61、祈り
エターナルリーベを取得する為の試練の谷と呼ばれる聖域は、アストラル大聖堂の礼拝堂の奥から繋がる異空間にある。
エターナルリーベはそこに住む聖獣グリフォンと戦うことで得られる勝利の証でもある。
私は今、礼拝堂で祈りを捧げている。
朝の光はステンドグラスを通して、人々を見守る三賢神の像へと降り注ぎ、堂内に響き渡る讃美歌は荘厳な雰囲気を醸し出していた。
入れ替わっては神を崇める信者達は、それぞれの思いを祈りという形に変えて、今世への救いを求めている。
罪を犯した彷徨う魂は、祈る事でその罪を許されるのだろうか。
各々が紡ぎ出す祈りの聖言は無秩序でありながらも重なり合い、人々の心の澱を溶かしてゆくようだった。
私も彼らと同じように心からの祈りを捧げた。
前世で失った命を、今世では失いたくない命を思いながら。
「ユーリウス様なら大丈夫ですよ。リティ様」
「クリスタ」
聖堂の最前列の席に座っている私の横にクリスタがきた。
「私はずっとお二人のことを見てきました。前世のユーリウス様はリティ様に負い目を感じていらっしゃるようでした」
「負い目ですか」
「たった十六歳の騎士経験もない娘にグリフォンを倒せだなんて、誰が考えても無謀じゃないですか。ユーリウス様はリティ様の事をかわいそうに思っていたし、ご自分が取れない事にはきっと悔しい思いをされていたことでしょう」
「かわいそう・・・つまり単なる同情だったということですか」
「ご本人の記憶が戻っているのであればわかるのではないですか。試練の谷から戻ったらきっと教えてくれますよ」
ユーリウス様、あなたが最期に見た夢は何だったのですか。
思いは時を超えて今へと繋がる。
もしも人が願い事を一つだけ叶えることができたのならば、何を願うだろう。
私にはずっと思い続けてきた願いがある。
それは年を経て、時を遡り、再び生まれ変わっても変わらぬ思いだった。
守りたい。
この命が続く限り永遠に。
たった一つ大切なものを守るために、失ったものを嘆くのは私のエゴなのだろうか。
『私は王宮を去る』
次に出会った時、彼は私達の関係にどんな結論を下すのだろう。




