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望んだ通りの結末


拠点の裏手。グラウンドのような広場。

そこが、この《輝く翼(ライト☆ウイング)》の訓練場だった。


多少の魔法ならブッ放しても近隣の迷惑にならない(騒音に関してはサーセン!)くらいに広い訓練場。

そこの中心には今、多くの仲間達に見守られながらジョウ&ディーネとファイエルが向き合って立っていた。

俺とシャールも審判的な役割で二人のそばに居合わせている。


「んじゃ、もう一度ルール確認しとくぞ?時間は無制限。大怪我するような攻撃を当てるのは禁止。勝敗が明らかになった時点で俺かシャールが止める。いいな?」

「おう、異論はねぇ。俺が本気でやったら、このガキは消し炭になるだろうからな」

「は、はいっ!」


俺のルール確認の言葉に、ファイエルは抜き放ったゴツい剣を片手で振りながら、ジョウは緊張した面持ちで、それぞれに答えた。


「それじゃ、ジョウ。落ち着いてな。ディーネも頼んだぞ」

「はいっ!頑張ります!」

「まっかせて!ダーリン!」


最後にエールを送ると、ジョウは凛々しい顔で頷き、彼の背後で浮遊するディーネはガッツポーズを作った。

ディーネがやたら気合い入っているのは、全部終わった後に『お姫様抱っこ(ご褒美)』が待っているからだろう……

俺は何人お姫様抱っこすればいいんだろうなー……


それから俺は、ファイエルにも片手を上げた。


「ジョウには少しアドバイスしといたからな。フェアじゃないから、お前にもアドバイスしとくよ」

「は?いるかよ、そんなモン」


鼻で笑う彼は、どうせ言ったって聞く耳は持たないだろう。それは分かった上で、俺はファイエルにヒントを与えた。


「ジョウの精霊魔法は、あらゆる水を操る。この言葉の意味を真剣に考えてみなさいな」

「なんだそりゃ?まぁ水なんて、俺には通用しねぇよ」


案の定、ファイエルは馬鹿にしたように肩をすくめた。

その態度で俺はジョウの勝利を確信する。

この勝負がファイエルにとっても良い薬になればいいんだけどな。


「それじゃあ!二人とも離れて!」


勝負開始の前に、まずはジョウとファイエルを開始位置まで下がらせる。


二人が定位置についたのを確認してから俺が下がると、代わりにシャールが前に出て手を上げた。


「それでは……いいですね?二人とも?」


シャールの問い掛けに二人は無言で頷いて応じる。

それを見てから……


「はじめっ!」


シャールは手を振り下ろしたのだった。



「やっちゃえっ!お(にい)ぃっ!」

「負けんなっ!ジョウッ!」

「頑張って!ジョウくんっ!」

「ジョウくん!ファイトッ!」


開始の合図とともに大きな声援が巻き起こるが、明確に対象を絞っているのはアイシェ、トッシュ、サラ、エミリーの四人だけだ。

まぁ、他の面々からしたら、どちらか一方だけに肩入れしにくいだろうからね。


勝負の立ち上がりは、やはり想像した通りの展開だった。


「おおおおおおおっ!!!」


剣を正面に構えた状態でファイエルが吼える。

すると、呼応するかのように剣身が赤く輝きはじめた。


ファイエルのスキルの名は『震える魂(ブレイズ・ソウル)』。

(ブレイズ)なんて名称が入ってるが、その力は『あらゆる物質を振動させる』というものだ。


やがて、高速振動から熱を持った剣身は炎を纏った。

この世界ならではの物理法則と納得しておこう、うん。


ちなみに彼の本気モードは、この力をフル解放して全身に炎を纏う、というものだ。それで何故本人が無事なのかは知らね。


対してジョウは……


「はあぁぁぁっ!」


俺とのミーティング通りに、突き出した手の前にバランスボール大の巨大な水の塊を練り上げていた。


ファイエルとアイシェの帰還と、今の『この展開』を予見し、数日前からコッソリこの場に水を撒いてた甲斐がありました。皆には内緒ですよ。


ファイエルは立ち上がりに多少の時間がかかる上、その性格から『相手の全力を叩き潰して完全な勝利を収める』という戦い方を好む。

ジョウが大量の水を準備するだけの余裕がある事は容易に想像出来ていた。


「オラッ!来いっ!」

「い、行きますっ!水弾(すいだん)っ!!!」


燃える剣を大上段に構えたファイエルの挑発を真っ向から受け止め、ジョウは巨大な水弾を彼に向かって撃ち出す。


まともにブチ当たればただでは済まないであろう巨大な水の塊にも怯まず、むしろスリルを楽しむかのような顔で、ファイエルは炎の剣を振り下ろした。


「うおっ!?」

「くっ!」


ドンッ!!!という爆発めいた音と天を衝く火柱。

一気に気化した水が大量の水煙となって押し寄せ、俺とシャールは防御体勢を取る。


まるで雨上がりの山奥の如く真っ白になった訓練場に、ファイエルの楽しそうな高笑いが響き渡った。


「ハハハハハッ!!!やるじゃねぇかっ!ガキッ!さぁ、次はどうするっ!?もっと俺を楽しませろっ!」


水煙を振り払うように燃える剣を一閃するファイエル。


だが……残念ながらこれでもう勝敗は決まったんだなー。

俺はちゃんとアドバイスしたんだけどね。「ジョウの精霊魔法はあらゆる水を操る」と。

これで『考える』という事の大切さを知ってもらいたいものだ。


「水の鎖っ!」

「お、おおおっ!?」


視界不良の訓練場に響くジョウの声と驚き戸惑ったファイエルの声。

それとともに視界を妨げる水煙は、何かに吸い寄せられるように一気に消えていき、ようやくジョウとファイエルの姿が露になる。


と、ファイエルの手足には水で出来た縄のような物が絡みつき、その動きを制していた。

その瞬間、俺は手を上げて高らかに宣言する。


「そこまでっ!勝者っ!ジョウッ!」


一瞬の静寂。だが、次の瞬間……


『おおおおおおおおおっ!!!』


訓練場は大きな歓声に包まれていた。


シャールは顔を上気させて小さく拳を握り、トッシュは「さすがだぜっ!ジョウッ!」と恒例の台詞を放つ。

サラとエミリーは抱き合って喜びを爆発させ、アイシェは愕然としながら顔を白くさせていた。

……いや、白いのは元からか……


しかし、当然の如くファイエルは納得していなかった。

それは周りが見えていない何よりの証拠なのだが。


「おいっ!?ふざけんなっ!まだ終わってねぇぞっ!」


叫びながら、ファイエルはあらん限りの力を込めて拘束を引きちぎろうとしている。

数秒もあれば、スキルを全力で使えば、拘束は解けるだろう。

だが、現状はそのわずかな時間すら許さないのだ。


「ファイエル、周りをよく見てみろ」

「あぁ!?周りだぁ!?……っ!?」


俺に言われ、怒り顔で周囲を見回したファイエルは、そこで言葉に詰まった。

彼の周りにはピンポン球サイズの水弾が数十発程浮かんでいたのだ。

彼の体を拘束する水の鎖と同じく、漂っていた水煙を圧縮したものである。


「その全てが、全力ならお前の体に風穴開けるくらいの威力があるぞ。それでもまだ負けてないって言えるのか?」

「くっ……!」

「俺は言ったよな?ジョウは「あらゆる水を操る」って。水煙だって『水』だろうが?最初の一発は躱して、間合いを詰めるべきだったな。ジョウを舐めて、俺の言葉の意味を考えなかったお前の負けだよ」


彼にそう告げてから、俺は振り返ってジョウに笑顔と立てた親指を見せた。

半ば放心状態だったジョウは、それで徐々に顔を輝かせていく。


文句ナシでジョウの完全勝利だった。



「おい、ガキ」


トッシュ達に囲まれて讃えられるジョウのそばにファイエルが近づく。

その光景にシャールが慌てて駆け寄ろうとするが、俺はそんな彼女の肩を掴んで止めた。


「パ、パウロッ!?何を……!?」

「まぁまぁ、大丈夫だって。アイツの性格なら」


勝負が終われば、ジョウはいつものジョウだ。

ビクビクしながらファイエルを見ていて、そんな彼の周りでは皆が怯えと警戒の色を浮かべている。


が、次の瞬間、ファイエルは歯を見せてニカッ!と笑っていた。

まぁ、まるで猛獣の笑顔のようではあったが。


「いや、ジョウ。お前、やるじゃねぇか。負けだ、負け。俺の完敗だ」

「えっ!?えっ!?そ、その……ありがとうござ……わわわっ!?」


突然の事に目を白黒させていたジョウの頭を掴み、ファイエルは高笑いしながらグワングワンとその頭を揺らす。

その様子に、俺以外の全員が唖然となっていた。


ファイエルは『弱い者はとことん見下すが、強い者はとことん認める』という両極端な男だ。

良く言えばサッパリした性格とも言える。


今の勝負で彼は、ジョウの実力をちゃんと認めてくれたのだろう。新たな強敵の出現は、戦闘種族の如き彼にとって喜ぶべき事なのだ。


「またやろうぜ?な?」

「は、はい!」


楽しそうに笑うファイエルと、若干及び腰ながらもまた少し凛々しくなったようなジョウ。

そんな二人の様子に、仲間達の雰囲気は一気に和らいでいた。

ただし、それは『一人を除いて』だったが……


「ちょっとっ!次はウチと勝負しなさいっ!」

「えっ!?」

「お、おい、アイシェ……」


怒りからか、肩を震わせながらアイシェがジョウを指差す。

そんな妹に、ファイエルはジョウの肩に腕を回した格好で眉を歪めていた。


多分だが、冷えた頭でジョウの実力をキチンと理解した彼は気がついていたのだろう。そんなの「勝負にもならない」と。

うんうん、良き(かな)良き(かな)


「ど、どうしますか?」

「ま、別にいいんじゃない?それで本人が納得出来るなら。あ、そうだ。俺、ちょっとタオル取ってくるよ」


ふと良い事を思いつき、困り顔でこちらを見上げてくるシャールに笑い掛けてから、俺は手をヒラヒラ振って歩き出す。


この際だから、改善出来る所はまとめて改善してしまいましょうか。

これは、キエルとオーリにお願いするとしよう。


グリグリと擦りつけられる頭は俺の『鴆』尾みぞおち辺りにあった。


(ちん)

それは、猛毒を持つという伝説の怪鳥っ!

( 「`・ω・´)「


昔この名前の時代モノ漫画があって、好きでしたなぁ。

『みぞおち』は『(はと)』の『尾』ですねー。


はい、くるぐつさん、開始二分で正解でーす。

まだカップ麺出来てませんけど?

くるぐつさんに鴆の毒が届きますよーに(呪)

( 悪´∀`)


今回の誤字部分は食べ物にも関係する文字でーす。


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― 新着の感想 ―
[良い点] >良き哉善き哉 お~ これは仕込みには珍しく普通に誤字る案件で非常に良いと思いました(笑) 勉強になりました( ・∇・) [一言] >早朝出勤 が基本なので真っ当な職に就きたい今日この頃の…
[一言] ちなみに確認したところ、「なめる」という表現は「無礼(なめ)」という言葉が変化してできたとのことで、厳密には「舐める」も「嘗める」も当て字のようですね。まあ今となっては、「無礼る」と書いても…
[気になる点] まさかとは思いますが…… ×良き哉良き哉 ○善き哉善き哉 ではないですよね? ネットでざっと見たところ、漢字の表記としては「善き哉」が多く、「良き哉」はあまり見つけられませんでした…
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