治って行く。

 失った手足も再生。

 ジノンの顔の傷も、跡形も無く消えた。


 さらに、ヤロウ共と極一部の女性達の性欲も、より一層とんでもないレベルで漲って来て……。

 って、これじゃ、ボクの貞操が危ないんじゃないか?



「おお。パワー復活!」


「ルカも昼間からS〇Xしたいってか?」


「S〇X昼って言ってたしな」



 コイツ等、ワザと聞き間違えてねえか?

 S〇X昼じゃなくて、S・E・Xヒールなんだけど……。



「俺のナニは準備万端……いや、準備満タンだぜ!(白濁液が)」


「助けてくれたお礼に俺のマグナムを、そのオート股にぶち込んでやろう」


「俺も治療代代わりに、オート股なルカの中に注ぎ込んでやろう」


「俺も、そのオート股に!」


「俺も、そのエロいオート股に!」



 なんかコイツ等、オート股って言葉で、さらに盛り上がってないか?

 ボクを弄る新ネタが出て来て喜んでやがるよ!


 少なくとも、最近はボクの超フェロモン魔法にもHP値にも慣れて来ていたし、こんなアホなことは言わなくなっていたんだけど……。



 そんな中、ジノンだけは平常運行。

 エロ脳には、なっていなかった。



「女性達も治してやってくれないか」


「うん」



 仕様上、ボクは女性異性愛者を治せない。

 飽くまでも、ボクは成人男性用(及び女性同性愛者用)の性魔玩具だからね。


 なので、治すためには、男性から懇願される必要があるんだけど……、そのことをジノンは覚えていてくれたようだ。



「S・E・Xヒール!」



 ボクは、再び広範囲型超上位治癒魔法を放った。

 これで女性異性使者達の怪我も完全治癒。


 いよいよ、駄天使プルートとの戦いに移行する。

 ……つもりで、ボクはプルートの方を振り返ったんだけど……。


 プルートは、この時、その場に腰を下ろして鼻クソをほじっていたよ。

 しかも、人差し指の第二関節まで鼻の穴の中に入っている。

 どれだけ奥の方からほじってるんだ?



「待たせたな、プルート」


「随分長かったな。待ちくたびれたぞ。お陰で大物が取れたがな」


「あのね……」



 コイツ、見た目は二十代前半の男性だけど、中身は品の無い中年オヤジだな。

 どんな人間なんだろうと思い、ボクは、プルートのステータス画面を覗き見したわけだけど……。

 ボクは、それを見て驚かされた。



『トリフィオフィルム世界での通り名:プルート

 出身:日本(地球)

 年齢:五十歳(召喚後は二十二歳)

 召喚者:堕天使サキュレント

 特殊能力:対ルカ用に、HP抵抗性、フェロモン魔法抵抗性、及び性感マッサージ魔法抵抗性を意図的に発動可能


 特記事項1:四十代半ばで大手企業の執行役員に抜擢されたが、周囲から嫉妬され、足を引っ張られた。また、部下達は彼に甘えて業務上のミスを頻発し、そこを突かれて彼は失脚。執行役員を解任された。その後は窓際に送られ、彼に嫉妬していた上司から不当に最悪な人事考課を、ずっと受け続けることになる。その人事考課ゆえ、執行役員への復帰は絶望的と言える。


 特記事項2:彼の失脚に関与した者達(部下達を含む)への激しい憎悪あり。その者達全員に特殊五十億年ボタンを押させることを条件に堕天使サキュレントに召喚される。


 特記事項3:特殊五十億年ボタンは、対象者達の社用PCのEnterキーに取り付けられた。発動は一回のみ。そのボタンを押した者は何もない空間に送り込まれ、五十億年を過ごすことになる。五十億年経過後、記憶を消去されずに元居た場所へと戻されるが、現実世界においても五十億年後となる。


 特記事項4:特殊五十億年ボタンを押した者は、不老となる。また、超新星爆発の半径2億キロ圏内にでもいない限り死ぬことは無い。自殺不能』



 正直、絶句した。

 抵抗性三点セットは、ボクとの戦いを想定すれば、やっぱりかって感じだけど、この特殊五十億年ボタンって最悪じゃない?


 何も無いところに飛ばされたヤツが、元の場所に戻ってくるのが五十億年後。

 その頃、太陽は膨張して赤色巨星になっていて、その中に地球は呑み込まれているかも知れない……と言うか、多分、吞み込まれているだろう。


 そんなところに戻されるわけだから、普通なら生きていられない。

 しかし、ソイツ等は不老となり、かつ太陽が超新星爆発を起こさなければ、死ぬことも出来ない。


 ただ、太陽の質量では超新星爆発を起こさないって何かで見た記憶があるけど……。

 なので、彼等は太陽の中心部に引き寄せられるとは思うけど……、そこに永遠に存在し続けることになるんだろう。

 相当な苦痛だ。



 プルートは、心底、ソイツ等のことを恨んでいるな。

 正直、コイツの性格、怖いよ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  ……んーーー。  駄の能力とか生い立ちとか見ると、正直戦闘らしい戦闘は出来そうに無い。  ってなると「やられたらやり返す。倍返しだ!」みたいにカウンター(しかも等倍じゃなくて○倍返し)…
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