55.転生!
「うあぁぁぁぁぁ……」
ガイア……巴は、ボクの性感マッサージ魔法を受けて、声を上げながら悶えていた。
完全に脳内はエロに支配されている状態だろう。
もはや、灼熱魔法を再放出できる状態じゃない。
Hな液なら放出できるんだろうけど……。
「もう一回、性感マッサージ魔法!」
ボクは、巴に向けて、さらに性感マッサージ魔法を追加照射した。
巴から反撃されないようにってのが、一番の理由だけど、他にも理由はある。
何となくだけど、巴に、Hの喜びを感じて欲しかったんだ。
刈部瑠佳時代のボクには、Hの才能が無かったし、巴に全然、気持ち良くしてあげることが出来なかった。
もし、当時のボクに、今の一割程度でもHの才能があったら……。
そうしたら、あの日、多分、巴はマグロで終わらなかっただろう。
ボクは、体毛と臭いが脳内イメージと違っていたことで三次元から逃げた。
なので、あの日、巴がマグロで終わらなくても、ボクのその後は変わらなかったかも知れない。
しかし、少なくとも巴の人生は、少しは違うものになっていただろう。
そうすれば、ステータスに書かれていた前世の業とかも変わっていた気がする。
「巴、ゴメン……」
ただ、余りの快感に、巴にはボクの声が全然届いていなかったようだ。
完全に一人の(Hな)世界に入っちゃっている(あそこにはナニも挿っていないけど)。
周りのことなど全くお構いなしだ。
そう言えば、巴に名前を聞いた時、
『私の名前は江本……、いいえ、ここでは、ガイアってことになっているわね』
と答えていた。
なので、普通なら、ここで、
『どうして下の名前を知ってるの? 苗字しか教えていなかったはずなのに!』
って展開になるんだろう。
そして、ボクが巴に自分の正体を明かして……。
ただ、そんなお決まりのストーリーは、ボクには無縁のようだ。
一人で悶えまくる巴の姿を至近距離で見ているだけだったよ。
ボクの声なんか届いちゃいねーし!
ふと、ここでボクは、
『もし、女神様のところに行ったのが巴で、サキュレントのところに行ったのがボクだったら、少しは巴も救われたかな?』
なんて思った。
少なくとも堕天使の手先でなければ、この世界で巴も幸せが掴めたかなって思ったんだ。
しかし、ボクと入れ替わったところで、巴にとっては不幸か。
エロの権化だからな、この今のボクの身体は!
丁度この時だった。
ガイアに向けて、猛烈なスピードで矢が放たれて来た。
ジノンとトムソニーが、二人がかりで強化付与したヴェルティナの矢が飛んで来たんだ。
通常、これだけの距離を矢で攻撃するのはムリな気がする。
最大飛距離なら、大型の弓ならここまで届かせることは可能かも知れないけど、最大飛距離と有効射程距離は別物だ。
しかし、ヴェルティナは魔法弓使い。
魔法で矢の有効射程距離を格段に伸ばしているんだろう。
あと、この矢には、当初の予定通りボクの聖水が塗られていた。
なんだか、もの凄く恥ずかしいんだけど……。
そして、それは、ガイアの身体に見事命中した。
「キャー!」
ガイアが断末魔とも言える悲鳴を上げた。
そして、次の瞬間、彼女のHP……ハレンチパワーが一気に低下して、0になった。
死んで肉塊と化せば、Hなパワーは消失すると言うことだ。
ただ、ここでのHPは、普通に使われるヒットポイントであって欲しかったな……。
ちなみに、ボクにはヒットポイントを見ることが出来ない。
ハレンチパワーしか確認できない仕様なんだ。
ガイア自身は、彼女のヒットポイントを確認出来たんじゃないかって気がするけど。
「やったか?」
「やったな!」
ジノン達が、喜び勇んだ表情でボクの方に向かって走って来た。
ガイアの生命反応が消えたのを察知したんだろう。
「嬢ちゃん、すげえ素早い動きだったな。嬢ちゃんがいなかったら、コイツは倒せてなかったぜ!」
そう言いながら、トムソニーが笑顔でボクの背中を叩いた。
何でも蒸発させる魔人を倒したんだ。
普通はトムソニーのように喜ぶだろう。
しかし、この時、ボクは浮かない顔をしていた。
ガイア……巴は、一応、ボクの元カノだからね。
彼女を討伐して嬉しいはずが無かった。
むしろ、
『前世から迷惑ばかりかけてゴメン』
と思っていた。
「討伐対象が人ってのは、たしかに嬉しいもんじゃねえが、コイツは、人々にとっての脅威だったからな」
「……」
「たしかに、コイツは堕天使サキュレントに連れて来られたのかも知れねえ。しかし、女神ピルバラナ様は寛大だ。女神様に許される日が来ることを祈ってやろう」
「そう……ですね……」
ボクは、両手を合わせて巴の冥福を祈った。
それと併せて、
「(ボクの聖水でトドメを刺してゴメンなさい。Hな身体でゴメンナサイ。存在してゴメンナサイ……)」
ボクは、ひたすら巴に謝った。
いくら元カノとは言え、さすがに、あの恥ずかしい液でトドメを刺すって、もの凄く巴に悪い気がしてならなかったんだ。
❖ ❖ ❖
ふと気が付くと、巴は、一面が真っ白な空間にいた。
そこは、サキュレントの声を聞いた時とはまるで違って、邪悪な雰囲気は微塵にも感じられなかった。
「気が付きましたか?」
巴が声のした方を振り返ると、そこには白い服に身を包み、背中に一対の大きな白い翼を生やした美女の姿があった。
「アナタは?」
「三級天使のサクラと言います。江本巴さんですね? 女神様のところに向かいますので、私に付いて来てください」
サクラは、宙に浮くと女神がいる部屋に巴を連れて行った。
女神の部屋に入ると、そこには、中学生くらいに見えるカワイイ系美少女が椅子に座っていた。
その美少女も白い服を身に纏っていて、背中には一対の大きな白い翼を生やしていた。
「江本巴さんですね。私はトリフィオフィルム世界を統治するピルバラナと申します」
「女神様?」
「そう呼ぶ者もおります。それにしても、刈部瑠佳氏と関りのある者がサキュレントに連れ去られていたとは」
「瑠佳のことを御存じなのですか?」
「ええ。彼も私が統治する世界に転生しておりますので」
「そうですか」
「それで、巴さんには再び転生していただき、アナタがトリフィオフィルム世界で殺した人数の三十倍の人数を治癒魔法で救って頂きます」
「私がですか?」
「はい。それが、罪滅ぼしとなるでしょう。それで、転生先の世界ですが、ここで、アナタには選択権があります。私が統治する世界のうち、アルビウム世界、ディルビウム世界、トリフィオフィルム世界のいずれかに転生していただきますが、どの世界がよろしいですか?」
「では……」
巴が、転生先を選択すると、すぐに彼女の魂は、その異世界に送り込まれた。
その世界に、彼女は赤ん坊からではなく、17歳の姿で転生し、治癒術師として、その世界に尽くして行くことになる。
❖ ❖ ❖
その後、ボク……ルカは、ジノン、トムソニー、ヴェルティナと共にピサン・ラジャの冒険者ギルドに戻った。
「魔人は、俺達四人で倒したぞ!」
このトムソニーの言葉に、ギルド内では歓喜の声が湧き上がった。
もう、全てを蒸発させる脅威は去ったんだ。
「ええと……、それとですね……」
一方のボクだけど、ギルドのスタッフに、借りていたロングソードを渡した。
ただ、先端部が溶けていて、このままでは使い物にならない。
借り物なのに、大変申し訳ないことをした。
「どうしたんですか、コレ?」
「魔人に触れたら溶けちゃいまして」
「そうでしたか」
「弁償しますので、おいくらでしょうか?」
「魔人討伐での必要経費と言うことで、弁償代は不要です。それより、剣をこんな風にしてしまう魔人を、どうやって倒したんですか?」
「まあ、その辺は、トムソニー氏に聞いてください」
武勇伝を語るのは、トムソニー達に任せた。
ここにいると、討伐祝いで酒をガンガン飲まされそうだ。
そうなると、ボクのマズイ機能が勃ち……じゃなくて立ち上がってしまう。
『取説君:ルカ‐0721号は、お持ち帰り機能が搭載されています。アルコール濃度に関係なく、ワイングラス三杯の酒を飲むと、勝手に酔い潰れます』
なので、ボクはロングソードをギルドスタッフに預けると、
「では、必要がありましたらお呼びください。宿の方におりますので」
とだけ伝えて、ギルド近くの宿に逃げた。
周りからは、
「ノリが悪いヤツ」
とか言われるかも知れないけど、これも自己防衛だ。
絶対に持ち帰られてたまるもんか!
❖ ❖ ❖
そして、翌日。
ボクとジノンは、さっさとホウテイ市ギルドへと戻った。
ヤロウ共がボクにベタベタ触って来るんで、急いで、この地を離れたかったんだ。
勿論、帰還方法は、ボクの連続転移になる。
ホウテイ市ギルド前に到着。
すると、そこでボクは、見覚えある女性に出会った。
「なんで、ガイアがココに?」
ボクの脳みそがフリーズした。
何故、彼女……巴がココに?
しかも、高校時代の姿に若返っている。
ステータス覗き見スキルがあるから間違えるはずがない。
ボクがガイアの名を口にしたんで、ジノンが剣を抜いて構えた。
昨日の倒したはずの魔人なんだから、当然の反応だろう。
年齢が半分くらいに変わっているけど、多分、魔人だから見た目の年齢を変えられるかもってジノンは思っているんだろう。
「ええと、もうサキュレントの手下じゃないので破壊活動はしません。なので、剣を納めてください」
「あ……ああ」
一先ず、ジノンは剣を鞘に納めた。
しかし、巴を睨んだままだ。
警戒はしている感じだ。
「ルカ……だったわね。昨日振りね。ガイア改め江本巴。この世界ではトモエって呼んでね。刈部君」
トモエが、こう耳打ちして来た。
取り敢えず、ボクの前世の苗字は、ジノンには聞かれていないだろう。
「えっ?」
「あと、私は治癒術師として数多くの人を助けるって使命があるの。王都を拠点にしようと思っていて。なので、ここに来たのは二人に挨拶するため」
「……」
「それにしても、アナタがあの瑠佳だったとはね。まさか、Hの権化みたいになるとはね。じゃあ、また機会があったら会いましょう」
最後に、彼女はボクに、そう耳打ちすると、定期馬車が出ている方に向かって走り去って行った。
馬車で移動と言うことは、多分、転移魔法は使えないんだろう。
ボクは、トモエの後姿を、ただ茫然と見詰めていたよ。
しかし、何故、彼女がボクの正体を知っている?
多分、女神様か三級天使サクラから聞いたんだろうけど……。
一応、ジノンには聞こえないようにしてくれていたけど、何かの拍子にトモエからバレたりしないよな?
なんか、イヤな予感がしてきたよ。




