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51.また同じパターンかよ!

 気が付くと、ガイア()は見知らぬ路上に座っていた。

 時間軸としては、ルカが転生してから三カ月が経過したところだ。


 その道は、地球の都市の道路のようなアスファルトで舗装されたモノではない。

 赤茶けた土が剥き出しの、凸凹した道路だ。


 それと、何故か自分の目の前にモニター画面のようなものが浮かんでいた。

 地球時代には無かったモノだ。



「もしかして、これが噂のステータス画面? まさか、私って本当に異世界に転生したの?」



 これを見てガイア()は、ようやく自分の置かれた状態……つまり転生者だと言うことを理解した。



「それにしても、いきなり死んでたって言われてもなぁ。でも、だとすると、私が住んでたワンルームマンション、事故物件になっちゃったんじゃない?」



 御名答。

 ガイア()の予想通り、既に彼女が住んでいたマンションは、某事故物件サイトに掲載されていた。



「お葬式は?」



 既に葬儀は、親族達の手で行われ、無事終了していた。

 真面目なガイア()が定刻になっても会社に連絡も無しに出社していないことで、上司が管理部門に連絡し、ガイア()の安否確認を依頼した。

 管理部門の課長がガイア()の住むワンルームマンションを訪れ、そこで、亡くなったその日に彼女の遺体は発見されたのだった。



「もう、自分じゃどうにもできないけど……。あと、ステータス画面によると年齢は三十五歳か。特典で若返るとかは無いんだ。赤ん坊から人生をやり直すってわけでもないし。あと、LvとかHPとか色々書かれているけど、RPGとかやったことが無いからな。全然分からないよ」



 ちなみに、ここで言うLvもHPも、ルカ‐0721号のステータス画面に記載されているモノとは違う。

 一般的なLvやHPである。



 ふと、ガイア()は、ステータス画面の中に、

『破壊と再生の神の手引き』

 と書かれているところがあるのに気が付いた。



「ナニこれ? ガイアって呼ばれて、それでいて破壊と再生の神って何? 破壊神だったらシヴァ神だと思うし、なんかメチャクチャだなぁ」



 そうは言っても、ここは異世界。

 地球とは、言葉の定義が同一であるはずがない。


 むしろ、地球でも使われる、

『ガイア』

 と言う神の名がある方が驚きだ。


 一先ず、ガイア()は道の端に座ると、『破壊と再生の神の手引き』を読み始めた。

 どうやら彼女は、取扱説明書や手引きをキチンと読んでから物事に取り掛かるマメな性格のようだ。



 ❖  ❖  ❖



 勲章授与から一か月が過ぎた。

 この間に、ボク……ルカは、ジノンと一緒にダンジョン巡りをした。

 ボク達は、今、オペロン公国にいる。


 とにかく、ボク達は留守にしたかった。

 貴族達がボク達を毎日のように会食に誘ってくる。

 勿論、基本はH目的だったり婚姻目的だったりするわけだけど……。

 それらから逃げまくっていたんだ。



 アサスズメ王国は、『Tの字』みたいな形をしているんだけど、その北側に三つの国が隣接している。

 西から順に、イミダゾール帝国、オペロン公国、ヤーリサ聖公国。


 イミダゾール王国は吸血魔女事件があった国。

 ヤーリサ聖公国は、ボクが中級ポーションの代用品で治療したイイオ氏のいる国だ。



 オペロン公国は、アサスズメ王国最北端のツモノミ市に隣接しているんだけど、実は、その国にはダンジョンが大量に発生している。


 お陰で、ダンジョンの入場料だけで国民全員が暮らしていると言う。

 ある種の観光業(?)にのみ特化した国だそうだ。


 当然、ダンジョンでの稼ぎを狙ってオペロン公国には沢山の冒険者達が集まって来る。

 ボクとジノンは、その冒険者達の中に紛れ込めば、見つかり難いって考えたんだ。



 そんなある日の夜のことだった。

 ダンジョン近くの宿の食堂で、ジノンと一緒に夕食をとっていると、突然、取説君がボクに報告し始めた。

 ちなみに、ジノンとは、食事は一緒だけど泊まる部屋は別だから!



『(報告)三級天使サクラから伝言です。

 堕天使サキュレントによって地の神ガイアを名乗らされている女性が、ラジャプリ王国の最西端の都市デュスレに降り立ちました。デュスレを壊滅状態にした後、王都ピサン・ラジャに向けて進行を開始したとのこと。

 ガイアの進行を止めてください』



 ガイアって、たしか地母神だよね?

 二か月前のヤツがウラヌスで、今度はガイアって……。


 しかも、端っこの都市に降り立って、首都に向けて破壊しながら移動って、完全にウラヌスの時と同じパターンだよね?


 もしかして、今度も中二病の人だったりして。

 また、アホな奴だったら倒すのが楽でイイんだけど。



「ねえ、ジノン。明日だけど、一旦、ホウテイ市に戻った方がイイかも」


「どうかしたのか?」


「ちょっと、何となく胸騒ぎがして……」



 さすがに、取説君経由で三級天使サクラから連絡が来ているとは言えない。

 そんなことを言ったら、ボクの方が中二病患者だと思われてしまう。


 ここは、

『何となく胸騒ぎ』

 ってことで誤魔化したつもりだったんだけど……。



「たしかに騒がしい胸だな」



 と、アホなことをジノンから言い返されてしまった。

 言われてみれば、たしかに、

『つつましい』

 とか、

『おしとやか』

 って言葉には無縁な胸だな。



 それは、さて置き。

 ホウテイ市ギルドに、ボク達が全然顔を出さないのも不自然だろう。

 そろそろ、一旦顔を出すタイミングではあるのかも知れない。



 翌朝、ボク達は宿をチェックアウトすると、

「転移!」

 ボクの転移魔法でホウテイ市冒険者ギルドへと急いだ。


 ギルドの中は、ボクの真似をしてボンテージファッションを纏った女性冒険者が多いんだけど……。


 それ以上に、女王様スタイルを眺めながらエロい目をしている男性冒険者が多かったよ。

 まるで舐め回すような視線で……マジでキモ悪い。

 そんな視線は、ボクにもよく飛んで来るけど……。


 ただ、見られて喜んでいる女性もいる。

 さすがに、その気持ちは、ボクには理解できないぞ!



 ボク達が受付カウンターまで行くと、そこにはリマの同僚のエリカがいた。

 エリカは、リマと結構仲が良いみたいだ。


 今、ギルド内にはリマの姿が無い。

 もしかしたら休みかな?

 まだ、ボクはエリカとは精神的距離があるんだけど……。


 しかし、エリカの方は、特にボクのことを敬遠している感じでは無さそうだ。

 多分、ボクのフェロモン魔法と高HP値に慣れたからだろう。



「あっ! ルカさんとジノンさん。ちょっと、ここにいてもらえます?」


「どうかしたんですか?」


「もし、二人を見つけたら連絡して欲しいって、ギルド長から言われていて。二人に依頼事項があるみたいなんです」


「分かりました」



 これは間違いなくガイアの件だ。

 しかし、予め知っていたら不自然だからね。

 ボクは、何も知らない顔をしていた。

 ただ、ジノンは、別の意味で驚いていた。



「昨夜、ルカの言った通り、何かがあったってことか。お前、占いのスキルでも持ってんじゃねえか?」


「いや、無いから。ホント、何となく胸騒ぎがしただけだから」


「まあ、おしとやかと言うよりも騒がしい胸だけどな」



 そう言いながらジノンはクスクスと笑っていた。

 余程、ツボにはまったんだな、このセクハラネタ。


 当分、このネタでジノンに弄られそうだな。

 別に胸は弄られないと思うけど。



 五分くらい待たされたけど、ギルド長のレッドがエリカに連れられて走って来た。

 ただ、非常に申し訳なさそうな顔をしている。

 いくらSランク冒険者が相手でも頼み難い案件ってことだ。

 いや、むしろSランク冒険者用のムチャ振り案件が来たと言うべきか。



「ルカ。ジノン。来てくれたか。実は、ラジャプリ王国にウラヌスの女性版みたいなのが現れた。最南端の街デュスレに現れたんだが、デュスレは瞬時に蒸発したそうだ」



 今、もの凄くイヤな表現が聞こえて来た。

 壊滅じゃなくて、蒸発って言ったよね?

 それって、どう言うことだ?



「済みません。蒸発って?」


「その言葉通りだ。その女性が通った後は、建物も草木も、全てが消えているんだ」


「ええと、火炎魔法とかを使うんですか?」


「いや。ただ通り過ぎるだけのようなんだが……」



 全く以て意味が分からない。

 思い切り情報不足だ。



「そんな化け物を討伐しろってことですか?」


「そうだ」


「これって、国家とかギルド本部からとかの依頼ですか?」


「ああ。Sランク冒険者の特殊任務だ」


「だとすると、『よく分からないけど分かりました』としか言えないヤツですか?」


「済まないが、そうなる」


「軍隊とかは?」


「既に撤退した」



 ウラヌスの時にも、本当は心の奥底で思っていたんだけどさ。

 それって、軍隊よりもSランク冒険者二人の方が、戦力が上ってこと?

 判断基準が、ちょっと……と言うか、かなりおかしくないか?



「変な話ですけど、それって、軍隊よりもボク達の方が、戦力が高いって判断になりませんか?」


「そう判断されている」


「えぇえ? 軍隊より上って、有り得ないでしょ?」


「いや。いくら軍隊でも、瞬時にワイバーン五頭は倒せない。よって、お前達二人の方が上だ」



 よくよく考えれば、この世界の軍隊は、ミサイルも戦車も無いし、ほとんど人海戦術みたいなものだ。

 たしかに、ボクとジノンの二人が軍隊で衝突したら、ボク達が勝つ可能性は十分ある。


 しかし……。

 軍隊より上って判断されて、脳筋連中なら素直に喜ぶんだろうけど、ボクは正直、喜べない。

 別に脳筋じゃないし。

 それに、それだけヒドい依頼が、今後も間違いなく飛んで来るってことだからね。



「そう評価していただくのは嬉しいですけど、依頼自体は、なんか、随分とムチャクチャな内容のようですが?」


「成功報酬(性交報酬じゃないよ!)は税抜き手数料抜きで、二人で3億Genとのことだ。よろしく頼む」



 実は、ウラヌスの時は、税込みで、しかもギルド手数料まで入って1億Genだったんだ。

 それをボクとジノンで分けたんだけど……。


 別に、お金には困っていないけど、通っただけで蒸発って、ウラヌスよりも質が悪いんじゃないか?

 一度、ガイアのことを遠くからでイイから観察する必要があるな。

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