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ミーティングと1on1の条件 プロローグ

今回はまたガチお仕事回です。



 黒須スポーツ本社の会議室。月一回の店長会議だが、いつもと少し顔ぶれが違う。

 各店の店長5人が先月の結果を次月の施策を取締役の水野、高田に報告するのがいつものスタイル。

 基本メンバーはそのままだが、今回はオブザーバーが複数いる。


 一人は社長が連れてきた大手コンサルタント会社の北嶋美奈子。

 一人は社長室、室長の世良。そして店長側では幹部候補として見学に来ている本店所属の青田、所沢他数名。


 本来ここに参加する予定では無かった世良を読んだのは水野だ。それで世良は自分の役割を、なんとなく理解していた。


「まぁ、参加者は多いが、いつも通り発表してくれ」

 高田の一言で会議が始まる。

 会議では、各店長が先月の結果と要因分析、そして今月の施策等を発表する。


 某店の木下店長は、型落ちのランニングシューズの在庫一掃セールを今月の施策としてかかげ、値引きキャンペーンと店内POPや会計時に渡すビラを作成したと発表した。

 そして、各スタッフに対する目標コミットをしており、目標に対して朝・終礼で後追いをし、進捗はバックヤードに表を張り出して『見える化』していると。


「ただ、現在の進捗を見ると特にその商品の売上は増えていませんね」

 オブザーバー席でノートPCを操作しながら北嶋が言った。

「はぁ・・・そうですね。申し訳ありません」

「いえ、詰めてるわけじゃないですよ。予定通りにいかない原因はどう分析されていますか?」

「徹底具合が悪いのかもしれません」

「先ほど発表した朝終礼や見える化は実は出来ていないということですか?」

「いや、それはやってます」

「毎日ですか?」

「はい・・・ほぼ毎日です」

「ほぼ?出来ていない日は何日あるのでしょう?」

「2、3日は・・・」

「そこも正確じゃないということですね」

「すみません」

 この店長の姿を見て、後方席で見学している幹部候補達がはざわつく。


(怖ぇーな・・・)

 小声で所沢が呟き、青田に目で窘められた。


「謝らなくていいですよ。でも、こういうことは正確に報告しないと私たちもアドバイスしようが無いですからね。まずは正確に現状把握からアクションされてはどうかと」

 北嶋は笑顔で言う。

「はい。ありがとうございます」

 戦々恐々としていて木下店長は、少しホッとしたような笑みで頷いた。


「ありがとうございます。OK。じゃあ次は・・・」

 と高田が次の発表の店舗を指名しようとしたところで世良が挙手をする。


「ちょっといいですか?」

「おう、なんだ室長殿」

 高田と水野がニヤリとする。

 これで世良は自分の役割を確信した。

 まったく、メンドウなこと押し付けやがってと、取締役の2人を見つつ発言をする。


「今の施策、このままじゃ成果出ないですね」

 その場にいる全員が世良に注目した。


 世良は各方面の顔ぶれを見て、慎重に言葉を選びながら話す。

「そもそも型落ちの在庫が多いですよね」

「はい・・・だからここで対策しようと考えました」

「ええ。その着目点は良いと思います。ただ、今、在庫データを見たんですが・・・」 

 世良も自分のノートPCを見ながら言う。


「これは残らないよなぁ・・・というのが結構残っています。特にこの商品の男性用の25.5cm~27cmがけっこうある。これは新港北台店なら残らないでしょ?」

 世良は自分の古巣の店長の佐々木に話を振った。

「はい。ウチではまず残りません。残るのは世良室長が言った通り、大きいサイズの、そもそも購買層が薄い物ですね」

「違いはなんなんですか?」

 水野が聞く。


「ウチは近くで世良室長と私でランニングセミナーやってますからね。お客様にランナー多いし、スタッフもシューズ販売に慣れている者が多いからです」

 佐々木は淡々と答えた。


「なるほどね。スタッフの販売レベルがネックなので、販促物と数値管理だけしても成果が出ないということですか?」

 水野が世良に話を振る。

 これから言語化しようとしたことを全て先を越された。やはり水野は分かっていたのだろう。

 世良はその振りに乗ることにした。


「はい。この情報化社会ですから、どんな良いPOPやチラシ作ろうと、SNS戦略しようと、なんならTVCM打っても、待ちで物は売れません。ましてや新商品でもない在庫なんて、ネットでいくらでも安い物買えますからね」

 店長達が頷く。本当に今、販促物頼りでは物が売れないのだ。


「なので木下さん」 

「はい」

「ちょっとここにポスターがある想定で、見ている方に声がけしてもらっていいですか?お客様役は・・・佐々木店長がいいな。よくいるランナー演じてください」

「分かりました」

 と席を立つ佐々木。

「今ここでですか・・・!?」

 と躊躇する木下。


「あれ、これってパワハラになるかな?」

 という世良に、木下以外の店長達がクスリと笑う。

「なるな」

 と高田。ここで全員が笑った。


「うん。ごめん。じゃあ私がやります。木下店長は自店との違いは何か?を見ていてください。これならいいですよね?」

 と世良が高田を見る。

「ギリだな」

 という高田にまた笑いが起きた。


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