魔神の片鱗
声の方向を確認すると、二人組の大男。
見た感じ獣と人間のハーフだろう。
な、なんですか? 少し足が震える黒羽。
この世界に来て初めての人、あんなことのすぐあとで恐怖が甦った。
(あの現代と同じ誰も助けてはくれない……)
てめぇ転生者だな?悪りぃが金になってもらうぜ
にしてもラッキーだなぁエルフときたぜ!!
やっちまいましょう!アニキ!
(転生者?私のこと、だよね)
(それに、金になる?まさか、人身売買か……)
(黒羽!大丈夫ぅ落ち着いてぇ)と
再びあの声
(でもどうすれば……)
(あいつらぁ力は強くてもぉ足は遅いからあなたの走力で町に逃げるのが一番だと思うわぁ町に行けばいくらでもいる冒険者に助けてもらいなさぁい)
は、はい!とにかく逃げなきゃ!
さぁてと、傷ものにならねえように、やってやるかぁ!
いきましょ!アニキィ!!
おうよぉ!!金だぁ金ぇ!!!
―――ドスドスドスドス―――
とこちらに向かってくる!
(そんな!早い!!
あんな大男に立ち向かえばあっという間に負けるのがオチ。それに、武器も持っているし、何よりも相手は二人組……)
っ!!反射的に目を瞑った。
(黒羽!!)
バキィーーーンと金属音が森に響き渡る。
ナッナニィ?くそったれぇ がぁ!
ギャァ グワァ!! 痛ぇ!!!
目を開けるとそこには腕が一回転したおかしなフィギュアみたいになった状態の二人組だった。
二人とも一斉に叫び出し、倒れ込む。
え!!……う、嘘……何がどうなって、
その不気味な光景に困惑する。
(黒羽!無事でよかったぁ。とにかくそこにあるおバカさんたちの拘束縄を使って二人を縛りなさぁい)
は、はい!
抵抗できないようにギュっと固く絞めた。
(そのまま町に行って大きい看板の建物に入って応援を呼びなさぁい。あそこならぁ何とかしてくれるからぁ)
(了解です!)
声の主は一旦語りを辞め、黒羽について考察する。
黒羽がもたらした能力……憎悪と拒絶。
あの子、あの能力、五人目の魔神かしらぁ?
直接会って確かめるしかないわねぇ。