Sランク冒険者達の帰還
ジョウ達が持ち家をゲットした。
これにより、俺はこの次にどんなイベントが起きるのかをハッキリと思い出せていたのだが……
さぁ、どうなるかなー?
想定出来るパターンは可能な限り想定してはみたんだけど……
これは、原作通りに進まない事が確定しているイベントだった。
◎
「よう、パウロ。変わりねぇか?」
「おう、おかえり。変わりは……あったりなかったりだな」
ジョウ達の引っ越しが済んだ数日後。
ついに帰ってきた《輝く翼》の主要メンバーの一人、ファイエルと、俺は手を打ち合わせた。
実際は「はじめまして」だけどなー。
『ファイエル=グランザード』23歳。Sランク冒険者で、《爆炎魔人》という何からツッコめばいいのか分からない二つ名を持っている。
燃えるような緋色の髪と瞳を持ち、見るからに攻撃的な面構え。
性格は言わずもがな見たまんまで、拠点内にはピリピリとした空気が漂っていた。
設定的に『パウロ』と被らないようにするためだろう。纏う鎧は漆黒の全身鎧で、幅広の大剣を背負っている。
そんな男だ。
そして、彼とは別の意味でメンドクサイのがもう一人……
「ただいまっ!パウロッ!会いたかった!」
「おうっ!?」
「わっ!あ、あははー……おかえり、アイシェ」
突き飛ばすようにファイエルを押しのけて俺に抱きついてきたのは、小柄な女の子だ。
『アイシェ=グランザード』20歳。グランザードの名から分かるように、ファイエルの妹である。
天才と称される魔術士で、Sランク冒険者。《氷雪姫》という、雪道に強そうな二つ名を持っている。
夏の青空のように青く長い髪を宝石のついたバレッタで束ね、身に纏う衣装は複数の色鮮やかな布を重ねたような、インドの『サリー』のようなもの。
身長はジョウといい勝負なくらいで、グリグリと擦りつけられる頭は俺の鴆尾辺りにあった。
アイシェは元々「パウロLOVE」な女の子だ。だから今のムーブも原作通り。
だが、『パウロ』は彼女をまるで相手にしていなかった。
その理由は……
「ホントに会いたかったよ、パウロ」
そう言いながらこちらを見上げた彼女の顔は、仮面の如き厚化粧に覆われていた。
それはもはや、デー〇ン閣下かア〇ュラ男爵(右半身)か、といった風貌だ。
多分、素の顔立ちは悪くないはずなんだけどなー。ナチュラルメイクにしとけばいいのに。
さて……ここまでは問題ない。そして、『本来ならば』ここからも問題は起きない。
この、『ざまぁ勇者』サイドの仲間帰還イベントが平穏無事に終わらないと判断したのは、当然ながらジョウがこの場にいるからだった。
「ちょっとっ!ダーリンから離れなさいよっ!」
「はっ!?ち、ちょっ……なにっ!?この小っさいの!?それに何よ!?ダーリンって!?」
「まぁそうなるよなー……」
飛んできたディーネがアイシェの服を掴んで、俺から彼女を引き離そうと引っ張る。
そんなディーネに驚いて、アイシェは俺から離れてくれた。
と、そこにシャールとジョウがやって来る。
「ダメだよ!ディーネ!戻って!」
「むぅぅぅ……気安くダーリンに近づかないでよねっ!」
マスターの命令に従い、というか多分俺との約束に従って、ディーネは俺の右肩に乗る。
その様子に困ったような笑みを浮かべながら、シャールは帰ってきた二人の仲間に労いの言葉を投げた。
「お疲れ様でした、ファイエル、アイシェ。二人とも無事で良かったです」
「よう、シャール。随分としおらしいこと言ってくれるじゃねぇか」
皮肉っぽく口の端を歪め、ファイエルは片手を上げて応える。が、すぐにその笑みを消すと、彼はジョウをギロリと睨んだ。
その圧力にジョウはビクッと身を震わせる。
これまた、こうなるよなー……
と、俺は想定通りの事態に息を吐く。
しかし、アイシェの方の反応は正直想定外も想定外だった。
「ちょっと!シャール!街で聞いたわよっ!なんでアンタがパウロにお姫様抱っこされてるのよっ!?」
「はっ?」
「なっ!?」
化粧顔を怒りに歪ませてシャールをズビシッ!と指差すと、アイシェはジョウを押しのけるようにシャールに近づく。
そして腰に手を当てて、頭一つ分程高い位置にあるシャールの赤い顔を睨み上げた。
「アンタ!パウロに興味なかったんじゃないのっ!?それが、パウロにお姫様抱っこされて恋する乙女みたいな顔してたって……!」
「だ、だだだ誰がそんなことをっ!?」
「街の入り口で衛兵達がニヤニヤ笑いながら教えてくれたのよっ!それに!最近しょっちゅう二人で街の外に出てるって!」
拠点内がザワザワする中、シャールは顔を真っ赤にして後ずさる。
「しまった……」と顔に手を当てるが、もう遅かった。
《輝く翼》で起きた一大スキャンダルだ。久し振りに帰ってきた《輝く翼》所属の有名冒険者には、当然話もするだろう。
そして……無名だからこそ今までこの話を聞かされていなかった子達まで、この話をついに知ってしまった……
せっかくパーティー内ではタブーな話にしていたのに……
「……ねえ?ダーリン?どゆこと……?」
「い、いや……ディーネが考えてるような色っぽい話ではなくてだな……」
右頬をチリチリと焼く気配に、そちら側が見られない。
後頭部をチクチク刺す気配にチラリと振り返ると、離れた所でトッシュと一緒にいるサラとエミリーも不満げに頬を膨らませていた。
再燃してしまったか、この『お姫様抱っこ事件』を知っているはずの女の子メンバー達も……
流石にここまで頭は回らんて……想定出来てたとしてもどうしようもなかっただろうけど……
これから面倒な案件が控えているというのに、俺はまずこの事態の沈静化から始めなければいけなくなっていた。
つーか、本題よりこっちの方がメンドクサイ案件な気がするが……
◎
例の『お姫様抱っこ事件』は、パニクった俺が道案内役になってくれたシャールを抱え上げてしまっただけ。他に理由はない。
これは事実だ。
街の外に二人で出ているのは、俺が稽古してる所を見られたくないから。負けると恥ずかしいからな!
という言い訳でゴリ押し。
最後に半ばヤケクソで「希望者は後で全員お姫様抱っこしたらぁっ!!!」と言うことで、事態はなんとか沈静した。
厨房のオバチャンもパートの奥様も、全員お姫様抱っこしたらぁっ!!!
「まぁ、なんだ。お前も大変だな」
「……そーなんすよ……」
丸テーブルの真正面。
頭の後ろで手を組んで座るファイエルの言葉に、疲れ果てた俺は力なく頷く。
俺の右隣にはまだ赤い顔を下に向けるシャールが、左隣にはそんなシャールと少し離れたテーブルにいるジョウ……の頭の上に移動してもらったディーネとを交互に睨みつけるアイシェが座っていた。
本来なら、この話はほんのちょっとのやり取りで終わる話だ。こんなにゴチャゴチャする話ではない。
ジョウを追放した事を知ったファイエルとアイシェが「せいせいした」的な事を言って、パウロがゲラゲラ笑い、シャールが不機嫌な様子で外に出ていく。
というだけの話だ。
だが、今の世界線ではジョウは追放されておらず、さらにはいるはずのない仲間も増えている。
ファイエルとアイシェがどんな反応を見せるかなど火を見るより明らかだった。
「ところで……なんであのガキがまだ《輝く翼》に居やがるんだ?それに、見たことねぇガキも増えてるみたいだしよ?」
「そ、そうよ!何かおかしいと思ったら……追放するんじゃなかったの!?」
ディーネとシャールのせいですっかり忘れてしまっていたのか、兄の言葉にハッとなったアイシェはテーブルを叩いて立ち上がる。
鋭い視線と甲高い声に、ジョウ達はビクリと肩を揺らしていた。
あまりにも思った通りの動きに、俺はつい小さく笑ってしまう。
これならばこの先の展開も読み通りだろう、と。
軽く肩をすくめ、俺は望む未来への誘導を開始する。
「事情が変わってな。追放するのはヤメにしたんだよ」
「あ?なんでだよ?アイツはEランクの雑魚だから追放するって話だったろうが?」
「だから、そうじゃなくなったんだよ。ジョウとあの三人、トッシュ、サラ、エミリーは、つい先日Cランクに昇格したぞ。一ヶ月足らずでEからCへのランクアップは、お前ら並みのハイペースだろ?」
「は?」
この事実に、アイシェは唖然としながらジョウ達の方を向いた。声こそ出していないもののファイエルも同様に。
ちなみに、天才型のシャールは一ヶ月でEランクからAランクに。
努力型のパウロはCランクになるまで半年以上かかったらしいが、それでもなかなかの成績で、これによって《英雄への階》の成長が加速してからはSランクまであっという間だったそうだ。
さらにここで、気を取り直したシャールがわざと彼らを煽る。俺との打ち合わせ通りに。
「偶然遭遇してしまった相手ですが、ジョウくんはAランク相当の魔獣も撃破しました。それも無傷で。実際の実力は、すでにCランクでは収まらないものでしょうね」
「もしかしたら俺やお前より強いかもな」
「はっはっ!」と笑いながらトドメに煽ると、案の定ファイエルの気配は燃え上がっていた。
いやー、扱いやすい奴っちゃなー(笑)
「……おもしれぇ……どれほどのモンか、確かめてやろうじゃねぇか」
「え、ええっ!?」
「ち、ちょっと!?お兄っ!?」
ユラリと立ち上がり、烈火の如き殺気を飛ばすファイエルに、ジョウとアイシェは目を白黒させていた。
この流れは俺の想定通りだが、実はジョウには何も伝えていないのだ。
事前に話すと、ジョウは尻込みしちゃうだろうからね。
「……本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。心配いらないよ」
俺に協力してくれながらも心配そうにするシャールと違って、俺の方は楽観的なものだった。
何故ならば、俺はジョウの力もファイエルの性格も、どちらも正確に把握しているのだから。
さぁ、ジョウ。自分の居場所と新たな自信を、自分の力で勝ち取れ!
『飛ぶ鳥、跡を濁さず』
「サブタイに誤字は入れまい」
「サブタイだから言い回しをイジってるのか?」
「こんな目立つ場所に誤字は入れんだろう」
そんなココロのスキマを突く奇策っ!
正解は『立つ鳥、跡を濁さず』だっ!今回は勝ったなっ!
……とか思ってたらアッサリ突っ込まれるは、「飛ぶ鳥でもいいんやで?」とか言われるわ……
( ´・ω・`) あるぇー?
はい、ゴエモンさん、お見事でーす♪
腹筋しますた。
今回は伝説のホニャララを誤字にして混ぜこんでやったぜっ!




