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その50 《武器作成》

 《武器作成(下級)》か。

 ほとんど聞くまでもないが、……とりあえず、その効果を確認しておく。


――《武器作成(下級)》は、魔力の消費により初歩的な武器のクラフトが可能になるスキルです。


「……ふむ」


 武器クラフト。

 具体的にどういうものだろう?


「とりあえず、それを」


――では、スキル効果を反映します。


 そして早速、口に出して「じゃ、試してみよう」と呟く。

 それに応えるように、再びアリスの声が続いた。


――では、武器を作成します。

――1、近接武器

――2、遠距離武器

――3、その他消耗品


 ジャンルごとに分類されているのか。

 こりゃ多分、メモが必要な奴だな。

 僕は板チョコレートをひとかじりして、


「とりあえず、近接武器から」


――では、作成する武器を選んでください。

――1、棍棒 消費MP:5

――2、石のナイフ 消費MP:10

――3、石の手斧 消費MP:15

――4、青銅のナイフ 消費MP:25

――5、青銅の斧 消費MP:30

――6、青銅の槍 消費MP:30


 と、初歩的……というよりはむしろ、原始的な武器の名前が続く。

 たぶん、その辺の町工場のおじさんの方がよっぽど強い武器を作れそうだな。


「ところでこの……消費MPってなんだ?」


 虚空に向かって問いかけるが、返答はなし。

 どうやら、何らかの方法で調べるしかないらしい。

 一応、これまでに一度、MPなるものを見たことはある。

 たしか豪姫のステータスをチェックしたときに、HPやMPの表示があったはずだ。

 たぶんその”MP”とやら、僕自身にも設定されているのだろう。

 で、それを消費して武器を作る、と。


「自分のMPを参照したいのだが、それはできないのか?」


 これにも返答なし。

 アリスの声はわりとフレキシブルに反応してくれるので、たぶんこれでダメなら、何をやっても調べられないのだろう。


「つまり、自分の身体を使って調べるしかない訳か」


 個人的に、この《武器作成》にはかなりの将来性を見いだしている。

 多分だがこれ、強化していけば最終的には銃火器の作成も可能になるのではないか。もし、銃火器を自由に作り出すことができれば、市内の”ゾンビ”掃討も不可能ではない。


 ただ、――問題は今、わけのわからん女子高生どもに喧嘩を売られていること。

 将来的に有用な能力であっても、今すぐに彼女たちの撃退に役立たないのであれば意味がなかった。


「とりあえず一つ、……棍棒を作ってみるか」


 するとご丁寧にも、


――棍棒。

 加工した岩石を除けば、人類が他者を害するために作りだした最初のものである。

 武器としての有用性は非常に高く、太平洋の島々では、ヨーロッパ人によって植民地化を受けるまで棍棒がもっとも普及した武器だったという。

 木製で加工がしやすく、消費MPも少ない。まず初心者はこの武器をクラフトすくることで《武器作成》に慣れよう。


 などと、アリスによる詳細な解説が入った。

 ……これ、わざわざ全ての武器に解説がついているのか?

 いつもこれくらい親切でいてくれたら良かったんだが。


「わかったから、さっさと始めてくれ」


 すると不意に、手のひらから数センチほど離れた位置に、土塊のようなものが浮いていることに気付く。


「……なんだこれ」


 首を傾げて、ふよふよと手の上に浮かぶそれを弄んでみたり。

 そのうち、「こうか」と思って、両の手を合わせるようにしてみる、と。


「――おおッ!?」


 かちゃかちゃかちゃと音を立て、両手の間に棒状の物が作り出されていく。

 それは、以前ネットニュースで見かけたことがある3Dプリンター……の、超高速版、といった感じのもので、見る見るうちに棍棒が組み上がっていくのだった。

 同時に、頭の中におおよその設計図が入り込んでくる感じがある。頭の中の設計図は、感覚的にその形状を弄くり回すことができて、柄の部分を細くしたり、先の部分を太くしたりと、おおよそのデザインを弄くることができるらしい。

 ただしその脳内デザインは、可能な限り素早く行わなければならないようだった。あれこれ考え込んでいる今も、棍棒は自動的にその形を完成させていく。


「なるほど。……これは中々、練習が必要なやつだな……っ」


 出来上がったのは、先端部ばかりが妙に太い、全長1メートル半ほどのヘンテコな棒である。

 試しに持ち上げてみようとするが、とても僕の細腕では振り回せそうにない。


「遊び人には、棍棒が装備できない、か」


 自嘲気味に呟くと同時に、ちょっとだけ腹が減った……ような気がした。


――腹具合から察するに、いまのMP消費は……トースト一枚分、スナック菓子一袋分くらいか?


 この辺、基準になる数字がわからないのが辛いところだな。

 いずれにせよ、仲間の”ゾンビ”を死なせた時ほど明確な消費でないことは確かだ。

 とはいえ、棍棒程度でこのMP消費なのであれば、拳銃などになるとどうなるのだろう。


「……ううむ」


 残されたスキルポイントは、3つ。

 《武器作成(上級)》まで取れば銃が手に入ると仮定して、その場合に必要なスキルポイントは2、か。


――弱ったな。


 その辺、どうすべきかは、……とりあえず安定の《死人操作》を強化してからにした方が良いかも知れない。

 そう考えながらPC前に戻ると……、


『兄貴、……兄貴ーッ! あにじゃー! きてくれーっ!』


 と、ずいぶん騒がしい、弟の声が聞こえていた。


「…………?」


 首を傾げて、椅子に座る。

 集合時間にはまだまだ先だったはずだが。


 というか、夜中にこんな大声を上げてしまったら、みんなが起きてしまうじゃないか。

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