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第八章 遺伝子組み換え式キャラクターメイキング

「えー、本日の予定は、数土先生による第一回『小説の書き方講座』です。先生、ホワイトボードの準備はできています。どうぞ」



「……はぁ。まさか教員生活の中で、こんな秘密を握られて脅される羽目になるとはね。いい? 一度しか言わないから、しっかり聞きなさいよ」



「宜しくお願いします、数土先生。我々がまず最初に知るべき、小説の基本は何ですか?」



「まず、あんたたちに決定的に足りていないのは『キャラクターの変化』よ!」



「キャラクターの、変化……?」



「そうよ! 小説の本質っていうのはね、全然ちがうタイプの二人が出会って、お互いに影響し合って心が動いていくプロセスのことなの! 生物学で言うなら、二つの細胞がくっついて新しい反応が起きるようなものよ!」



「なるほど……。全然ちがうタイプの二人。建築で言えば、縦の重さを支える『柱』と、横の揺れを逃がす『梁』が組み合わさるようなものか!」



「……フッ、それは哲学における『自分』と『他人』のぶつかり合いだな。対立する二人が、物語という部屋の中で激しく衝突し、お互いを理解していく過程こそが、キャラクターの変化の正体というわけか。深いな」



「情報学科の解釈としては、変なデータが入力されたことで、AIがエラーを起こして学習モードに入る状態と定義できます。非常に分かりやすいです」



「ビジネス的にも納得です。単体では売れない商品キャラクターが、ライバルとの激しいコラボを経て、価値を爆発させていく相乗効果ですね」



「ちょっと待って、なんで全員が自分の学科の言葉に翻訳して納得してんのよ!? でもまあ……うん、だいたい合ってるから怖いわ。特に情報学科の『バグって学習モードに入る』って表現、なんかちょっと萌えるじゃない……」



「数土先生、話がソレています。講義を次のステップへ進めてください」



「あ、コホン! ……じゃあ具体的に言うわよ。魅力的なキャラクターを作るには、遺伝子レベルで強い『ギャップ』を組み込むの。例えば、普段は頭が良くて完璧なのに、好きな人

の前でのみ、急に弱くなっちゃう『ツンデレ属性』とかね」



「ギャップ……! あえて建物の一部に弱いあそびを作ることで、全体のバランスを保つ高度な設計ですね!」



「そして、その二人が、放課後の実験室っていう狭い場所に閉じ込められた時、エネルギーが爆発するほどの『感情のドッキング』が発生するのよ!」



「エネルギーの爆発……。それによって、読んでる奴の心をグッと引き込む基礎工事……。これだ、俺が求めていた文章のイメージはこれだ!」



「……先生。我々の目の前を覆っていた霧が、いま完全に晴れた気がする。命の結びつきと、小説のテーマは、やはり根底で繋がっていたんだな」



「設定の方向性が完全に定まりました。数土先生のやり方をシステムに組み込めば、次回の小説は、面白いものが作れる確率が大幅にアップします」



「素晴らしい授業です、先生。この『ギャップ盛りだくさんのプロット』なら、確実にヒットして儲かる、最強の試作品が作れますよ!」



「ちょっと、あんたたち、急に目の色変えて原稿用紙とキーボードに向かい始めないでよ! ――って、もう私の話聞いてないし! 建築学科はパソコンを閉じてペンを握りしめてるし、普通科はなんかブツブツ言いながらノートに凄い勢いで文字を書き殴ってるし!」



「「「「うおおおおお!(執筆開始)」」」」



「……あーあ。私の秘密の知識が、バグだらけの四人の脳みそを変に変形させちゃったみたい。……これ、本当にちゃんとした『文学部』の小説が完成するのかしら……」


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