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カトレア先生のお気に入り

 そして、スミレちゃんが戻って来たので二階の教室に戻ることにした。

 二階の教室に戻って来ると、教室から寝息が聞こえてきた。

 この寝息は、ライオン獣人のルビナス君だろう。

 スミレちゃんが、入口の扉を静かに開ける。

 すると、入口近くにルビナス君が寝息を立てていた。

 仰向けになって寝ている姿が、まるでだらしなくお腹を出して寝ている大きな猫のように見えた。



「リリーちゃん、皆寝てるね」

「うん……」



 俺は背伸びをして、思わずルビナス君の鬣を触ると「グルルルル」とまるで子ライオンの様な高い声音が発せられた。

 もしかすると、子供の頃の夢を見ているのかもしれない。



「リリーちゃん、そんなに鬣触っているとルビナス君起きちゃうよ?」

「う、うん」



 サラサラの鬣が、また何とも心地が良かった。

 でも、どちらかというとブルメリアちゃんの方が俺の好みの触り心地である。



「リリーちゃん?」

「ひゃい?」



 スミレちゃんに、襟を捕まれ片手で持ち上げられた。

 どうやら俺は、ブルメリアちゃんの毛触りも確かめようとしていたらしい。

 スミレちゃんに寝ている女の子を触ったら「めっ! です」と言われた。

 幼女モードの俺は、スミレちゃんでも片手の指で持ち上げられるようだ。

 まあ、見た目からして小さいから体重も軽いのだが……。

 実はスミレちゃんから教えられた事で、スキルの習得に際し分かった事があった。

 キーボードLV2のチャット欄を使用して伝えると、恰も自身で体験したかのようにスキルを習得できるらしい。

 そのお陰で、入学試験の時に使用したことがない必殺スキルを使用できたのだろう。

 つまり、言霊のような機能だ。

 更に、チャット欄にある機能で個人チャットに切り替えると、直接伝えたい相手に言霊を伝える事が出来る。

 しかも、相手が寝ていようと俺が寝ていようと言霊として伝えられる。

 ただ欠点として、近くにその相手がいないと言霊として機能しない。

 要するに、キーボードLV2の機能である言霊のお陰で、スミレちゃんはたった一日で俺が教えた全ての勇者スキルを習得したという訳だ。



「スミレちゃん、降ろしてね」

「あっ、リリーちゃんごめんね」



 どうやらスミレちゃんは、俺を持ったままよそ見をしていたようだ。

 スミレちゃんが見ていた窓側を見ると、カトレア先生がリクライニング機能が付いた椅子に気持ち良さそうにお昼寝をしていた。

 深めの椅子なので、横から見るとカトレア先生の二つ大きな膨らみであるあれ(・・)だけが見えている。

 そして、外からの光りが射し……



「御山様だ……」



 そう。俺にはあれ(・・)から射す光りが、有り難い御山様から射す後光に見えたのだ。



「リリーちゃん? 手を合わせてどうしたの?」

「ううん、何でもないよ。あっ、でもシルクの分も……」



 ちっぱい同盟である、シルクの分もお祈りを捧げたのである。

 周りを見ると、皆幸せそうな顔をして眠っている。

 昼食を食べて待っていたが、俺が帰ってこないので眠くなったのだろう。

 確かに、お昼休みの少しの睡眠は良い影響を与えることは知っている。

 しかし、俺が王様達に食事を作ってからかなり時間が経っているはずだ。

 なのに、気持ちよく寝ている。少しというより、寝過ぎだろう。

 俺はカトレア先生を、皆と一緒に起こそうと思ったのだが思い止まった。

 教師が生徒より先に起きて、生徒を起こすのが一般的だと思ったからだ。

 アニメなら体たらくな教師を生徒が起こす場面があり、それはそのキャラがそういう役どころなので良いと思うし、その教師に対して共感をもてる方々もいらっしゃるだろう。

 しかし、カトレア先生をその体たらくな教師キャラとして枠組みをしても良いだろうか? いや、否だ。

 カトレア先生には、威厳ある美人女教師キャラがよく似合う。

 まあ、俺の理想なのだが……。

 左側を見ると、ユグドラシルが首を振って心情を伝えてくる。



『「リリー様、危険です」』

『「ユグちゃん、危険と分かっていてもね? カトレア先生に昼食の時、悪戯しちゃった手前、今回は威厳がある先生でいてほしいの」』



 俺は親切心でカトレア先生を、先に起こすことにした。

 これ絶対に、先生に捕まるパターンだよね。

 予想はできたが、このミッションの成功を祈ろう。

 失敗しても、俺が捕まるだけだからね。



『「ユグもその時は、御一緒致します」』

『「ユグちゃんありがと」』



 俺は念のため、スミレちゃんに距離を取ってもった。



「スミレちゃん、後の事は頼んだからね」

「うん」



 そして覚悟を決め、カトレア先生に近づく。

 そして、『こっそり耳打ち』する。



『カトレア先生、起きてください』



 先生に聞こえる声音で起きてもらおうと、身体を揺すり声をかけると



 シュバッ、ポヨヨン、モムニュン、ギュウー……



 そして、見事にユグドラシルと一種に捕縛された。

 後頭部を両手で掴まれ、抱き寄せられて()()の谷間に追いやられた。



「……」



 俺のミッションは、失敗に終わった。

 それどころか、ユグドラシルの二つの大きすぎる膨らみも押しつけられる。



『「ユグちゃん、肉体を構築している魔力解いて。隙間が無くて、息苦しいよ」』

『「リリー様、すみません」』



 ユグドラシルは、肉体の構築を解いて捕縛から逃れた。

 ユグドラシルだけでも、捕縛から解放されて良かった。



『「ユグちゃん、スミレちゃんの元に行っててね」』

『「はい、リリー様」』



 ユグドラシルは、スミレちゃんの元に行き再び肉体を魔力で形成したようだ。

 俺は、こういう事態に備えて行動をしている。

 そう。スミレちゃんに距離を取ってもらったのだ。

 スミレちゃんは、この国の王女。どんな困難にも立ち向かえる信念をもち、何事にも冷静なはずだ。

 今度こそ、



「ズビレぢゃん、ぼがの生徒だぢをおごず前に先生につがまらない距離で先生だげにぎこえるごえで先生をおごじて。そのあど、わだしをだずげで」



 スミレちゃん、信じているからね。

 では、第二ミッションスタート。

 スミレちゃんの隣にいる、心情を読めるユグドラシルの心情が慌てている風に俺に伝わってきた。あれ? どうしたのかな? 

 俺のミッション失敗に、戸惑ったスミレちゃんが【大声】で叫ぶ。



「はうわぁー! リリーちゃん……【カ・ト・レ・ア先生! お・き・てー!】」

「えっ? 何、何、もぉー何よ? 気持ちが良いのにー」



 スミレちゃんの今の声音で、カトレア先生だけではなく生徒達全員が起きた。

 全てのミッションは、失敗に終わった……。

 ユグドラシルが心情で謝っている。いや、俺の考えがあさはかだっただけだ。

 ユグドラシルは、悪くない。

 俺は気を取り直して、現況に立ち向かう。



「ガドレア先生……」

「えっ? リリーちゃん? あっ、ゴメン……」



 カトレア先生は俺を人形の様に扱い、表を向けて再び抱きなおした。

 頭の上に重く柔らかい()()が乗っているが、さっきよりは全然マシである。

 ……俺はカトレア先生への見解を、下方訂正する。

 やはりカトレア先生は、愛すべき美人教師ではあるが体たらく気味である。

 俺の心情に、気づきもしないカトレア先生が俺を抱いたままスミレちゃんに確認する。



「ねえ、スミレちゃん? 案内して下さった王妃様や王様達は、この後どうされるの?」



 俺はモゾモゾして、()()からの脱出を試みる。

 ……失敗に終わった。再び脱出……失敗。再び……失敗。



「もぉ。リリーちゃん、動くと擽ったいわ」



 カトレア先生の抱きしめる力が、一層強まった。

 カトレア先生の質問に答え、俺の表情を見ていたスミレちゃんが一瞬俺の方を見て合図を送る。

 俺も、ウインクをして合図を送った。

 流石、俺の使徒。天使のような、スミレちゃん。



「お父様は公務の合間で来られていた様で、城に戻られました。カトレア先生、お昼から南の森で実地演習をされるのでしたよね? 準備をしなくて、良いのですか?」



 俺は、スミレちゃんの捕縛脱出作戦(心配り)に感謝しつつ答える。



「カトレア先生、そういう事ばい。皆も起きたけん、降ろしてくれん」

「エェェェェェェー! イヤよー。だって凄く抱き心地良いもの。私、寝る時にリリーちゃんが欲しいわ」

「カトレア先生、私は抱き枕やなか……」



 俺が駄々を捏ねる幼女のように



「ぃや、ぃや」



 と言うと、渋々カトレア先生は降ろしてくれた。

 うーん……自由って、素晴らしい。

 それにしてもカトレア先生、俺を持った動作が誰よりも手慣れていたな。

 もしかして、小さなお子さんでもいるのかな? 

 しかし、俺の家に泊まった時にはどこにも連絡をしていなかったし……まさか人形を抱く癖があるとかいう少女趣味はないよね? 



「カトレア先生、私を抱くとき抱き慣れていましたが……もしかして、自宅にお人形さんがあるとか?」

「えっ? ……………………なっ、無いわよ」



 今の長ーい()は、一体何? 確実に、有りますって言っている()だったよね。

 先ほどのそぶりからして、いつもお気に入りの人形を抱いて寝ているのだろうな……先生の年齢的にギリギリセーフ? にしてあげよう。

 ユグドラシルからも



『「先生のご自宅には、自作されたお人形が沢山有るようです」』



 と『心情』が伝わってきた。



『「でも、そう言うのはカトレア先生が秘密にしている事だから『心情』を読まないであげてね」』



 と、ユグドラシルに伝えておいた。

 はー、仕方がない。

 今度、暇な時にでも神級裁縫士の職などをエディット機能を使用して作ってみるかな……俺の、身の安全のためにも。

 実は、スミレちゃんにスキルを憶えさせる際に職業のエディット機能が気になり調べてみたのだ。

 すると、エディット機能で職業を新たに作成出来ることが分かった。

 エディットで作成する場合、五十音で示している物をクリックする感覚で入力していき変換するのだが、キーボードLV2を使用しても作れることが分かった。

 まあ、慣れたキーボードの方が入力しやすい。

 なので、マウス&キーボードLV2を使用して実際に使用してみた。

 すると、ファイル・編集・ツール・ヘルプなどが出てきて色々と編集が出来るようになっていた。

 しかし、別段早急に職業を作らないといけないわけでもないのでそのまま終了させたのだ。

 


 【職業エディット機能】                - □ ×

  ファイル 編集 ツール ヘルプ

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  新規作成ファイル

  職業名:




  職業の内容;



  リセット



 裁縫で、俺の身代わりの人形でも先生に持たせていれば危険は回避できるはずだ……たぶん。

 可愛い女の子も、周りに増えてきてる事だし、スノーや葵が美少女に変化した時はモフモフな縫いぐるみを持たせるのも絶対有だよな。

 縫いぐるみを沢山作ってキノットさんのホテルの【遊戯コーナーかお土産コーナー】にUFOキャッチャーの景品として置くのも有かな? 

 俺の元いた世界でも、可愛い縫いぐるみが景品のUFOキャッチャー沢山あった。

 新年会の帰り、UFOキャッチャーの可愛い縫いぐるみが欲しいが為に一万円を投入してゲットしようと頑張っていたアルバイトの女の子がいたが何も取れずに泣いていた。

 可愛そうだったので、取ってあげたら痛く喜んでいた。

 その後よほど嬉しかったのか、あられもない姿で縫いぐるみを抱いた写真を俺のスマホに送ってきた……しかし、次の朝には俺の妹に見つかり削除されていた。

 何で妹は、俺のスマホの暗証番号を知っているんだ……未だに謎である。

 あっ、そうだ! アイビーの、幼狼服を作るのも良いかもしれない。

 スノーと葵は、人型に変化しちゃうと破れちゃうから大きなリボンでも良いけれどね。

 そうだ。シルクの服も、作ってあげないと……ドレスを脱いで下着姿でいつも寝ているから、俺の着ぐるみセットみたいな物を作ってあげてもいいしね。

 思えば思うほど、俺の妄想が広がっていく。



「くすっ」



 思わず漏れた俺の微笑みに、カトレア先生が反応する。



「リリーちゃん、どうしたの?」

「いえ、何でもないです」

「あはー、もしかして、歩くの疲れたのかなー。先生が、抱っこしてあげよっか」

「ぃや」



 俺のカトレア先生への返事に、生徒達皆が笑い出す。



「ぷっ、ぷぷぷぷ。クスクス」



 カトレア先生と生徒達は、お昼寝したおかげか皆気分をよくしていた。

 準備をし終わったカトレア先生が呟く。



「リリーちゃん、南の森で実地演習の予定だったのだけれど。どうしようかしら?」

「えっ? 先生、なぜ私に聞くの?」

「だって、今日は朝からリリーちゃんが先導してくれているでしょー」

「いや、それとこれとは違うと思うんですけど……」

「そうよねー、じゃあ行きましょか。私の食事にも関わってくる事だし」

「先生の食事?」

「いえ、こちらの話だから気にしないで」



 よく分からないが、先生が最終判断したのであれば無問題。

 俺達は、実地演習を行うため南の森に向かう事にした。

 しかし俺は、ライムお姉さんから聞いた重要な話を忘れていた。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「ねえ、リリー? 給仕のお手伝い以外は、小さな容姿のままなので最近

    よく抱っこされているよね?」

リリー「学校でも、十五歳の容姿になった方が良いかな?」

シルク「止めておきなさい。別の子達から今度は違う意味で狙われるわよ?」

リリー「ふぇ? でも、あの三人組だけでしょ?」

シルク「どうかしら? それに、リリー給仕の時よく屈むよね?」

リリー「だって、お客様がお水零したり、床を汚したりするんだもん」

シルク「私下から見ているから分かるのだけれど、それも変な子が増える原因よ?」

リリー「ふぇ? 私、どうしたら良いの?」

シルク「どんな姿になっても、女の子らしく気をつけなさいって意味よ」

リリー「……」

    今でも、何か食べながら話しているシルクに言われたくないと思った

    リリーであった。

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