57.要塞都市へ!
オペロン公国最高難易度と名高い(?)サキュバスダンジョンをクリアしたボク達が、次に目指すのは、難易度ナンバーツーと呼ばれるインキュバスダンジョン!
……にしようかと思ったんだけど、このダンジョンにボクが入るのはマズイ。
女王様モードが通用すればイイけど、万が一のことが起こったら……。
『取説君:ルカ‐0721号は、ヤラれるためだけの存在です。口ではイヤと言いながらも身体は正直です』
『取説君:ルカ‐0721号は、100人乗っても大丈夫です!』
『取説君:ついでに、100人に乗っても大丈夫です!』
インキュバスダンジョンのチャレンジは見送った。
ちなみに、サキュバスダンジョンとは違って、インキュバスダンジョンは、群を抜いて人気ランキング最下位とのことだ。
稀に乱〇好きな女性冒険者が挑むことは、あるみたいだけど……。
言うまでも無く、インキュバス達を相手に〇交するのが目的で……。
一方、男性異性愛者の冒険者達は、罰ゲームとかでもない限り、そのダンジョンに入った例は無いそうだ。
あとは、男性同性愛者の冒険者が数人だけか。
正直、ツモノミ市のアンデッドダンジョンの方が、ボク達にとっては稼ぎ易い。
ボクの聖水でアンデッド達をガンガン昇天させて行くからね。
ちなみに、ここで言う昇天は、Hな意味の昇天じゃなく、成仏したの意味だ。
使う聖水はボクのHな聖水だけどさ……。
それは、さて置き、ボク達はオペロン公国のダンジョン巡りを取り止めて、アサスズメ王国に戻ることにした。
サキュバスダンジョンは、オペロン公国の中でも割と北の方に位置する。
ここから転移魔法で移動してもイイんだけど、少しはこの世界の景色を見てみたい。
それで、今回は、ボクのワガママだけど、馬車で移動することにした。
ただ、ボク達は専用の馬車を持っていない。
なので、ボク達は、先ずツモノミ市行きの定期馬車に乗った。
それから、宿泊は馬車の中じゃなくて宿になる。
馬車は乗り合いだからね。
勿論、泊まるのは一人部屋。
そうしないと、日課がこなせなくなって、フェロモン魔法の放出量をコントロールできなくなるためだ。
『取説君:ルカ‐0721号のフェロモン魔法を最大値から下げた場合、それにより放出できなくなったエネルギーを別の形で放出する必要が生じます。代行処置として24時間毎に1時間、ルカ‐0721号の陰部に何かを挿入してください。この際、男性器を用いることが推奨されます』
このお陰で、ボクは毎日聖水を作っているわけだけど……。
馬車での移動は、一日に50キロくらい。
サキュバスダンジョンからツモノミ市まで移動するのに五日くらいかかる。
ただ、馬車に乗ると、いきなり同乗しているヤロウ共が、正直言って五月蝿かった。
「一発いくら?」
「金貨五枚で愛人にならないか?」
「脱げ脱げ!」
なので、ボク達は、その馬車を見送り、次の馬車を一台貸し切りにしてもらった。
値は張るけど、その方が、気が楽だ。
ツモノミ市からは、馬車を乗り換えてホウテイ市に向かう予定だった。
ところが、ツモノミ市の宿で日課をこなした直後、ボクの脳内に、取説君の声が聞こえて来た。
『(連絡)女神ピルバラナより、ハイテイ市に向かうよう、三級天使サクラを通して指示が出ています』
ただ、これだけじゃ、何の目的でハイテイ市に向かわなきゃイケないのかが分からない。
女神様から言われているのなら、行かなきゃマズイんだろうけど。
「行く理由って?」
ボクは、取説君に聞いてみた。
しかし、取説君からの返答は無い。
どうやら、取説君は、ボクに対して一方的に話すことしか出来ないようだ。
❖ ❖ ❖
翌朝。
ボクとジノンは宿を出たところで待ち合わせていた。
ボクが宿を出た時には、既にジノンは来ていた。
コイツは、極力ボクを待たせないように気を使っているんだと思う。
大抵、ボクよりも先に来ている。
マジで、紳士だと思う。
前世のボクとは大違いだ。
「おはようジノン」
「おはよう。ここから南下して、そこからショウサンゲン湖の周囲の街を回って行く感じだな?」
「うーん。そのつもりだったんだけど、実は、信じられないかも知れないけど、寝ている間に天使サクラから啓示があってさ」
「啓示?」
「うん。理由は分からないけど、ハイテイ市に行くようにって」
「ハイテイ市か……。全然方向は違うけど、まあ、イイか。俺達はホウテイ市を拠点としているけど、別に、そこに家があるわけでもないしな」
「ありがとう」
ジノンは即座にOKしてくれた。
ここは、素直に感謝する。
多分、ジノンは時間潰しがしたいから、ハイテイ市に行く大義名分が出来るってことで了解してくれたような気がするけど。
正直、ボク達は、特にホウテイ市に戻って何かするってわけじゃないし、そもそも、冒険者イコール定職に付いていないようなものだ。
悪く言い換えれば、住所不定無職……に近いようなモノ。
加えて、ボク達は今までの稼ぎがあるので、実は、働かなくても十分生きて行ける。
なので、
『仕事の関係で、是が非でも帰路を急がなきゃ!』
ってわけでもないんだ。
ギルドとかから依頼が来ない限り、暇を持て余しているとも言うけど……。
ツモノミ市からはハイテイ市行きの定期馬車に乗る。
ここでも馬車を一台貸し切りにした。
ルートとしては、イミダゾール帝国との国境伝いの移動になる。
時間は、馬車だと九日程度かかるとされる。
結構な距離だ。
五日目に大河に架かった巨大な橋を渡る。
この大河は、ショウサンゲン湖から流れている大河の中で、最も北側に位置している。
丁度、ボク達が渡った辺りで、この大河は左にカーブしていて、それまで北西に向けて流れていたのが、ここからは西向きに流れを変える。
その大河を右手に見ながら、ボク達は、さらに西へと進んで行く。
この辺りから、この大河がイミダゾール帝国との国境になる。
だからだと思うけど、この河には国内移動用の船が無い。
国内移動のふりをして手続きを踏まずに国家間を勝手に行き来するヤツ(つまり密入国者)が出ては困ると言うことで、この大河を使っての移動は制限されているらしい。
本当は、船で川下りとか出来れば、その方が早いかも知れないんだけどね。
そして、ツモノミ市を出発して九日目の昼過ぎに、予定通り、ボク達はアサスズメ王国で一番の商業都市であるハイテイ市に到着した。
ハイテイ市は、北側に大河が流れ、南側が湾に面している。
大河と海に挟まれた都市だ。
また、この湾は、ダブリー湾と呼ばれる。
ハイテイ市は、かつて、イミダゾール帝国が危ない国家だった頃に、帝国との戦いに備えて前進基地的役割を果たす拠点として作られた。
それで、大河側が巨大な壁で覆われていて、要塞都市と呼ばれている。
現在では、イミダゾール帝国が危ない国家と言うことは無い。
なので、前進基地的役割を果たす必要は既に無くなっている。
ここを要塞都市にしたのは、ダブリー湾の一番奥……ハイテイ市の南側に王都リンシャンがあるためだ。
つまり、帝国軍のリンシャン侵攻を防ぐための防波堤だったってことだ。
また、王都リンシャンから西側に少し離れたところには、ダブリー湾沿いに、軍で使う武器や馬車等を作る施設があった。
今では、そこは工業都市になっているが、そこがチャンカン市である。
それから、ショウサンゲン湖から西側に流れる大河があるんだけど、それが分岐して、王都リンシャンとチャンカン市のすぐ脇を、それぞれが流れている。
これらは、ハイテイ市の北を流れる大河とは別の大河になる。
王都リンシャンには、勲章授与の関係で来たことはあったけど、ハイテイ市に来たのは初めてだ。
ボク達が馬車から降りると、近くにいた一人の少女が、
「本当にナツミにそっくり!」
とボクの方を見ながら声を上げていた。
明るく活発な雰囲気の小柄な少女だった。
年齢は、十三~四歳くらいに見える。
『人工物じゃなく、天然モノでボクの容姿にそっくりの美女が、知り合いにいるのか。それはそれで凄いな』
なんて思いながら、ボクは、その少女に背を向けてジノンと一緒にハイテイ市の中央の方に行こうとした。
すると、その少女が、
「待って。アナタがルカね」
とボクに声をかけて来た。
「はい? どちら様で?」
「私はハル。ラヤにお願いされて、この世界に来たの。アナタに用があって」
「ボクに? でも、ラヤって?」
「ラヤは、ピルバラナが地上に降りた時に使っている名前ね」
「ええと……それって、女神様のこと?」
「そうだよ」
もしかして、この娘は女神様の知り合いってこと?
普通に考えたら、『自称女神の友人』って、想像力豊かで頭がおかしい系の中二病ってことなると思うけど?
でも、初対面のボクの名前を知っていたし……。
天使か何かってことなんだろうか?




