かりかりベーコン
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婚約者であるカレンと魔の森を歩く。
バスケットを持ってきていたのならば軽いピクニック気分であるが、残念ながらバスケットはない。
ただ、旅の道具類は持ち合わせていた。
テントや食器類や火を起こす道具などだ。
それらの道具を取り出すと森で設営を始める。
「レクス、なにをしているの?」
「今晩、泊まるところを設置中だ」
「もしかしてここで野宿をするの?」
「ああ、最初は街道沿いの村にでも泊まる予定だったが、予定変更だ。今夜は森で一晩明かす」
「わたくし、公爵令嬢なのだけど」
「意訳すると野宿なんてはしたない真似できませんわ、かな」
「ええそうよ。わたくしはふかふかのベッドで眠りたいの」
「贅沢言うな。もうじき夜になる。そうしたら魔物がうようよするようになるぞ。火を絶やさずにしておけば魔物は近寄ってこない」
「一晩中見回りをするの?」
「ああ、交代で見張りをするんだ」
「わたくしもするの!?」
「ああ、屋敷の中ならお嬢様扱いできるが、ここではそうはいかない。君にも戦力になって貰うぞ」
「うう、夜更かしは美容の大敵なのに……」
「ニキビや吹き出物がでたら俺のせいだな」
「そうよ。一生恨んでやるんだから」
「それではそうならないように野菜を食べるんだな」
そのように言うとテント付近の茂みに入り込んでがさごそとやる。
夕飯に使う野草を探しているのだ。
「野草を食べるの?」
「天然の野菜だ。干し肉は持ってきているけど野菜はキャベツの酢漬けしかないんだ。それだけじゃ味気ないだろう?」
「それはそうだけど、その辺に生えたものを食べるなんて」
「なにを言っている。野草は市場にだって流通しているんだ。山菜くらい君だって食べたことがあるだろう?」
「あれはプロの人が取ってきているんでしょう? あなたは毒草を見分けられるの?」
「俺の得意分野だよ。何年冒険者をしていると思っているんだ」
そのように言っていると茂みの奥にキノコを発見。
「お、これはアジヨシダケだ」
「アジヨシダケ?」
「その名の通りのキノコだよ。とてもいい味がするんだ。香りカオリダケ、味はアジヨシダケって格言があるくらい。これでだしをとってスープを作ろう」
そのように言うと火を起こし、鍋で湯を沸かす。
「手慣れているわね」
「もと熟練の冒険者だからな」
そのように返すとダガーでアジヨシダケを細かく切って鍋にぶち込む。
「こうすると手早くだしが出るんだ」
「時短料理ね」
「野外では火は貴重だからな」
そのように返すと野菜も切って鍋にぶち込む。
あっという間に野菜スープを完成させると次はベーコンを取り出し、薄く切る。
「厚切りベーコンも美味しいが、俺は細身のベーコンをカリカリに焼くのが好きだ」
「わたくしもベーコンはカリカリ派です」
「思わぬ共通点だな」
「ですわね」
そのように同意し合うとフライパンでベーコンをカリカリに焼く。
それをじーっと見つめるカレン。
「もしかして自分でやりたいのか?」
「やらせてくれますの?」
カレンは顔をときめかせる。
「やりたそうにしてるからな」
「実家の公爵家では厨房に立つ機会がありませんでした。修道院では数度しか厨房に立たせてくれませんでした」
「……数度ってのが怖いが、まあ、ものは試しだ」
そのように言うとカレンにフライパンを持たせる。彼女は焼き飯でも作るかのようにフライパンを動かす。
「そんなに動かしたらベーコンが吹き飛ぶ――」
すべてを言い終えるよりも先にベーコンは彼方へと飛んでいく。さらに彼女は火に触れてしまい火傷を負う。
「うう、痛いですわ」
指を舐める彼女だが、幸いと火傷に効く軟膏を持っているのでそれを塗ってやる。
「レクスは優しいのね……」
「優しくない男に価値はないからな」
そのように言うとさらに自分の分のベーコンを半分譲り渡す。
「え? これを食べてもいいの?」
「自分だけ食うわけにもいかなきからな。それに困ったときは譲り合いの精神だ」
「ありがとう!」
目を輝かせる。そのままレクス大好きと抱きついてきそうな勢いであったが、そのイベントは未遂に終わる。まだ好感度が足りないようだ。
もっと交流を重ねてレクス様大好きフラグを立てなければならない。
そのような結論にたどり着くと、俺はベーコンをパンに上に乗せてかぶりついた。
保存用の堅いパンであるが、野菜スープと一緒に食べるとちょうどいい塩梅だった。
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