読者によるギルド改革
レクシオン冒険者ギルドの現ギルドマスター『コビー=ヘーツラ』は、見るからに頼りない男だった。
黒髪七三分け、眼鏡、さらには吹けば倒れそうな程に細い体。
性格にも難があり、弱い立場の者にはネチネチと嫌味っぽく、強い立場の者にはヘコヘコと腰を折る。
そんな『クサレ中間管理職』みたいなオッサンだ。
こんなんギルマスにしたらアカンやろ?
「えー、では、報告は以上になります」
ハンカチで汗を拭き拭き、コビーは話を終える。
その内容は案の定、大した事がないものだった。
上位パーティーはしゅごい。下位パーティーはもっと頑張れ。あと、最近こんな魔獣出るらしいよ。
そんな話だ。
もうね、回覧板でも回せばいいんじゃない?その程度の内容なら。
コビーの隣に控えているリルルもリルルだ。
秘書っぽく書類の束を抱いて立っていたが、結局その書類?は謎のまま、一言も喋らないままで話は終わってしまった。
これが、作者の脳内にある『会議』の姿というわけだ。
まぁ俺もまともな会議なんてほとんど経験ないから、あまり作者をとやかく言えないけど。
「さて、それでは、今回の会議はこれで……」
今回も何事もなく会議ごっこは進み、コビーは笑顔で締めの挨拶に入る。
だが……残念!そうは問屋が卸しませんよっ!
彼の笑顔は、俺の挙手によって凍りつく事になった。
「すみません、少しいいですか?」
「はっ、はいっ!?」
締めの挨拶に割り込み、立ち上がると、コビーだけでなくあちらこちらから驚きの声が上がる。左隣に並んで座るバレルとラインズも唖然とした顔で俺を見ていた。
「な、な、なんでしょうかっ!?パウロ様!?」
「ギルドマスターまで冒険者を『様』付けとか……まぁいいか……皆、申し訳ないけど、もう少し付き合ってもらえるかな?俺から提案があるんだ」
弱腰ギルマスの対応に苦笑しつつ、鞄の中から紙の束を取り出す。
そして、リーダー達の困惑の視線を全身に浴びながら、コビー達の所へ、皆の前へ歩み出た。
「リルルさん、悪いけど、ちょっと手伝ってもらっていい?これを皆に配って欲しいんだけど」
「は、はいっ!」
ギルマスに代わって仕事を与えるべく、リルルに俺が持参した書類を手渡す。
そうしてから俺は皆に笑いかけた。
さぁ、プレゼン(笑)を始めましょうか。
◎
「えーと、いきなりで混乱してると思うけど、まずは俺の話を聞いて欲しい」
コビーがいた教壇のような場所を借りて、俺はゆっくりと皆に語りかける。
俺が準備し、リルルに配ってもらったのは、俺達が「おかしいやろ?」とツッコミを入れていた『冒険者ギルドのおかしな点について』を記した資料だ。
コピー機やコピー魔法が存在しないため、全て手書きです。
手伝ってくれたキエルとオーリには感謝だ。
資料と俺とを交互に見ながら、列席するリーダー達は呆然となっている。
そんな彼らの姿を眺めながら俺は本題を切り出した。
「今配った資料にも書かれてると思うが、俺はこの間……んんっ!い、以前からパーティーの、そして冒険者個人の評価基準に疑問があったんだ。まぁ、簡単に言うと「支援系が冷遇され過ぎじゃない?」って事だな」
「え、ええ……?」
どこからともなく戸惑いの声が上がる。
まぁそりゃそうだろう。
本来のパウロは、「支援系なんてカス」と公言するくらいの戦闘系至上主義者なんだから。
だから、あえて無視して話を続ける。
「例えば……危険地帯でレア素材を採集するって依頼で、これを達成した場合の評価は、戦闘系八割の支援系二割、ってトコだな。だけど考えてみて欲しい。探索が得意なヤツがいないと、無駄に長く危険地帯に留まる事になるんじゃないか?」
「……まぁ、その通りだな……」
俺の言葉にバレルが頷いてくれる。
「サンキュー」と彼に笑いかけ、俺はさらに例を挙げた。
「誰かが誘拐されたりした時もそうだ。被害者を素早く、無事に救出するためには、短時間で被害者の居所を特定して正確な敵の配置を把握する必要がある。これは戦闘系には難しい事だろ?」
「そうですね。無闇に突入しては要救助者を危険にさらす事になりますし……」
今度はラインズが合いの手を入れてくれる。
ホント助かるわぁ。つか、キミらなんであのパウロと仲良くツルんでたの?
これで室内の様子はかなり変わってきた。
ザワザワしているが、全員真剣に俺の話を聞き、それぞれが真剣に考えてくれているのが雰囲気で伝わってくる。
その空気を逃さず、俺はこの話の核心部分に触れた。
「そこで提案なんだけど、戦闘系と支援系で評価を分けてみないか?世界基準があるから、あくまでこのレクシオンギルドだけでの試験的な、局地的なものになるけど」
「評価を分ける?」
誰のものか分からない声。その声がした方を向き、頷いてみせる。
「そう。『戦闘系のAランク』とか『支援系のAランク』みたいに。ああ、いっそ個人個人の能力を分析して、まとめてもいいかな?AAランク、みたいに」
「AAランク……」
「なんか……いいな、それ」
そういやコイツら、二つ名みたいな厨二っぽいものが大好きな連中だったな。
恐らく「SSランク!」みたいな英雄像を想像してソワソワしちゃったのだろう。
どうも俺の提案はあちこちで好評価を得ているようだった。
「さて、もう一押し」と、俺はパンッと手を叩く。と、皆はすぐ静かになって俺の方を向いてくれた。
なんか……教師にでもなった気分だ(笑)
「もちろんさ、戦闘系の人間が支援系を下に見たくなる気持ちも分からないでもないんだよ。矢面に立って危険な目に遭うのは戦闘系の人間なわけで。だけど、優秀なサポートがあれば危険な目に遭う確率が下がる、ってのは理解して欲しいんだ」
『パウロ』のカか、彼らがめっちゃ素直なのか、リーダー集団は真摯な目でこちらを見て話を聞いてくれている。
思わず苦笑いが出そうになったくらいだ。
ごめんなー、先生方。
中学、高校の頃の俺達バカ生徒がコイツらみたいに聞き分け良かったら、先生方も苦労しなかったんだろうなー。
「パーティーなんて、どうしても気の合う奴らで固まっちゃうから、小規模パーティーだと全員戦闘系とか、全員支援系とかになるだろ?そういう所は、お互いを尊重出来たらパーティーの垣根を越えて協力しあったり出来るんじゃないか?」
『ええっ!?』
皆が驚きの声を上げたのは、俺の提言がこの世界の人間からしたら信じられないものだったからだろう。
この物語に出てくるパーティー同士の関係は、基本『蹴落とし合い』だ。
だけど……そんなの不毛じゃない?
競争相手を下に追いやる事で相対的に自分が高い位置にいると実感するなんて、端から見たら滑稽な限りだ。
そんな思いから、俺は静かに手を合わせた。
「『競い合う』と『助け合う』は、共存出来ない事ではないよ。『いがみ合う』と『助け合う』は共存出来ないけどね。『誰か』より高い所へ行きたいってんならさ、その『誰か』を下に落とすんじゃなく上に引き上げて、「俺はさらにその上に行ってやる」って方が格好いいんじゃないか?」
「ハハッ!言うじゃねぇか!パウロッ!」
真っ先に乗ってきたのはバレルだ。流石は熱血漢(笑)
これで彼が「これからは対立じゃなく協力しようぜ!」とか言ってくれれば、今後パーティー間の交流もスムーズになってくるだろう。
そう思ってたのだが、立ち上がったバレルは背後の席に座る下位パーティーのリーダー達に向かって吼えていた。
「テメーらっ!つまんねぇ小競り合いばかりしてんじゃねぇぞっ!どうせやんなら、俺らの首狙ってみろやっ!」
「……はい?」
おや?何を血迷ってらっしゃるんでしょうか?
何やら思ってたのと違う発言に、俺は小首を傾げる。
だが、煽られたリーダー達の目はギラギラと輝きはじめていた。
いや、ちげーから。困った時は助け合う体制作ろ、って話だから。
と、そこで今度はラインズがため息混じりに立ち上がる。
よし、言ったれ言ったれ。「そうじゃないでしょう?」とか言ったれ。
が、しかし……コイツもやはり脳筋だった……
「確かに、最近少々刺激がないと思っていたんですよね。もうトップスリーのパーティーだけでいいんじゃないか、と。ふふ、楽しくなるといいんですが。ガッカリさせないでくださいね」
「お前もかーい……」
これが決定打だった。
作中でもトップスリーの足下にすら及ばず、モブどころか背景と化していたパーティーのリーダー達が一斉に立ち上がって雄叫びを上げる。
想定外のその光景に、俺はガックリと肩を落としていた。
……まぁ、原作で見たような醜い争いがなくなるだけ良し、か……
そう割り切って、俺は完全に空気と化していたコビーとリルルに笑いかけた。
「まー、そのー……さっきの話、是非ご一考願います」
『……は、はい……』
二人の返事は狂乱の騒ぎに邪魔されて、ほとんど聞こえなかった。
キョトンとしてるだけで言葉の意味を「追及」するつもりはなさそうだから、まぁいっか。
追及→どこまでも追い詰める
追求→あらゆる手段を尽くして手に入れる
追究→突き詰めて明らかにする
というわけで、この場面では「追究」が適当かと思います。
はい、とゆーわけで……くるぐつさん……正……解……です……ぐぎぎ……
……お金出すんで誰かくるぐつさんの目を突いてきてくれません?プリッと。
( ´・ω・`)つ⑩
……もはや形振りなど構ってられない……
今回は誤字です。はいはい、誤字誤字。




