第一話 はじまりの かぜ と おと
どの橋にも、妖精と橋獣が宿っている。これは、そんなようせいと、きょうじゅうの、出会いとつながりの、おはなし
風はいつも、どこでも吹いている。
その橋も、かかったころから、吹いていた。
人々が行き交うことで、起こす風。
けれど、それは必ず消えていく。
強い風、弱い風、穏やかな風、荒れた風、どんな風であろうとも。
そんなある日、行き交う人々の間に、不思議な風が生まれた。
光の粒子をまとった、その風は、きらめきながらも、不思議なことに、人々には気づかれず、いつまでたっても消えなかった。
やがて、風の光は強くなり、ひとつのかたちになった。それがアララ。
この橋の風から生まれた妖精。
アララは、人々の起こす風が多ければ、強ければ、笑顔だった。
その橋が、人々が、起こすのは風だけではない。
人々が行き交うことで、おきる音。
それも同じように、おきては消えていく。
アララは、そんな音も大好きだった。
その日は、珍しく橋に人の姿がなかった。
アララは、欄干に腰かけ、寂しげに水面を見つめていた。
今日はこんなにいい天気なのに、どうして、元気が出ないんだろう。
どうして、こんなにさびしいんだろう。
ふいに、水面が揺れ、ぽこっぽこっと音の泡がたった。
驚いて見ているアララの前に、不思議な生き物があらわれた。
「おと、たりない。おと、ちょうだい」
そのいきものは、かなしそうにアララを見て言った。
それが、スピーダ。この橋の音の獣だった。
アララは気がついた。
街が静かだと、風も音もおこらない。
アララは橋の上に立ち、呼びかけた。
「みんなを、集めてきて!」
ちいさなちいさなアララが、四方八方に散っていった。
ちいさなアララは、あの手この手で、人間を呼ぼうとした。
あるものは、おいしいにおいで、あるものは、かぐわしい花のかおりをはこんで。
なんにんものちいさなアララは、むりやり背中に風をふきつけて。
そうして、人が少しずつ集まり始めた。
音が生まれた。人が歩く音、話す声、笑い声。
そのざわめきを、同じように生まれた風がスピーダに運ぶと、
その体に吸い込まれ、スピーダの体が輝いた。
その輝きは、風と混ざり合い、光の粒子となってアララの周りを舞った。
おとに乗って、スピーダがアララのそばにやってきて笑った
「おと いっぱい」
アララも笑った。とても幸せな気持ちで。
「うん、かぜも、いっぱい」
ふたりは、行き交う人々の間を、橋の欄干を、
そして、空高くを、うれしそうにかけていった。
今日も橋には、
風と音がめぐっている。
アララとスピーダがいるかぎり、
この街は、きっと元気だ。
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