ゴブリン討伐
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街道で留まっている人たちに声を掛ける。
「貴殿たちはなぜそこに留まっているのだ」
葦毛に乗った俺を貴族と認知してくれたのだろう。声を掛けた商人は丁寧な言葉で返してくれた。
「これはこれは、もしかしてあなた様はこの地の領主様でしょうか」
「正解だ。まだ領主になって三ヶ月だけどな。それでいったい、なにがあったのだ?」
「それがなのですが、この先に通じる道が途絶えているのです。崖崩れがおきてしまったようで」
「なんと」
「私はセルム村に商いに行く途中なのですが、それも敵わず、難儀しておりまして」
「セルム村ってわたくしたちが行こうとしている場所よね」
カレンが尋ねてくる。
「そうだ。まったく、こんなときに崖崩れとはついていない」
「街道以外にセルム村に行く道はないの?」
「あるにはありますが、魔の森と呼ばれる場所を突っ切らなければなりません」
「魔の森……恐ろしい響きね。もしかして魔物が出るの?」
「御意でございます」
「しかし、セルム村に行くにはそれしか方法はあるまい。俺たちは魔の森へ向かうぞ」
「領主様、危険でございます」
「俺たちは急ぎの旅なのでな。おまえのように荷馬車を持っているわけではないから森くらい通れる。さて、おまえも困っているだろうが、悪いが俺の屋敷までいってハンスという男に崖崩れの報告をしてくれ。レクスが即座に復旧せよ、と命じていたと言づてを頼む」
「本気で行かれるつもりなのですね」
「ああ、こう見えても短気でね。それに荒事にはなれている。魔の森くらいへっちゃらさ」
そのように胸を張ると俺たちは街道を外れ、鬱蒼と生い茂る森に向かう。
カレンは心配げに言う。
「あ、あの、わたくし、魔物が怖いのですけど」
「お、ここではツンデレが出ないのだな。いい傾向だ。怖くなったら俺をぎゅっと抱きしめていいんだぞ」
「そ、そんなことはしません。わたくしはただ一般論として魔の森を通るのに反対なだけ」
「前も言ったが俺は元冒険者なんだ。魔の森くらいなんでもない」
「魔物が現れたら退治してくれるの?」
「そうだな。Bランクまでならばひとりで討伐できる」
「Aランクの魔物が出たらどうするのよ」
「そのときは念仏を唱えてくれ。あるいは神に祈りを捧げるんだな」
「神頼みなの!?」
「もしくはそのひらひらのスカートをまくし上げてすたこらさっさと逃げるんだ。俺が戦っている間に」
「そんなはしたないことはできないわ。それにあなたを見捨てたくない」
「心優しい令嬢だな。――まあ、安心しろ、この森には最大でもCランクの魔物しかいないことは確認済みだ」
「本当?」
「俺が何年冒険者をやっていたと思っているんだ。自分の故郷の魔物分布くらい把握しているよ」
「それはよかった」
「出くわすとしてもゴブリンの集団くらいだろうな。あるいはオークか」
「……オークにはトラウマが」
「ならばゴブリンの集団と出くわすように祈ってくれ」
と軽口を叩いていると本当に緑色の小男たちの集団と出くわした。醜悪なゴブリンの集団だ。
その数一〇。
ちなみにゴブリンはFランクの魔物だ。とても弱いが、Fランクといえども数が集まるとなかなかの強敵となる。
カレンに後方に隠れるように指示すると剣を抜く。
スラリ、とロングソードが光る。
ちなみにこのロングソードは冒険者時代から使っていたものだ。古代魔法王国の遺跡で手に入れたもので弱いが魔力も帯びている。
なかなかのわざものであり、錆びた剣や石斧で武装しているゴブリンなど目ではなかった。
最初の横薙ぎの一撃でゴブリンを一体、始末する。
ぎゃびっ!
と悲鳴を上げながら緑色の血を噴出させる。
ちなみにゴブリンの血が緑色なのは赤血球が銅によって作られているかららしい。人間は鉄でできているから赤いのだそうな。この豆知識は昔一緒に冒険をしていた賢者に聞いたのだ。
さて、そんな豆知識をも出せるほど余裕の戦闘を進めるとゴブリンを半数ほど斬り殺す。するとゴブリンは戦意を失い四散し始める。
戦闘終了というわけであるが、戦闘が終わるとカレンが現れ、俺のことを賞賛する。
「あなた、すごい剣の腕前ね。まるで剣聖のようだったわ」
「ものすごい褒めようだが、本物の剣聖はもっとすごい。抜刀速度が見えない」
「あなたの剣さばきもわたくしには見えなかったわ」
「そりゃ、動体視力が弱すぎるんだろうな。というか令嬢は動くものを基本みないからな」
「なによ、素直に賞賛を受け取りなさいよ」
「ああ、そうしようか。俺までツンデレになるとラブコメになっちまう」
「ラブコメってなに?」
「ラブコメディの略さ。小説にそういうジャンルがある」
「あなたは本当に物知りね」
そのように纏めると俺たちは馬を引いて森の奥に入っていく。
まだ森の入り口だ。それゆえに弱い魔物としか出くわさなかったが、これから先もそうだとは限らない。
俺としても楽をして森を抜けたかったのでできればCランクの魔物と出くわさないことを祈りながら歩みを進めた。
ちなみにカレン嬢は歩きにくい森の辟易しているようだ。ドレスの裾が汚れるとぼやいている。
まったく呑気なものだが、悪役令嬢とはそんなものだろう。
そんな感想を抱きながら歩みを進めた。
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