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挿話 最後の航海 碇をあげて 三
すべての橋を巡り終える
船は、ゆっくりと――
最初の場所へ戻ってくる
エンジンが、静かに止まる
音が消える
世界が、少しだけ広くなる
⑦ 敬礼
少年は、船を降りた
振り返る
そこに、ルミナ号がいる
変わらない姿で
「……ありがとう」
声は、震えていた
少年は、背筋を伸ばす
涙をぬぐいもしない
そして――
ぎこちなく
けれどまっすぐに
敬礼した
その瞬間
船の窓の光が
ほんの少しだけ
やわらかく揺れた
応えたように
数日後
ルミナ号は、解体された
形は、なくなった
アララ
「……なくなっちゃった」
スピーダ
「がんばってたのに……」
静かな川
なにも残っていないように見える
⑨ 残るもの
コスタクルスが、川を見ている。
「消えたと思うか?」
誰も答えない
「川は覚えている」
水が、わずかに光る
「橋も」
遠くの橋が、静かにそこにある
「そして――」
少しだけ間を置いて
「私たちが、覚えている」
アララは
川を見る
さっきまでなかったものが
そこにある気がした
「……そっか」
「なくなるんじゃないんだ」
風が、やさしく吹く
その流れの中に
確かに
ひとつの航路が残っていた
ルミナ号は、もういない
けれど、その航海は、終わっていない




