48.警備隊!
「物質創製! それから超高速稼働!」
ボクは、物質創製魔法を発動して大量の縄を出すと、超高速稼働を発動して、ボクに群がるヤロウ共を、全員縛り上げた。
こうでもしなきゃ、先に進めない。
そして、お目当ての依頼書を横からかっさらって行った野郎から依頼書を取り上げると、ボクは受付に急いだ……と言うか怒鳴り込んだ。
「このギルドは、いったい、どんな教育をしているんだ!」
「はぁ? 何よ、いきなり、アンタ」
まさにボクに反撃するかの如く、そう言いながら受付嬢はボクを睨みつけて来た。
ボクは、この時、相当頭に血が上っていた。
血液なんか無いクセに。
それで、ボクは、冒険者カードを受付嬢に提示すると、
『バン!』
とカウンターを思い切り音を立てて叩いた。
一歩間違ったら、冒険者カードをカウンターの上に叩き付けていたかも知れない。
「ボクは、Sランク冒険者のルカ!」
「えっ?」
「吸血魔女を捕えて現場に縛って置いて来た。これが掲示板にあった吸血魔女捕獲の依頼書。急いでギルド長を呼んで来い!」
「S……ランク?」
「急げぇ!」
「は……はい!」
受付嬢は、慌てて奥へと引っ込んだ。
そして、それから待つこと十分。
ようやく受付嬢がギルド長と思われる男性を連れて戻って来た。
「遅くなりました。こちらがギルド長のナーミンです」
「Sランク冒険者のルカです。吸血魔女を捕獲……」
「これは、大変お美しい。昨日は、ランタノイド王国でウラヌスを討伐されたとか。既にギルド間報告で伺っております。その時のことを、是非お話し……」
このギルド長は、コトの優先順位がおかしい。
ウラヌスの話よりも、今は吸血魔女を急いで捕縛することが最重要だろ!
「その話は後にしてください。吸血魔女を捕えて現場に縛って置いて来てます。場所はギロリン伯爵様のお屋敷」
「えっ?」
「証拠も押さえてます。とにかく大至急。急がないと、タマ、潰すよ」
「分かりました!」
ようやく理解してくれたのか、ナーミンは、この後、急いで警備隊事務所へと報告しに行ってくれた。
と言っても、ボクが知らなかっただけで、警備隊事務所は、ギルドから50メートルくらいと、割と近いところにある。
そこまでナーミンが走って報告しに行った。
警備兵の方は、割と対応が早かった。
ナーミンが飛び出して行って、十分もしないうちに、ギルドまで二十人くらいの警備隊員達が駆けつけてくれた。
ほとんどが男性で、女性隊員は一人だけだった。
ただ、自己紹介を受けて、ちょっと気まずいな……と思った。
「俺は、警備隊長を務めるアミン。ギロリン伯爵家の長男だ。隣にいるのが弟のイミンで、警備隊副隊長を務めている。ギロリン家次男だ」
まさか、ギロリン家の長男と次男が警備隊の隊長と副隊長をしているとはね。
これから捕らえる相手が自分の母親って、もの凄く可哀相だ。
「ボクはS級冒険者のルカ。捕らえた吸血魔女は縄で拘束しています。場所は、ギロリン伯爵様のお屋敷内にある隠し部屋」
「隠し部屋?」
「多分、ご存じ無いでしょう」
「初耳だ」
「ギロリン伯爵も初めて知った雰囲気でしたので」
「そうだったか。それで、吸血魔女の正体は、やはり母?」
これには答え難い。
しかし、アミンもギロリン伯爵と同様に『やはり』と言っている。
うすうす感づいていたんだろう。
「大変、申し上げ難いのですが……ギロリン伯爵夫人でした。現在、縄で拘束していますが、すぐ近くにギロチン台があります」
「ギロチン?」
「そうです。女性の首を斬り落として流れ出た血を集め、それを浴びていたと自白しています」
「我が母ながら、何たる狂気じみたことを」
これには、アミンもイミンも両肩を落とした。
自分の母親とは言え、余りにも、していたことが残虐過ぎる。
「ただ、急がないと、その刃で縄を切るかも知れません」
「たしかに」
「あと、ギロチン部屋の奥に数十体の女性の遺体を確認しています」
「分かった。しかし、この手で母を罪人として捕えなくてはならないとは……」
さすがに、これは辛いだろう。
しかも、こんなことが明るみに出れば、自分達の立場だって危うい。
少なくとも伯爵家として存続するのは難しいだろう。
「心中御察しします」
「しかし、罪人は誰であれ放置できない。では、急いで現地に」
「ええと、この人数でしたら、ボクの転移魔法で全員移動できます」
「そうか。それは助かる。では、よろしく頼む」
「承知しました。では、行きます。転移!」
ボクは、警備隊員二十名を連れて転移魔法を発動した。
とにかく、今は逃げ出されたり証拠隠滅されたりしないことを祈るのみだ。
それにしても、警備隊には、冒険者達とは違って、すぐにボクをナンパしようなんてフトドキなヤツは、一応いなかったよ。
いなきゃいないで寂しいもんだな……とは思わないけど!
あと、女性警備兵が一人で助かった。
いちゃ悪いってわけじゃないけど、ボクの転移魔法にとって、女性の存在……正しくは女性異性愛者の存在はマイナスになる。
『取説君:ルカ‐0721号は、男性だけでしたら異性愛者同性愛者を問わず、転移魔法で同時に100人運べます。これは、乗っても大丈夫な数と同じです』
『取説君:女性同性愛者の場合も男性と同じカウントになります。つまり、女性同性愛者と男性を合計100人まで同時に転移魔法で運ぶことが可能です』
『取説君:女性異性愛者の場合は、男性70人分に相当します。そのため、女性異性愛者を同時に二人、転移魔法で運ぶことはできません』
取り敢えず、すんなりと転移魔法が発動できたのは幸いだったと言える。
もし、女性異性愛者が複数人いたら、その女性のためだけに、複数回の往復作業が発生していたわけだからね。
そして、その数秒後、転移終了。
家の鍵はアミンが持っていた。
彼が鍵を開けて、屋敷内に突入した。
「それで、隠し部屋は、何処に?」
「伯爵様の寝室の奥に金庫部屋があるのは御存じですか?」
「金庫用クロゼットか?」
「はい。その真ん中の金庫が隠し部屋の出入り口になっています」
「まさか、あれが……」
アミンを先頭に、ボク達はギロリン伯爵の寝室に突入。
そこには、ボクが連れて来た使用人が縛られた状態のままでいたんだけど、アミン達は、それに気付くことなく、そのまま金庫用クロゼットに入って行った。
それだけ、隠し部屋のことが気になっていたんだろう。
金庫用クロゼットでは、三つ置かれた金庫のうち、真ん中の金庫の扉が開けっ放しになっていた。
その奥側の内壁……隠し部屋に通じる階段の扉も開いていたわけだけど、この金庫に、そんな仕掛けがあることを、アミン達は初めて目の当たりにして驚いていた。
「本当に隠し部屋の入り口になっているとは……。ルカと言ったね?」
「はい」
「君に聞いた時は半信半疑な部分もあったけど、もはや、これでは疑いの余地は無い。ここからは、ボク達の仕事だ。ここまでありがとう」
アミンを先頭に、警備隊員達は、隠し部屋に通じるその金庫型の入り口に次々と入って行った。
隊員全員が入った後、ボクも隠し部屋へと向かった。
ただ、ボクが隠し部屋に到着した時、アミン達は唖然としていた。
さすがに亀甲縛りが斬新過ぎたようだ。
「ええと、アミン隊長」
「えっ? あっ!」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。ただ、この縛り方は、いったい?」
「ボクには、この縛り方しか出来なくて。でも、逃げられていなくて良かったですね」
「まあ、そうだが。しかし、何故、父まで?」
「吸血魔女の件には関与していませんでしたけど、家名を守るため、口封じにボクを斬ろうとしたからです。まあ、未遂でしたけど」
「そうか。それは済まなかった」
「いいえ、別に。あと、この部屋にはギロチンが。あと、奥の隠し部屋にはギロチンにかけられた女性の死体があります。ご確認ください」
「分かった」
恐らく、警備隊の中でも、ギロリン伯爵夫人ネーゲルが吸血魔女だって噂が、今までにあったかも知れない。
しかし、今までは、飽くまでも噂の域を出ることは無かっただろう。
証拠(死体)が押さえられなかったわけだから。
さすがに、
『金庫の中に入って調べます!』
とは言えないだろうし、普通は、あの金庫が隠し部屋の入り口だなんて発想も無かったと思う。
しかし、これで全てが白日の下に曝された。
これらが『ネーゲルが吸血魔女』だって動かぬ証拠となった。
隊員達が、手分けしてギロリン伯爵、ネーゲル、そして使用人達を隠し部屋からギロリン伯爵の寝室まで運び出した。
取り敢えず、亀甲縛りのまま……。
ただ、女性警備隊員と数人の男性警備隊員は、何となく、その縛り方に興味ありそうな顔をしていたように思えたけど……。




