38.オートマタ?
取り敢えず、ズヴァルト達には服を着てもらった。
何時までもパンツ一丁と言うわけには行かない。
「多分、数時間後に記憶は蘇ると思います。当ギルド長のレッドも、副ギルド長のベルデも、数時間してから記憶が戻ったそうですので」
「そ……そうか……」
記憶が戻ると知って、三人は安堵の表情を浮かべていた。
やっぱり、コイツ等、変態だ!
その神経が、ボクには理解できないよ!
「しかし、試験中に、ボクをSランクにすると仰ってましたけど? それって?」
試験中の言葉は、女王様モードのボクから、ご褒美欲しさに勝手なことを言っただけだとボクは思っていている。
なので、どうせ、
『それはノーカン』
って言われると思っていた……んだけど……。
「それなら言葉通りだ。儂らとしては、君がSランクではなくAランクに留まっていることがケシカランと思っておる」
「えっ?」
こうズヴァルトに言われて、ボクとしても驚いた。
ケシカランって、そっちだったの?
身体のことじゃなかったのか?
「それで、今回は儂らが直々に審査することにした。その結果、Sランクとなったのなら誰も文句は言わんだろうからな」
「そう言うことだったんですか」
「そうだ。あと、君達が討伐したワイバーンは前回五頭。今回三頭で計八頭になるが、二人で討伐したのなら、ルカ君の取り分は四頭になる。勝手ながら、そのうち二頭をAランク受験資格分、残りの二頭をSランク受験資格分とさせてもらった。これなら、受験資格に対して、誰も文句は言えまい」
つまり、冒険者歴が一か月に満たないボクを、何とかSランクに昇格させようってマジで考えてくださっていたってことか。
事前に、このことを知っていたら、もうちょっとご褒美をあげたんだけど……。
「ワザワザ、ボクのためにありがとうございます」
「礼は不要だ。それにしても、ルカ君が超高速稼働でワイバーンと戦う姿は、まるで伝説のオートマタ・パラスのようだった」
「オート股って、そんなにヤラしい女性がいたんですか?」
「いや、オート股じゃなくて、オートマタだが…」
「ええと……失礼しました」
これにはズヴァルトも、その後にいたメラースとノワールも失笑していた。
リマとジノンは目が点になっていたし……。
たしかに、オート股の存在は有り得ないか。
少なくともボクの先行機は、この世界には存在しなかったはずだし。
『取説君:ルカ‐0721号は、聖女シリーズの第一号です。ちなみに、他のシリーズは、まだ存在しません。等身大自律型魔玩具は、ルカ‐0721号が、トリフィオフィルム世界では初の作品となります』
あと、このエロネタ変換機能も要らないなぁ。
会話の邪魔でしかない。
『取説君:ルカ‐0721号は、聞いたり読んだりした単語を即座に下ネタに変換することが多々あります』
ただ、ボクの場合は、絶対に、
『オートマタ・ルカ』
とは名乗れないな。
人間として認識してもらいたいって言うのもあるし、
『オートマタのルカ』
から部分変換されて、
『オート股・乗るか?』
とか言われるんじゃないかって懸念がある。
もしかすると、このオヤジギャグのためだけに、エロスはボクをルカと名付けたのかも知れない。
それでも、
『オートマタ・カオル』
よりはマシかも知れないけど……(オート股・香る?)
「それで、オートマタ・パラスとは?」
「今から十五年前にキング・コカトリスが現れたんだが……」
「キング・クリ〇リスですか? クイーンじゃなくて。それにしても、そんな危ない存在が……」
「コカトリスだ。コ・カ・ト・リ・ス!」
「あっ…………。これは、大変失礼致しました」
また、エロネタ変換機能が働いた。
これって、相手からしたら会話を邪魔して、ふざけているようにしか思えないだろう。
そう言うつもりは無いんだけど。
「まあ、イイ。それで、そのキング・コカトリスを討伐したのが、オートマタ・パラスだ。実は、キング・コカトリスによって、いくつかの町や村が全滅したんだが、ダイスーシー村も、その一つだ……」
ズヴァルトの話では、その当時、多くの人間達がキング・コカトリスのブレスで石にされたそうだ。
しかし、生物でなければ石化しない。
オートマタ・パラスは、まさにキング・コカトリスを倒すために天界から遣わされた存在とのことだった。
ブレスの中を突っ切るように超高速で動き、瞬時にキング・コカトリスを倒したと言う。
この話を聞いて、もしかしたら、このオートマタ・パラスが、ジノンの言う女性じゃないかって思えて来た。
ただ、十五年前だとジノンは二歳か。
だとすると、オートマタ・パラスがジノンの言う女性だって考えるのは厳しいか?
やっぱり、ジノンが言う女性って、エロスが前世……ブルバレン世界ってところにいた時に作ったボクの先行機って考えるのが妥当だろう。
「それと、Sランクになる以上、ルカ君にも国家やギルド本部から指名依頼が行くことがある。その点はご了承願いたい」
「わ……分かりました」
「それで、早速だが、ジノン君とルカ君に依頼したい」
ジノンが、一瞬、イヤそうな顔をした。
多分、ボクの顔も同様だろう。
自分じゃ見えないけど。
これは、『イエス』か『はい』の二択のみの『命令』と言うヤツに他ならない。
ジノンも、そのことを理解しているようだ。
とんでもないブラックな要求が飛んでくる気がする。
もしかして、この依頼をするために、ボクを急いでSランクに上げたとか言うんじゃないよね?
「二か月くらい前に、帝国を挟んで反対側の国、ランタノイド王国に魔人とも言うべき者が現れ、次々と街を破壊している。その男の名はウラヌス」
「ウラヌス?」
たしか、ウラヌスって天空の神じゃなかったっけ?
魔人どころか、神の名を騙っているよ。
「そうだ。知っているのか?」
「いいえ」
「そうか。現在、軍隊が対応しているが、ウラヌスの持つ強大な魔力に劣勢を強いられているとのことだ。それで、そのウラヌスの討伐をお願いしたい」
「暗殺ですか?」
「討伐さえしてもらえれば、どのような形でも良い。ランタノイド王国は、ここアサスズメ王国と友好国であり、これは、ランタノイド王国からの依頼でな……」
つまり、ランタノイド王国から依頼が飛んで来たんで、丁度イイ手ゴマに昇格したボク達にスルーパスされたってことだ。
Sランク冒険者って、そう言う立場だったの?
だったら、ジノンはAランクのまま、ボクはBランクのままでいた方が良かった気がするんだけど?
ジノンも、そう言った事情を知らなかったようだ。
さっきまでよりも、さらにイヤそうな表情をしている。
「成功報酬は一億Genだ」
「性〇報酬って、身体を売れってことですか?」
「いや、〇交報酬ではなく、依頼達成の報酬だ」
また、エロネタ変換機能が働いた。
これだとボク自身が、一年中、頭の中がピンク色に染まっていると勘違いされそうだ!
「ええと……度々済みません」
「では、よろしく頼むよ」
「は……はい……」
もし、ジノンがSランク冒険者の事情を予め知っていたら、昇格しようなんて間違っても思わなかっただろう。
もしかすると、Aランク最強って言われた状態で冒険者生活を終えた人達って、そう言った事情を知っていたんじゃなかろうか?
だから、敢えて昇格せずにいたんだろうって今更ながらに思う。
そして、そう言う事情を知らないAランク冒険者達だけが、ワイバーン討伐とかにチャレンジしていたってことだ。
「それから、連続転移で移動すると思うが、帝国内を横切るのは避けていただきたい。実は、帝国には『目立つ女性は吸血魔女に襲われて命を失う』との都市伝説があってな。万が一にも、君がそうなっては困るのでな」
「はぁ……」
吸血魔女よりも、軍隊を撥ね退けるウラヌスの方が数段面倒なんじゃ?
別に、この世界の色々なところを見てみたいって思っているから、迂回しても全然構わないけど。
「それもあって、タンヤオ市の女性ギルド社員は、君の飛び級を阻止したようだ。なので、彼女を恨まないでやって欲しい」
「……」
「あと、これは個人的なお願いなのだが、迂回するならヤーリサ聖公国を通っていただきたい」
「ヤリサー〇交国?」
「いや、ヤリサーではなくヤーリサ。性〇の国ではなく聖の公国だ」
「ですよね~」
またもや、例の下ネタ変換機能が発動したようだ。
しかし、今回のヤツだけは、その機能の有無は関係ない気がした。
普通に誰でも聞き違えると思う。
これだけは、ボクが悪いんじゃない……はずだ!
「実は、ヤーリサ聖公国のビーチーと言う街に、旧友のイイオと言う男がいるんだが、ソイツが病に倒れたらしくてな。可能であれば彼を診ていただきたい」
「ビッチですね? 分かりました」
「いや、ビーチーなんだが……」
「ええと……聞き間違えて済みません」
今回のも聞き間違えても仕方が無いと思うけど……。
それはさて置き、ソイツもボクに、ピンヒールで踏んでこいと言うことだろう。
この時、ボクは、そう解釈した。
「イイオの居場所は、ビーチーの冒険者ギルドに聞けば分かるだろう。それから、今回の依頼に関する報告は、ここホウテイ市ギルドのギルド長にしてくれれば良い。では、よろしく頼んだぞ」
まさか、Sランク昇格イコール国家&ギルドの犬とはね。
どっちかと言うと、ボクは、男性を犬にさせる方なんだけど……。
この後、ボクは受付に移動して新たにSランクの冒険者カードを受け取った。
本来なら喜ばしいはずなんだけど、面倒ごとが増えるだけと知ったからね。
全然嬉しくなかったよ。




