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ミーティングと1on1の条件 エピローグ

 北嶋と世良発案のファシリテーターコンテストは、異例のスピードで承認を通った。

 理由はいくつかある。


 一つは「店長に全てを負わせない、管理スキルとファシリテートスキルは別物」という考え方が、今時の働き方改革にも響くだろうという側面。要は会社としてアピールになる。


 一つは、「研修や管理シートよりも不足しているのは見本だ」という主張が現場に受け入れられたこと。


 そして一つは、世良が絡んでいること。

 経営陣からすれば、世良に丸投げすれば経費は最小限に済むのでリスクは少ない。実際、コンテストは動画応募、ネット投票という形にしたので、既存のリモート環境だけで賄えるようなプランだった。

 現場からすれば、世良の指導内容は超が付くほど現場寄りなのは周知なので安心感がある。


 見えない部分では、これらのアピールポイントを北嶋が上手くまとめてプレゼンした功績も大きい。


「これ、やっぱり台本作り込むんじゃなくて、ガチミーティングした方が良いですよね」

 青田が聞いた。

 本店では、青田が参加の立候補をしている。それで「質問と相談」と称して世良を捕まえ、本社の会議室で話している。

 

「そりゃそうだ。台本なんて即バレるよ。別に違反じゃないけどね。評価はされにくいだろうな」

「ただ・・・このテーマで差が付くかな・・・」

 青田はホワイトボードを見る。


 ・業務改善

 ・新商品提案

 ・広告戦略

 と書かれている。この中から一つのテーマを選んで掘り下げてミーティングするというのがお題だ。


「わざとフワッとした題にしてるからね。やり方は色々ある。例えば業務改善だったら、内容を勝手に絞るのは自由だ。設定も色々つけて良い。『先日こんなトラブルがあったので再発防止を考えたい』とかね」

 そこまでヒントを出した所で一旦区切り、世良は青田の反応を見た。


「トラブルかぁ・・・まだトラブルにはなってないけど」

 青田が何かを考えている。


「所沢、お客様と付き合っているんですよ」

「あのソフトボールの人?」

「やっぱり分かります?!」

「なんとなく雰囲気はあったよな」

 青田は背もたれにもたれかかり、溜息をついた。


「ウチって一応、社内恋愛も、お客様との恋愛も禁止じゃないですか。誰も守ってないけど」

 言って再び溜息をつく青田。随分と、やさぐれている。

 思う所が色々あるのだが、それを処理しきれていないが故に言葉に出来ない様子。


「まぁな。社内恋愛禁止って、要は『恋愛絡みで仕事に支障きたすの禁止』ってことだからね。表だってOKとは言えないが、多少はあった方が若手の離職防止になるケースもあるらしい」

 なだめるように世良は言った。

「らしい?」

 青田の声のトーンが少し上がる。


「北嶋さんの受け売りだよ。ある企業では男女比を意図的に揃えた若手の集合研修をしていてね、その参加者は離職率が低いんだそうだ。面白いよな。こんなの今時、表じゃ言えないことだけど、色々情報持ってるんだ。さすがコンサルだよ」

「ふーん・・・」

 北嶋の名前を聞いて、青田のトーンが再び落ちた。


「ずいぶん仲良くなったんですね」

 青田の言葉に棘がある。この所、世良との会話に北嶋の名前が良く出るのだが、その度にこういうリアクションになる。


「なんだよ、妬いてるのか?」

 世良は軽く茶化した。

 が、青田が一枚上手だった。彼女は世良の顔を真正面から見て淡々と言う。


「妬いてますよ。知ってるくせに」

 世良は目が逸らせない。

 青田の表情が読めないのだ。怒っているでもなく、笑っているでもない。強いて言えば少し悲しそう??

 それ故、今回ばかりは、はぐらかすわけにはいかないと理解した。

「うん、ごめん・・・」

 青田は無言で世良を見続けている。


「北嶋さんは、仕事上仲良くなっただけだぞ。別に女性として見ているわけじゃない」

「私は?」

「前にも言ったが、意識してそういう目で見ないようにしていた。ただ・・・」

「ただ?」

「煮え切らないよな。。。色々あるんだよ、立場上」

「・・・」

「でも、覚悟決めた方がいいかなとは思ってる」

「?!」

「だから、ちゃんと話したい。でも、ここじゃなんだから、食事でも行かないか?今日閉店後時間ある?」

「はい!」

 青田の顔に生気が戻る。


「1on1でお願いします」



ー了ー

お読みいただき、ありがとうございます。

この後も連作短編の形で続く予定です。よかったらまたご覧ください。


■内容についての補足

本作、いつもはスポーツや仕事の題材を先に考えて、そこに絡めるドラマ部分を考えると言う書き方をしているのですが、今回は逆でした。世良と青田の話を書こうと言うのが先にあり、そこに絡める仕事、スポーツのネタを持って来るという形で構成しました。

だから、ちょっと毛色が違うエピソードになったかなと思っています。

どうも恋愛ネタを書くのは苦手なので、こういう話しはこれが最後になるかなと思います(^^;)

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― 新着の感想 ―
「世良がからんでいること」、確かにこれが大きい要素なのでしょう。 知に絡む部分は確実にAIが取って代わるとしても、状況を切り開く「誰か」、上が「任せたい」と思う先兵は決して欠かせない。 AIは責任をと…
コンサルタントの北嶋さん、なんだかAIっぽいキャラだなと思いました。 最初は事情を知らないので正論と形式で話すんですが、実はこういう事情があるんだって材料を渡すと、それを踏まえて上手にまとめ直してくれ…
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