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お金の重み


今日は皆さんお待ちかねの給料日だ。

一月の頑張りが結果となって現れる日に、拠点内は浮わついた空気に包まれていた。

が、外から帰ってきた俺の姿を見た瞬間、皆の浮わつきは『浮き足立つ』に変わっていたが。


その理由は……


「おっ?給料貰ったか。今月はよく頑張ったな。みんな、お疲れさん」

「パ、パウロさん……これ……わっ!?」

「あ、ダーリン……って!ど、どうしたの!?その格好!?」


ラウンジの丸テーブルに呆然と座っていたジョウ達に声を掛けると、ギギギッ……という異音を発していそうな動きでこちらを向いた彼らは、俺の姿を見た途端に仰天していた。


まぁ、ですよねー。今の俺、ボロッボロだから。

「色々あってなー」と、とりあえず笑って誤摩化す。


数日前の、あの『縞パン事件』から、シャールは本当に容赦がなくなってきた。急所は打たないでくれているが、腕や足は遠慮なくバシバシ叩いてくるのだ。

訓練用の木剣とはいえ痛いのなんの。


だからね、俺もついつい遠慮が無くなってきてね、うっかり口を滑らせちゃったんだー……

「ちくしょー!可愛くねーなーっ!パンツは可愛いのにねっ!(笑)」って……


……その瞬間、シャールさんは初めて稽古で『帝王時間(スキル)』を使った……


瞬〇殺って食らうとあんな感じなのかなー?

刹那の間に一体何発シバかれたことやら。


その後、ボロ雑布のようになった俺の体に蹴りを入れてから、シャールさんはプンスコ怒ったまま先に帰っていきました。

後で謝っとかないとなー。


ま、それはさておき……


ジョウ達四人が椅子に座って強張っていた理由。

それは、それぞれの前にある小さな革袋、今日貰った給料のせいだろうと俺にはすぐに分かっていた。


小さな袋と侮るなかれ。中身のメインは一枚十万イェンの金貨だ。

トッシュ、サラ、エミリーの三人はおおよそ百万イェン。他のメンバーの手伝いもしていたジョウの給料は約百五十万イェンだった。


今日までガムシャラに依頼をこなしてきたため、給料がどれくらいの金額になるのか全く考えていなかったのだろう。

初めて見たのであろう大金に、四人の気持ちはまだ追いついていないようだった。


クックッと笑いながら近づき、ジョウの頭をワシャワシャと撫でる。


「無駄遣いすんなよー。でも、今日くらいは皆で美味いモンでも食ったらどうだ?」


自分へのご褒美、というのは大事なものだ。それは次に繋がるバネにもなるし、それを皆で共有出来れば結束も強まる。

そんな思いからの提案だったのだが、ジョウ達の反応は芳しいものではなかった。


「……パウロさん……このお給料のことなんですが……」

「オ、オレ達全員で話したんですが、やっぱりロロレイク村での失敗で迷惑をかけてるんで……」

「あー……」


そうか、強張ってた理由にはそれも含まれてるのか。

と、俺はジョウとトッシュの言葉にため息をつく。

同じテーブルにつくサラとエミリー、ジョウの肩に座るディーネも、揃って肩を落とし、うつむいていた。


まぁミスを自覚して反省するのは良い事なのだが、度が過ぎるのはむしろ悪い事だ。

だから、俺はジョウとトッシュ、二人の頭を平手でペンと叩いた。二人は「あたっ!?」と声を上げ、サラ、エミリー、ディーネの女子組はビックリした顔をこちらに向ける。


「それはもういいって言ったろ?失敗は誰にだってある。俺だって、昔も今も失敗ばかりだ。それにな、そんな気持ちで金を突き返されても俺は全然嬉しくねぇよ。お前達がやろうとしてるのは、自分達の罪悪感を少しでも薄めようって行為だ」


俺のお小言に全員が「うっ……」と言葉を喉に詰めた。


ただ、説教しっ放しというのも良くはない。

一から十まで手取り足取り教えるのは過保護なだけだが、自分の頭で考えるための足掛かりを与えるのも大人の大事な仕事です。


というわけで、俺はカラカラと笑いながらジョウの頭を撫でる。


給料(それ)はお前らが頑張った何よりの証だ。それを逃げるために使うな。その金をどう使う事が自分達にとって一番ためになるのか、それを皆で考えてみろ。その方が、俺はよっぽど嬉しいよ」


それだけ言い残すと、俺は手を振りながらその場を後にした。


さて、彼らはどんな答えを出すのかな?



「ただいまー。ゴメーン、救急箱ある?」

「わーっ!?パウロさん!?一体何があったんですかっ!?」

「いやー、Sランクの怪物にボコられちゃって(笑)」

「笑ってる場合じゃないですよっ!?す、座ってくださいっ!」

「いーよいーよ、自分でやるから」


事務室の方から、パウロさんの笑い声とキエルさん、オーリさんの慌てた声が聞こえてくる。


その騒ぎに先輩の皆さんは楽しそうに苦笑していたけど、ボク達は笑うことが出来ないでいた。

パウロさんから、とても難しい宿題を与えられてしまったから……


「……重い、ね……」

「うん、すごく……」


手にした見た目よりずっと重い革袋を、サラとエミリーは暗い表情で見つめていた。

その言葉の意味は、決して物理的な意味だけではないのだと思う。


「……どうしよう?マスター……」


いつもの元気がないディーネの声が耳をくすぐる。

ボクの隣では、トッシュがテーブルに突っ伏して抱えた頭を掻いていた。


「んんん……孤児院とか……どこか困ってる所に寄付する、とか……?」

「それは……パウロさんの言ってた「逃げ」なんじゃない?トッシュ」

「うん。私達の気持ちは楽になるかもしれないけど、「それがどんな風に自分のためになった?」って聞かれたら、上手く答えられないよ……」

「ん、んんん……」


サラとエミリーに自分の提案を否定され、トッシュはまた唸り声を上げていた。


……みんなは知らないだろうけど、少し前までのパウロさんはすごく厳しくて、すごく怖い人だった。

ボクは何度も怒られて、何度も泣いたこともある。


けれど、最近のパウロさんはボクにもみんなにもとても優しくて、温かくて……でも、昔よりもずっとずっと厳しくなった。


以前のように、大声で怒鳴ったりすることはほとんどない。

以前のように、殴られたりすることは全くない。

だけど、時折見せる厳しさは、今のパウロさんの言葉はとてもとても重くて……でも、その重さから決して逃げてはいけないと、そう思ってしまうような不思議な力があった。

それはまるで、お父さんの言葉のような……


「……どうしたらいいのかな……?ジョウくん……」


それはきっとみんなも、多分先輩の皆さんも、同じように感じているのだろう。

救いを求めるようにボクを見るサラは、みんなは困り果てたような顔をしていた。

きっと、ボク自身も。


「……」


答えられずに黙り込み、必死に考える。


ボクは……やっぱりこのお金は自分のためだけには使いたくない。

だけど、自分のためになることに使わなければいけない。

こんな矛盾を解決する方法なんてあるんだろうか……?


その時だった。

ディーネがボソッと呟いたのは。


「……ダーリンだったら、こんな時どうするのかな……?」

「パウロさんだったら……あっ!」


瞬間、ボクはハッとなって事務室がある方を向いていた。

「あるじゃないかっ!ボク達のためだけじゃなく、だけど何よりボク達のためになる選択肢が!」と。


そうして、ボクは慌ててみんなに声をかけた。

ボクが思いついたことを、みんなと一緒に考えるために。



これは、きっとパウロさんが望んだ答えではないんじゃないかな……

もしかしたら怒られるかもしれない。


だけどボクは、ボク達は、きっと胸を張って言えると思う。

「これがボク達が思う、『一番自分達のためになる』お金の使い方です!」と。



……やり過ぎた……


気まずさから(ネスト)に戻れず、フラリと寄った武具屋からの帰り道。

ふと足を止めた私は、地面に視線を落としながら大きくため息をついていた。


さっきからずっと、これの繰り返し。

輝く翼(私達)》の(ネスト)に近づくにつれ、私の足はどんどん重くなっていた。


帰ったらどんな顔をして『あの人』と会ったらいいんだろう……?

多分、彼は苦笑しながら謝ってくるんだろうけど……


で、でも!悪いのは『あの人』です!

あ、あんな事を言われれば、女の子だったら誰でも怒るでしょう?


だけど……流石にやり過ぎたと反省している……特に、最後の蹴りは本当に余計だった……


「……ふぅ……」


無理矢理顔を上げて空を見上げると、また自然とため息が漏れた。


自分で言うのも何だけど、私は感情の起伏があまりなかった方だ。

どんな危険な状況でも心はまるで揺らがなかったし、何かに悲しむ事も怒るなんて事もあまりなかった。

ジョウくんと出会ってからは、いつも誠実で一生懸命な彼に敬意を抱き、そんな彼を馬鹿にする人達にはじめて怒りを覚えたけど。


そんな私の感情の揺れは、『あの人』と出会う事によって一気に大きくなった。

私はもっと自分自身を御せる人間だと思っていたのだけれど……


ガドさんよりずっと大人に感じる時もあれば、ジョウくんより幼く感じる時もある。

そんな『あの人』に私も皆も助けられ、振り回され、笑って泣いて怒って……


「……ふふっ……」


私がつい笑ってしまったのは、『あの人』が絡んでいると、怒った事ですら「楽しい」と感じている自分がいる事に気がついたからだ。

それに気づけたとき、胸を圧拍していた重い空気がフッと軽くなったように思えた。


帰ったら謝らないといけないな。

でもきっと、彼は私より先に、私より多く謝ってくるんだろう。


手を合わせてペコペコ頭を下げる『あの人』の姿が簡単に思い浮かび、私はまた小さく笑ってしまう。


そんな時だった。


「あっ!シャールさん!良かった!探しました!」

「ジョウくん?」


ジョウくん達が息を切らせてこちらに走ってくるのを見つけたのは。


快復薬(ポーション)もありますから、安心してください」


はい、ずっと『回復薬』でやってきてますね。

今回は見つかってもよいのです。確認のために読み直すきっかけにでもなればウフフフフ。


はい、くるぐつさん、正解でーす。


さて、そろそろストックが尽きてしまいますので、連続で投稿出来るのはあと数話になります。

40話くらいはイケると思ってたんだけどなー……


ここからちょっと雲行き怪しくしつつ、大きな話の間にツッコミどころ満載のク〇ラノベネタ入れていけたらなー、と思ってま。


今回も誤字です……が……フェイクも混ぜております(悪)

まぁ多分すぐに見つかると思いますが、フェイク部分指摘した人は一緒に腹筋ですからねー(笑)


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― 新着の感想 ―
[良い点] シャール「前、下、前斜め下+攻攻」 パパウロ「最強のUMVC仕様(真並みの高速移動、移動中完全無敵)じゃねぇか!!」
[良い点] 「誤字とは何か?」という哲学的?な問いが発せられているところ。 [一言] 「誤摩化す」は誤字なのかそうでないのか、深く考えさせていただきました。「元々当て字なんだからどの漢字を使っても良い…
[良い点] よーくかんがえよー、おかねはだいじだよー って言いながら貸そうとするあのCMを思い出したw [一言] まぁこのくらいは個人情報の内に入りませんでしょう(笑) 1日、15日、25日、30(…
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